九の夢 天使の戯れ
最初に動いたのは、僕のほうだった。
さっきまでは、人と戦ってたので、少し能力に躊躇があった。
しかし、今は天使戦だ。
「試したかったことを、存分にやってやる!」
「...ほう、小生のとこを実験台代わりにしますか...まあよいでしょう。最初なので、少し遊んであげましょう...かかってきなさい」
まずは小手調べに、最初に奴にされた技を試してみる。
『爆発』
バァアン!
単純に、空間内を爆破するための技。
しかし、やはり簡単に避けられてしまう。
「...貴方、小生の能力を勘違いしてはいませんか?あれを、まさか私の技を拝借したものとでも言うつもりですかな?」
「...は?」
「ふむ、本当に勘違いしていたようですね...特別に教えて差し上げましょう。小生が先ほど使った技の正確な発動方法を、ね」
なんだ?この敵の余裕感丸出しのお喋りは...
「あれは、単に酸素を燃焼させるだけの簡単な技です。しかし、酸素はこの大気に20%近く含まれています。だから、調整次第ではこの世界のすべての酸素を燃やし尽くし、世界なんて簡単に滅ぼすことができるのですよ」
「...じゃあ、なんでそうしなかった?世界を一つ、滅ぼしたら、僕らなんて簡単に殺せるし、何より、悪魔たちの隠れ場所が1つ減るぞ」
「...それはさすがに非人道的というものでしょう。無関係の他人を殺せるほど、小生は冷徹ではありませんので...」
...意外だ。奴等のことだから、世界一つくらい滅ぼしてもなんともないと思っていたけど...
それは、さすがに僕の思考が歪みすぎていただけか...
まあいい、技の仕組みはわかった。
あと気を付けるのは、技のあとの酸欠くらいか...
酸素が燃えると、当然ながら二酸化炭素が発生する。
そのとき、酸素はすべて二酸化炭素に変わるので、実質酸素を奪われるのと同じ攻撃をされるということだ。
なら?...それの対策はすぐに思い浮かぶ。
要するに、二酸化炭素から酸素をつくりだせば済む話だ。
「今度は、こちらの番ですよ!」
律儀に宣言してから、攻撃を繰り出し始める。
僕は、少し考えたあと『未来予知』と口にする。
ミカエルは、こちらの予想通り、燃焼攻撃を行った。しかし、規模が違う。
さっきは、単発で爆破を放ってきた。が、今回は、何回もの爆破を織り混ぜてきたのだ。
恐らく、これで酸素がない状態を作り出すつもりだろう。
とりあえず、まずは攻撃をすべて避けることに専念する。先ほど唱えた未来予知のお陰で、次にどこに爆発...もとい、燃焼が起きるかを予測して、そこを綺麗に避ける。
ちなみに、攻撃を放ってくると思われる場所には、赤く印がされている。
未来予知の効果だ。
「...ほう?乱数を織り混ぜた燃焼をここまで綺麗に読めるとは...未来予知の力を持っていると考えるのが妥当でしょう」
あ、一瞬でばれた。
てか、そろそろ空気が薄くなってきたな...
そろそろ、雫...あ、もうティアって呼んでいいか。
ティアも、見るからに苦しそうだ。
そろそろやるか。あれ。
と、思った瞬間、燃焼がやんだ。
「ふふふ。どうです?あれだけのの燃焼をすれば、酸欠には至らないまでも、二酸化炭素のせいでそれなりにきついはずですが?」
「...『神の炎』っていう仰々しい名前にしては、やってることがショボいかな」
「...負け犬の遠吠えですね。そろそろ息も続かないと思いますが?」
どうだか。
さて、やるか。
『光合成』
そう、人間の体では不可能な光合成を、夢幻の力を借りて行おうって言う算段だ。
二酸化炭素は、人為的な方法では、まだ酸素と炭素に分解する方法は見つかっていない。
まあ、見つかってたら温暖化がどうのとか関係なくなるからな。
なら。
人為的じゃない方法。
つまり、『光合成』を、人為的にすればいい。
光合成の化学式はこうだ。
6CO2+6H2O→C6H12O6+3O2
6つの二酸化炭素と6つの水を足すと、1つのブドウ糖と3つの酸素ができる。
簡単に言うと、そういう説明だ。
空気中から水を集めて光合成の媒体とする。
出来たブドウ糖は、とりあえず僕の栄養にする。
で、残った酸素は...
普通より少し薄くなってしまったけど、まあ、戦闘には支障がないレベルまで回復した。
「...ほう?まさか、あれをそのような方法で凌ぐとは...貴方の能力を勘違いしていたようですね」
...て、あれー?なんか、雲行きがおかしいぞー?
「てっきり、あなたの能力は、敵の能力をコピーするタイプのものだと思っていましたよ。ですが、人工的に光合成する能力なんて聞いたことがありませんね」
ギクッ!
「どうやら、あなたの能力はなんでもありみたいですね。面白い」
僕の能力伝わってなかったの?!
なら、隠しとけば良かった!
「...しかし、このままでは不利なのもまた事実。...楽しかったですよ。また戯れましょう。私は、退散するとしましょう」
「ま、まて!『束縛』!」
しかし、ミカエルを狙った束縛は、彼が透明になってしまったので、狙いが外れてしまった。そして、最初と同じように虚空から声が聞こえる。
「今度会うときは、本気でお手合わせ願いますね。『なんでもあり』さん」
僕の能力の名前は夢幻だ!
って、よっぽど叫びたかったけどやめた。
なんか、子供っぽいし。
...とにかく。
なんとか、敵を追い払うことが出来た。
「夢くん!大丈夫だった?」
「大丈夫だって。それに、もし本当に僕が大丈夫じゃなかったら、ティアが助けてくれるでしょ?ティアが助けないってことは、僕一人でも余裕で対処できたという証拠じゃない?」
「...てへ」
舌を出して照れ隠しをするティア。
...不覚にもドキッとしてしまったよ。
よく考えたら、僕はこんな美少女の祖国を救うって息巻いているのか。
まるで、僕がティアのことを好きでそうやってるみたいな構図だな。
まあ、可愛いから好きになってもおかしくないけどな。
...あれ?なんだろう、この、デジャヴ感。
大分昔に、同じことがあったような気がする。
僕って、誰か初恋の人っていたっけ?
...うん。いない。
なら、この気持ちはなんだろう?
ずっと昔にあったような、このポカポカした気持ちは...
「おい...」
その声に振り返ると、
「あ、蒼陽先輩のこと忘れてた...」
「忘れんなよ...」
たぶん、全員忘れていると思う。
もう一度、彼は口を開いた。
「これは、どういうことだ?」
「...あ」
僕が声を上げ、
「...あ」
ティアが声を上げ、
「「.........あ」」
二人揃ってもう一度声を上げた。
「おまえら、夫婦漫才かよ...」
ふう...なかなか疲れた。
あ、ども。松岡透です。
いやぁ、次話投稿四連続って、なかなかめんどくさい作業ですね。
それでなくても、今(12/24現在)速度制限来てるせいで、重い重い。
でも、やりきった感はスゴい。
もうそろそろ零章終わると思うので、プリアム待ちの方はご期待ください。
...プリアムってなんだ、って?
いやだなぁ。七彩武装の略称ですよ。
...まあ、どちらもご期待ください。
そして、今日ホームページ開いて嬉しかったこと。
『第五回ネット小説大賞』さんより、感想が届きました!
いやぁ、嬉しいですね。
あそこまでストレートに誉められるなんて想いもしませんでしたよ。
...まあ、今回は、この辺で筆を置かしていただきます。
ではでは、では~(*^ー^)ノ♪




