六の夢 逆襲の夢
おはようございます。
...はい、僕です。夢です。
...現在、ちょっと困った状況になっちゃって...声が出せません。
あのですね...
隣で寝てるティアが、僕の腕を抱き枕にして寝てるんですよ、はい。
ちょっと、これは本気でヤバイ。
時々腕に当たる柔らかい感触は...考えてはいけない。
因みに、彼女は発育はいい方である。
だから、余計ヤバイ。
...ごめんなさいね、語彙力が足りなくて...
現在、午前6時30分。
もうすぐ、学校へといく時間である。
つまり、ティアが起きてしまう。
彼女が起きてしまう前に、この状況から抜け出さなければ、僕は社会的に抹殺されてもおかしくないレベルの業を背負わなければいけない。
と、言うわけで、緊急クエスト。
ティアの腕からの脱出
「う、うん...あ」
失敗。
「「.........」」
二人して顔を見合わせて
「「ごめんなさいッ!!!」」
謝罪合戦の幕開けとなった。
† † †
謝罪合戦は、ティアの「私の癖なんです...っ!眠ってるとき、近くにあるものを抱くのが...ごめんなさい!」の一言で幕を閉じた。
実害はなかったと両者認めたので、特におかしな展開にはならずに、そのまま朝の準備の時間になった。
そういえば、ティアは、制服で寝ていた。
だから、一瞬で準備が終わるのかなと思ったら、そうでもなかった。
髪の毛、である。
ティアの長い髪の毛は、セットの時間が半端なく長かった。
本人曰く、「約30分」かかるらしい。
で、朝御飯。
うちは、両親が共働きだって前に言ったけど、その仕事の反動か、朝は遅い。
だから、朝食とか弁当は、僕の仕事だ...と、言っても、今までは一人分しか作ってなかったから、実質仕事量が2倍になった。
弁当は、昨夜のうちに仕込みをしておいて、さっきのティアの髪の毛のセットの間に作り終えて、今は、食パンに目玉焼きをのせたやつと、コーヒーを用意した。
因みに、夢幻は使用してない。
ご飯を食べ終えて、二人が学校に行く準備を終えたのは、7時50分頃の話だった。
僕は、部活動には所属していないので、特に朝練はない。
さて...
お泊まりによる最後の問題がある。
それは、『一緒に登校』イベントがほぼ不可避ということである。
ティアは、「気にする必要ないよ?」って言ってくれたけど...
ティアは、毎朝のように繰り広げられる「あの騒ぎ」を知らない。
なるべく、巻き込みくはないんだけど...
まあ、しょうがないか...
† † †
二人で登校している途中、昨日の騒ぎがあった場所を通ったら、柵と、「立ち入り禁止」の文字が書かれた看板を見つけた。
中を覗いてみると、昨日の奇襲の跡がくっきりと残っていた。
「そういえば...」
「ん?どうしたの?」
「昨日、天使種がここに奇襲をかけてきたよね」
「うん」
「どうやってここが判ったんだろう?」
「ああ...それはね、私がこちらの世界に来たのが理由なんだ」
「え?どういうこと?」
「私が、別の世界から来たのは昨日言ったよね」
「うん」
「そのときにできる、『空間の亀裂』を追ってきたんだと思う」
「...?」
「つまり、この世界で言ったら、ソナーの発信源を特定したのと同じ原理だよ」
「なるほど...」
「あと、もうひとつ。能力自体を探知する能力者が向こう側にいれば、能力の発動だけで特定されちゃうってこともあるから気をつけて」
「...って、もう発動しちゃったけど...昨日」
「あ」
「まあ、ある程度の敵ならなんとかなると思うけど」
「それ、能力初心者の君が言う台詞じゃないよね...」
「まあ、そうだけど...夢幻って、敵を視認していたら大体勝てるよね」
「.........」
いつもより沈黙が長い。どうやら、改めて夢幻のチート度合いに気づいたようだ。
† † †
さて、もうすぐ学校につく。
やつらとの対決も、もうすぐだ。
実は、内心、彼らに反撃するチャンスを窺っていた。
流石に、ここまで長い間虐められ続けた僕の身にもなってほしい。
虐めっこを恨むのは、当然だと思う。
どうやって、僕から虐めの照準を外されるか...
算段はつけてある。
そして、校門が見えてきた。
いつも校門前で待ち構えているやつらの、驚く顔が見えた。
僕がティア...いや、学校では雫って呼んだ方がいいだろう。
雫と一緒に登校しているからだろう。
さあ、反撃開始だ。
題して、
『虐め撲滅・夢幻大作戦』
† † †
僕は、ティアと共に校舎裏へとつれていかれる。
「おい、テメェ、いきなり転校生と二人で登校するとは、どういう了見だ?ァ?」
下らない。
「夢くん...」
心配するような声を僕にかける雫。
でも、大丈夫。
「それがどうした?別に、お前らの許可をとる必要はない」
「ンァ?」
「聞こえなかったのか?そのピアスの穴だらけの耳をかっぽじってよく聞けよ」
「ンだとゴルァァ!」
「なるほど...耳が穴だらけだからなにも聞こえないのか...だから、テンプレの受け答えしかできない」
シュバ!
ついに、手が出始めた。でも、僕は、事前に夢幻を使って『感覚強化』を付けておいた。
拳が、遅く感じる。
さあ、僕のターンだ。
『痛覚無効 質量激増』
ゴス!
僕の顔に拳がめり込む...が
「夢くん!」
大丈夫だ。問題ない。
能力で痛覚は消してるし、重量激増を使って簡単には吹き飛ばない。少し、鼻血が出てしまったが、
『完治』
そう呟けば、怪我も一瞬で治る。
これを、延々と繰り返す。
相手は消耗して、僕は何事もない。
そうやって、相手に未知の恐怖心を植え付ける。
「テメェ、いったいなんなんだよ?!」
「夢くん、大丈夫なの?」
雫が僕のことを心配しているが、実は、彼女には今回の目論見を全て話している。
だから、これは演技だろう。
「で?まだやるのか?」
「...ッ!」
躊躇しているのが手に取るようにわかる。
そこで、作戦の次のコマンド
『幻影・黒翼生成 威圧』
これで、僕の背中に黒い翼が急に生えたように見えるだろう。
それに、威圧を追加して、完全な恐怖心を刷り込む。
「ヒィ!」
最後に、やつらの方を一瞥して、
『黒翼解除 エピソード記憶一部削除』
と、言いはなった。
すると、どうなるか。
人の記憶の領域には、知識を蓄える『意味記憶』と、経験を蓄える『エピソード記憶』がある。
例えば、数学の公式。
小学校で、長方形の面積は、『縦×横』というのは、必ず習うだろう。
その公式自体を『意味記憶』と言い、公式を覚えた事実のことを『エピソード記憶』と言う。
この場合。
彼らは、僕が怖いという『知識』はある。
でも、なぜ怖いかという『エピソード』は失った。
だから、僕が幻の黒い翼を出したという人外の事実は忘れて、僕が怖いという事実のみが彼らに残った。
つまり。
「お、お前、オレ、オレに近付くなッ!!」
「どっかいってくれよ?!」
「何でオレらがこんな奴等に構ってたんだ?!」
「逃げるぞ!」
「おう!!」
そう言い、彼らは教室へ戻っていった。
「なるほど...応用はバッチリだね」
そして、これは、僕が夢幻を使いこなせるかというテストでもあったのだ。
というより、そもそもこの計画を建てたのは、実は、雫自身だ。
† † †
少し前...つまり、登校中の話だ。
僕が、夢幻のチート具合を話していたとき...
「まあ、そうだけど...夢幻って、敵を視認していたら大体勝てるよね」
「.........なら」
「うん?」
「夢幻を使いこなせるかテストしてみない?」
「へ?」
「ほら、あの馬鹿達に対して、夢幻を使ってみないかって」
「ティアって意外と過激なんだね...」
「悪魔ですからね」
「あ、そっか」
という会話があって、毎朝僕から徴収と書いてカツアゲと読む行動をするやつらをターゲットにして、
1.虐めを無くさせる方面で
2.相手を傷つけず
3.記憶は奪った上で
夢幻を使ったテストを実施した。
結果は、ご覧の通り。
完全無欠の勝利。
† † †
と、言うわけで...
久しぶりの爽やかな一日の始まりを堪能することができたとさ。
ん?もし、能力探知されたらって?
そのときは、そのときだ。
皆様、メリークリスマス!!
俺は一人で小説家いてます!
クリボッチならぬクリライトです。
.........松岡透です。
今回、少し投稿が遅れたのには、訳があって...
実は、試してみたいことがあって、小説を書き溜めしていました。
というのも、
日刊ランキングの上位にはいるような作品って、大体1日数回投稿しているんですよ。
というわけで、自分も1日に何回も投稿すれば少しは皆さんに見ていただく可能性も増えるかなというのが一つ。
もう一つは、単に、一番PV数が増える時間が知りたいだけです。
というわけで、本日は、この回含め、4回投稿したいと思います。
09:00 六の夢
12:00 七の夢
15:00 八の夢
18:00 九の夢
的な。
...というわけで、七の夢、八の夢では、あとがきを省略させていただきます。
...では、今回はこの辺りで。
ではでは、では~