十の夢 争乱のあと
蒼陽先輩に、事情を説明すること数十分...
「なんだよ...それ」
「嘘じゃないです。さっきの戦闘が十分証明しているでしょう」
「信じてくれるかどうかは、先輩次第です」
先輩ということで、今更ながら一応敬語を使用している。
「なら、さっき、オレがお前をいくら殴っても蹴っ飛ばしても痛みを覚えたようすが無かったのも...」
「夢幻の力です」
先輩には、一応僕の知りうるすべての情報を公開した。勿論、誰にも話さないようにと念を押してからだ。
つまり、雫の正体が、悪魔だということも雫の許可を得て話した。
「...そういや、さっきお前らに悪魔の契約の話したときに妙にそわそわしていたのも、それがある意味正解だったからかよ?」
「...はい」
「...ああ、それらの話を統合してやっと全部疑問が解けた」
「まあ、ぶっちゃけ僕の能力があれば、どんな謎があったとしても全部夢幻で説明ができますけどね」
「...チートだ。チーターだ」
「先輩も全く同じ感想ですか...」
「...てか、そもそもこの話誰に話したとしても信じてくれる可能性皆無だぞ」
「まあ、そうですけど...念のためです。念のため」
「まあ、隠したい気持ちはわかるけどな...」
そういや、と、蒼陽先輩は続けた。
「その、能力、てやつ、オレにも使えるようになる方法ってあるのか?」
なんだかんだ言って興味津々だ。
喉元過ぎれば熱さを忘れるとは、まさにこの事である。
まあ、確かに男の子なら、そんなヒーローみたいな能力がほしいと一度は思ったことがあるだろう。
「どうせなら、剣とか使える能力欲しいよな。『心眼流』とか」
その言葉を聞いてビックリした。というより、飛び跳ねた。
「先輩、それ知ってるんですか?!」
「うん?ああ、お前も読んでるのか?『心眼流のセツナ』」
「読んでます!大ファンですよ!」
『心眼流のセツナ』とは、さっき、僕が朝読書で読んでいた本のタイトルのことである。
で、その中に出てくる主人公、セツナが使うのが、『心眼流』という流派である。
「へえ、なかなか見る目あるじゃねえか」
「こんなところで同好の士に出会えるなんて、想いもよりませんでしたよ...」
「あの...」
あ、雫のことを忘れてた。
それくらい、ラノベの理解者というのは珍しいのだ。
特に、この学校は、真面目くんが多いので、ラノベなんて読みませんっていう人が滅茶苦茶多い。
クラスで読んでいるのを見られた日には、大騒ぎである。
挿し絵だけ見て、「うわ、こいつエロ本読んでる!」とか言う人も多々いる。
あれ、何でなんだろうね...
て言うか、ラノベの挿し絵は、本屋で手に取る人を引き付けるためにそういう描写をしている人が多いだけで、本編ではそんな要素はほぼ皆無、ということも珍しくない。
...話が死傷者数百人レベルで脱線していた。
「とりあえず、一回、ラノベのことは置いといて...」
「「うん?」」
「もうすぐ、2時間目のチャイム鳴るよ?」
キーン...コーン...カーン...コーン...
「さすがに二時間連続欠課っていうのは、危なくないかな...」
そうだ。今は学校の真っ只中だった。
それこそ完全に忘れてた。
ミカエル、許すまじ。
† † †
というわけで、教室。
「お前ら、なに一時間目サボってんだ!!二時間目も遅刻してきやがって、お前らだけ放課後補習にするぞ!」
担任の叱責が飛んできた。
そう思うなら蒼陽先輩を自分の力で止めればよかったんじゃない?
と、言っても無駄なのは解っている(というよりむしろ、言ったら言ったで100%補習確定)ので、
「「ごめんなさい」」
と、素直に謝っておく。
教室から笑いは、無い。
僕が怖いと勘違いしているからだろう。
というわけで、何とかお咎め無しで乗りきった。
そう言えば...
「ねえ、雫」
「ん?どうしたの?」
「...なんで、ミカエルの騒ぎがここまで届いてないの?」
僕が戦闘したのは、校舎のすぐ裏だ。
あれだけ派手に爆発が起これば、確実に気付かれると思うんだけど...
「それは、多分向こうが結界を使ってたんだと思う」
「結界?」
「そう。数ある能力の中でも、結構確認数が多い能力なんだけど...結界で内側と外側を断絶して、中でなにが起こっても外には漏れない、そんなタイプの能力...かな」
「マジか...」
ただでさえ『神の炎』というそこの知れない能力を見せつけられたのに、それが手札の全てではなかったという事実に、驚いた。
下手すれば、僕のことなんて、『神の炎』なんて力を使わなくても、それ以外で本気を出されれば、完全に封殺されたかもしれない。
例えば、僕の弱点。
僕の弱点は、「ただの人間」ということである。
つまり、夢幻を封印される、もしくは、使う前に殺されたら、元も子もない。
例えば、暗殺。使う前に殺される。
例えば、水中。声が届かない。
僕の能力が効かないところなんて、いくらでも存在する。
よく考えたら、夢幻を完璧に扱える器になるまでに、どれだけの苦労が必要なのか...
わからない。
僕の、いや、僕たちの敵は、それほど強大なのだ。
「...くん?夢くん?」
「あ、ごめん」
長い間黙考していたら、雫が心配そうにこちらを覗いていた。
...頑張らないとな。
僕は、心に強く決めたのだった。
† † †
そして、如月夢と、ティア・リヴァイアサン、辻蒼陽の三人を取り巻く暗雲は、広がり始めるのだった。
そして、暗雲は、すぐそこまで迫ってきていることも知らずに、日常は非日常へと変貌していく。
皆様!明けましておめでとうございます!
松岡透です。
さて、わざわざ年越しの時間帯に投稿してみました。
理由は、単に活動報告を丁度0時に上げることが家庭的に不可能なので、どうせなら、続きうpするのと同時に報告したいなと思っただけです。
というか、今回、叫びたいことがある。
ラノベの挿し絵だけ見て「エロ本」って言う奴ら!本当になんなんだよ!そんなん言うなら読んでから言えや!お前のラノベの概念吹っ飛ばしたる!
...はい、ごめんなさい。おもいっきり私事です。でも、活字が苦手な人は絵でラノベを判断するしな...
お前らが思っているほどエロくねえよ。と、声を大にして叫びたかったのです。
あ、でも、最初に蒼山サグ先生の「ロウきゅーぶ!」とか、平坂読先生の「僕は友達が少ない」、あとは、岩田洋季先生の「叛逆のドレッドノート」とかをラノベ入門者が読んだらおしまいですね♪ラノベはエロいって決めつけられちゃう♪やだ♪
逆に、伏見つかさ先生の「エロマンガ先生」は全くエロくない。でも、これはこれで面白い。
上記の作品、俺は全部好きです。特に「ロウきゅーぶ!」。最近、好きなラノベランキングでSAOを押さえて一位になりました。やったね!
話が第一天文単位レベルで脱線しました。
では、今回はこれくらいにして。
今年も、よろしくお願いします!
ではでは、では~(*^ー^)ノ♪




