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PeTItionS~峡間の二重ノンブル~  作者: 知疏
第二章
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第2話 第一世界人

 背中に当たるゴツゴツとした感触、どこからともなく聞こえてくる地響き、体全体が蒸されているような暑さに意識が覚醒し、ゆっくりと目を開く。

 あれ……確か俺……死んだはず……。

 見たことのない天井、ではないな。

 朦朧とする視界に広がるのは、天井ではなく雲。

 空が見えるってことは、此処は屋外か。

 体を起こし、手を顔の前に持ってきてる。

 手に付いた砂を払うと、パラパラと音を立てて落ちていく。

 グッパグッパと握ったり開いたりすると、少し伸びた爪が食い込んで痛い。

 触覚、視覚、聴覚、すべて正常。

 おかしい、確か俺トラックに轢かれたはずなのに、治療の痕一つない体のままだ。 

 え? なんで?

 生きた心地を実感できてやっと思考が働き始める。

 え? 生きてる?

 生きてる?

 え、なんで?


「えなんで? え? ……え? なんで生きてるの? てかここどこ? 天国?」


 なわけないよな。

 だってこの光景は……。

 目に映るのは、枯れて亀裂が入っている大地と、今にも降ってくるぞと言わんばかりの雲の天井、遠くの方でマグマを垂れ流しながら現在進行形で噴火活動を行っている山々、視界におさまる範囲のどこにも建物がないころか草すら生えていない地平線。極めつけに、それら総てが赤黒く染まっている。

 まさに地獄、むしろ地獄。

 世界が終りを迎えようとしているようにしか見えない。

 日本でないのは確実だし、戻月とも思えない。

 戻月にこんなとこあったら、世界的に有名なはずだ。

 勘弁してくれよ。

 俺は神様仏様雷様妹様に頼んだんだぞ。

 誰が閻魔大王様に出てきてほしいなんて言ったんだ。


「誰、誰かいませんかー、ドッキリとかなら今すぐやめて出てきてくださーい」


 もしかしたらこれは誰かの悪戯なんじゃないか、という一縷の望みにかけて叫んでみたものの、俺の声は虚しく火山活動の音に揉み消されてしまう。

 そらそうだ。悪戯にしては手が込んでいる込みすぎている。

 この空の高さは日本のドームと同じくらいだが、こんな天候は見たことがない。

 それにあの時、あの時俺は確かにトラックに轢かれたんだ。

 痛みが一瞬過ぎて何も感じなかったが、轢かれたのは確実だ。

 そんな俺がなぜ生きているんだ?

 もしくはここが死後の世界だと言うのか?

 だとしたらやっぱり地獄?

 でも地獄に堕ちるようなこと……。

 鼓動が鎮む、波紋の広がる水面のような平静さを取り戻す。

 脳裏に映し出される一つの記憶。

 死ぬ前の走馬燈でもみた、忘れられない記憶。

 もし、もしも地獄に堕ちる条件があったとしたら、多分俺はそれを満たしてしまっている。

 そう強く思い当たる節が、俺にはある。

 考え込んでいる体が、振動する大地に揺らされる。

 ん? 揺れが大きくなってる?

 段々と大きくなる地鳴りに怯え、何もない辺りを見渡す。

 やばいやばいやばい。

 ドゴゥ!!! と巨大な地響きが耳に届き、体がビクッとする。

 今までの比じゃないほどに大地が縦に揺れ、山の一つから黒雲が立ち込めている。

 空気イスのように立ち上がる動作の途中で固まり、真っ白になった頭に意識を戻す。

 どうしよう、取り敢えず逃げなきゃ。

 

 深く考えることもなく、衝動的に火山と逆方向へ全力で走った。

 何度も、何度も振り返りながらは駆ける。

 不安定な足場に足を掬われながらも、走り続けた。

 乾いた大地に足裏を傷つけられても、構わず走った。

 

 いつしか火山は赤黒い霧に隠れ、噴火音しか聞こえなくなっていた。

 走る速度が徐々に遅くなり、やがて崩れるように座り込む。

 足がガクガクと震え、頭がキューっと絞られるように苦しい。

 尻もなんかチクチクするし、やけに体が軽い……え?

 ここまできてようやく、先ほどまで混乱していて気が付けなかった自分の身なりを認識出来た。

 足先から頭までとても通気性が良く、一度町に赴けば周囲からの注目度No.1は間違なし、警察さえもがすぐに集まって来てしまう格好。

 そう裸だ。


「は? いやなんで……え?」


 なんで裸なんだよ。

 死んだら裸になるのか?

 白い一張羅みたいなの着るんじゃないの?

 キューピットが着てる奴みたいな。

 あれ、一張羅って勝負服みたいな意味だっけ?

 いやそんなこと関係ない。

 そもそも俺は死んでいるのか?

 死んではいるんだよなきっと。

 でも意識はある。

 意識があるってことは死んではいない。

 でも確実に死んだ。

 じゃあ生きてるってなんだ?

 いや今そんなこと気にしてどうする。

 まずはこの状況だ。

 この状況はどうだったら説明がつく?

 俺の知ってる話なら、転生とか転移系、あとデスゲームとかだよな。

 それか永年眠りついている間に人類が滅びているみたいなパンデミックとか。

 仮に転生だっとしたら、俺はこんなヤバい所に裸で寝ているような奴に転生してしまったってことか?

 いや、転生系の話は遅くても幼少期からスタートするはずだ。こんな中高生位の体の奴なんかに転生するわけないはずだ。

 それにこの体、どっからどう見ても俺の体だ。確証はないがこの見慣れた感じ、俺の体で間違いないだろう。てことは転移系か? しかし、なぜ裸?

 いやまずこの考え方自体がおかしいかもしれない。

 俺の偏った知識のせいでアニメみたいな話を予想してしまうが、一般的にはどう考える。

 やっぱりドッキリの線が一番強力だよな。

 いやでも……。

 いやいやいやいやと、考えては否定を繰り返しながら、ゆらゆらと行く当てもないまま途方もない大地へ足を進めた。


 ―――


 しかしなんにもないな。あれから何分歩き続けたんだ? 

 一時間は優に超えてると思うんだが……。

 歩いても変わらない景色に俺は不安になり始めていた。

 建物がなければ、草木もない。当然、生物の気配などない。

 当たり前と言ったら当たり前か。

 こんな今にも世界が終わりますよ感のある場所に住んでる生物なんているわけがないもんな。

 それにこの気温。三十度は超えてるんじゃないか?

 日が差してるわけじゃないのに蒸し暑い。

 全裸のせいで焼かれてるように暑い。

 のども乾いてきた。

 というよりも空気が悪い。

 灰とか塵とかに喉がやられる。

 水は……あるわけないか。

 どこを見ても乾いた大地しかない。

 せめてサボテンがあればよかったんだけど。

 いや、在ったところで水の取り方なんて知らないや。

 渇ききった唇を舌で潤し、唾液を飲む。

 唾液を飲んでも、水分が補充できるわけではない。

 足元がふらつき、眩暈がする。視界も霞んでくる。

 何だろう、頭が……重い。


「ちょっと休まなきゃヤバいかも」


 頬を引き攣らせながら、俺と同じぐらいの岩に背を預けた。

 何だろうこの感じ。目を開けているのがつらい。てか、目が痛いし頭も痛い。

 なんでこんなことになった。死んだと思ったら訳が分からない場所に飛ばされて。誰もいなくて、何もなくて、また死にそうになっている。神様ってのは、こんなにドSなのかよ。

 一端は考えるのをやめたはずの思考が、また巡り始める。

 確かに異世界に行きたいと願ったけど、こんなのあんまりだろ。生き地獄じゃないか。俺が何をしたって言うんだよ。そんなに俺のことを殺したいのか、なぁ。

 いつの間にか閉じていた瞼から、水が流れ落ちる。

 頬を伝う感触を拭い、ふと岩陰から後ろを覗いてみる。

 相変わらずの赤黒い世界が、一段と暗く見える。

 何もない地平線から、焦点がずれていく。


 全身から力が抜き、目を閉じる。音一つもなく、頭に走る痛みが強調されていく。

 頭に血が流れるたびに、血管に締め付けられているような感じがする。

 痛い、痛い、痛い痛い……痛い。

 こんな思いをするなら、いっその事、死なせてくれ。


 急激に増していく痛み意識が霞んでいった。



 ―――――



 リズミカルに伝わる振動、全身を撫でる心地よい風、額に当てられる冷たい感触、背中に感じる柔らかくも吸い寄せられるような温もり。

 あぁ、なんて安らぐ場所なんだ、ここが天国か。

 薄っすらと瞼を開き霞む視界から見えた光景に、思わず勢いよく目を見開く。

 先程とは打って変わった緑の世界。

 鬱蒼と生い茂っている草木に阻まれ届いていない太陽の恵み。どこからともなく聞こえる呻き声。

 そしてなによりも、俺が跨っっているこの生物。紅色に染まった艶やかな体毛の中から飛び出している一本の白い角。

 なにこの生物?

 四足歩行で、顔が長いから……馬、だよな。

 身を乗りだした俺の後ろから「あっ」と小さな声が聞こえる。

 首を回して後ろに振り返る。


「お気づきになりましたか」


 声の主は、俺と一緒に馬に跨っていた。

 顔は布で覆い隠されていて、僅かな隙間から静かな緑色の瞳が覗ける。


「あと少しで家に着きますので、安静にしていてください」


 これが俺の異世界での、一番最初の出会いだった。 

自分の語彙力のなさに絶望しています。

意味が分かりにくいし、読みずらいし、テンポも悪いし……。

これから書いて行けるのか?

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