一四の夢 手合わせ
そして、到着したのは大きな中庭だった。どれくらい大きいかというと、学校のグラウンドの半分くらいの大きさがある。その回りを、すべて図書館の建物が覆っている。
...正直言って、何で図書館に中庭なんかあるんだろう?
あれかな、日光浴しながら読書でもするのかな...
そんな変な想像(妄想?)をしてると、バリーさんから声をかけられた(ところで、バリーって名前を聞くと、某バイオなハザードに出てくるあの人しか思い付かない。しかも、結構似てる)。
「着いたな。...ここでなら、ある程度暴れても大丈夫だろ?」
「そうですね...ですが、念のため」
そう言って、ライラさんが手を掲げると、
信じられないことが起きた。
壁や、床。そして、中庭の吹き抜けまでもが、一瞬で氷に覆われた。
つまり、今、この中庭は、氷の密室になってしまったということだ。
これが、ライラさんの能力、『嫉妬』か...
まあ、逃げるわけでもないし、別にいいけど...
いや、でも、かなり歩きづらそうだな...
と、思ったが、どんな手品か、氷は、滑らなかった。むしろ、草が生えていた中庭と比べると、随分歩きやすくなった。
これなら、戦闘に差し支えはないか...
「おい、夢、準備はできとるのか?」
「準備が必要な能力じゃないですよ」
「...余裕ぶれるのも今のうちだぞ」
かくして、僕とバリーさんの手合わせが始まった。
† † †
「これから、『暴食』バリー・ベルセブブと、『夢幻』如月夢の、手合わせを始めます。互いに、殺傷能力のある攻撃は禁止、勝敗は、どちらかが降参か気絶した時点で決まります」
勝負を取り仕切るのは、ティアだった。
「それでいいぜ」
「僕も構わない」
「では...始めっ!」
始まった。
とにかく、最初は、相手の挙動を見極める。
バリーさんは、動かない。
両者、無言のにらみ合いが続く。
「ほう...バリーはともかく、夢さんが動かないとは思いませんでしたね...てっきり、自分の能力に任せて突っ走ると思ったのですが...」
「そこまでバカじゃなかったようね」
外野で、ライラさんとサリタさんの二人が実況と解説をしているが、無視。
...いや、別に、悪い意味じゃないけどね。
単に、戦闘に集中したいから、外野の声が聞こえたとしても、反応しないって意味だから。
「...なんだ、来ないのか?」
バリーさんが、じれたように呟く。
「...っ!」
そして、わかった。
暴食の能力の意味に。
たぶん、カウンター系か、防御系の、どっちかだ。
そして、『能力の名前』が、ヒントだとすれば、恐らく防御系。
敵の能力の効果を喰うんだろう。ラノベでよくある、無効化能力だ。
だから、『暴食』。
見切った!
そうとわかれば話は早い。
『テレポート』
と、呟いた。
そして、バリーさんの背中に回り込む。
そう、蒼陽先輩と対峙したときと同じ戦法。
そこから、手刀を相手の首筋に叩き込む...っ!
これで、決まるはずだ。
「ほう...いい攻め方だ」
そう呟いたバリーさんは...
僕の攻撃に対して、
何もしなかった。
つまり、僕の攻撃はクリーンヒット
するはずだった。
いや、実際にクリーンヒットした。
ゴスっ!
と、鈍い音をして、手刀がヒットした...のに、
「わりぃな。これが俺の能力だ」
頭を、アイアンクローで掴まれた。
そして、そのまま持ち上げられ、
ブゥン!
そのまま、地面と平行の軌道で氷の壁に叩きつけられた。
に、人間一人を真横に投げるなんて、人間業じゃない!
そんなことを考えながら、僕は意識を失った。
「...めくん?!」
そんな、ティアの声が、僕が意識を失う前に聞いた最後の言葉だった。
† † †
昔の、夢を見ていた。
僕には、幼馴染みの女の子がいる。
その子が、僕と一緒に遊んでいた夢だ。
その時、何かを約束してたはずだ。
なんだっけ...
その時、幼馴染みの女の子が近寄ってきて、僕にはにかみながら話しかけてきた。
でも、顔にはモザイクがかかったかのようににしか見えない。
幼馴染みの顔を忘れてしまっているからだ。
彼女の口が動いた。
『大きくなったら、私と...』
「めくん、夢くん?!」
現実と、夢の声が混ざったような気がした。
その声が、彼女の顔と重なった。
† † †
「夢くん、夢くん?!」
私は、一生懸命に夢くんに呼び掛けました。
時間を遡ること8時間前...
「.........すまねぇ、相手が、ただの人間だってこと、忘れてた」
バリーさんが、夢くんを非常識レベルで投げ飛ばした後、夢くんの様子がおかしくなってしまったのです。いくら揺すっても起きません。
「たぶん、かなりきつめの脳震盪を喰らったのでしょう」
「バリーさん、やりすぎですよ!偶然生きていましたけど...運が悪ければ死んでたかもしれないんですよ?!」
「ほんと、スマン。あまりにも動きがスマートだったから、つい本気出しちまった」
「とにかく、私の家で寝かしておきましょう」
「ああ。...ティア、看病しておいてくれないか?」
「...わかりました」
そして、現在に至ります。
先程、夢くんが少し動いたので、つい大声をあげていたのです。
そして、私の大声はどうやらいい作用を引き起こしたようです。
「う、うん...ここは?」
「夢くん!」
嬉しくて、つい、彼のことを抱き締めてしまいました(後になって思うと、我ながら大胆なことをしたな~...って、少し赤面したり...)。
「え、えぇ?!ティア?!」
その声で、私の抱きつきに動揺していることがわかりますが、私は、夢くんが無事だったことが嬉しくて、もっと強く抱きついてしまいました。しかも、泣きながら(後になって思うと、我ながら大胆なことをしたな以下略)。
「心配したんだからね!8時間も寝ていたんだから!」
「ちょ、ティア、キャラ変わってない?!」
「こっちが私の地なの!!」
って、恥ずかしいカミングアウトをしたり(後になって思うと以下略。でも、こっちが私の地だっていうのは本当)。
今、夢くんのなかではいつもクールな私のイメージが崩れ落ちてるでしょう。
† † †
ティアって...天然で好奇心旺盛な元気っ娘だと思ってたら、おせっかい属性まであったのかよ!
と、とにかく、落ち着け...
まずは、
「あの...とりあえず、抱きついてくるのを止めてもらってもいいですか?」
「...あ」
そして、ティアは抱きつくのをやめた。
そして、ゆっくり回りを見ると...
「ここは...ティアの家か」
「うん」
とにかく、僕は、バリーさんに投げ飛ばされて、意識を失って、変な夢見て...
あれ?どんな夢を見たんだったっけ...
まあ、いいか。
とにかく、『暴食』バリー・ベルセブブとの手合わせは、僕の負けで終わった...と、言うことか...
ちくしょう...
悔しい。
いつか、絶対越えてやる。
おはこんばんにちは。松岡透です。
今回は、ちゃんと一週間で投稿することができました。
毎回、投稿の時間帯や、曜日がバラバラなのには、二つ、理由があります。
一つ目に、俺の悪い癖ですが、他のゲーム(メモデフとか、モンハンとか、スマブラとか)があると、どうしても執筆よりもそっちに流れていってしまうのですよね...
で、土曜日に一気に書き上げる。
本当に悪い癖ですよ...
二つ目ですが、七彩武装も、夢幻もそうですが、プロットや、書き貯めは一切しておりません!
...はい、本当です。完全に行き当たりばったりです。
もう、アドリブで書いてると言っても過言ではありません。
ストーリーを事前に決めるって、嫌いなんですよね...俺。
ストーリーは、作者が決めるのではなく、キャラクターたちの行動が決めるのです。
だから、事前にキャラクターの動きを制限するプロットは絶対に作りたくありません!だから、事前に書くことが決まってないのです。
と、いう訳です。
まあ、そんな俺の話はおいといて...
前回のあとがきでしたかった話が一つ、あります。
それは...
『劇場版 ソードアート・オンライン オーディナル・スケール』公開おめでとうございます!
俺は、公開当日に見に行きましたよ!
何あれ?
神作じゃん。
ネタバレにならない程度に、感想を言います。
「『君の名は。』で泣かずに『SAO』で泣いた」
はい。こんな感じです。
本当に、劇場版SAOは泣ける作品となっております!
是非、SAOを知っている方は劇場へダッシュしてください!
見なかったら、あのガンジーが助走をつけてグーで殴るどころか、42.195㎞を世界最高記録で走りきってそのままドロップキックしてくるレベルです(ガンジーがSAOファンであること前提)。
...あとがきが長くなりましたね。
これ、実際の小説でも通用するレベルの長さではないでしょうか?
『なろう』で、ここまで長いあとがきを書いている人は、たぶん、俺くらいです。
まあ、とにかく、今回は、ここら辺で筆を置きたいと思います。
ではまた、次回、お会いしましょう。
ではでは、では~
(ユナのbrake beat bark!を聞きながら。ユナの楽曲ではこれとubiquitous dBが好きです。ubiquitous dBをシリカが熱唱しているシーンも好きです)