第2話 地球は青かった
俺は気がつくと椅子に座っていた。
と、不意に頭の中で声がする。
《初めまして、マスター。私はバイオロイドOSのウィルです。思考加速にて説明します。》
びっくりした!
そういえば回りの風景、医務室らしいが、完全に止まって見える。
体も動かない。
《いま、思考時間を1,000倍に加速しています。 必要に応じて通常化できますが、今は体の情報とサポート内容の説明を致します。》
・・う、うむ、よろしく。
ウィルから説明を受ける。
この体は、アレフ人の遺伝子情報を元に構成されたバイオロイドで、一部インプラントされている。解毒や思考サポート、痛覚ブロック等がインストールされている。
身体能力は余り高くないが、思考加速のお蔭で反射神経は高い。
接続端子も有り、情報を直接取り込む事ができる。
ウィルの能力は体の制御、及び思考サポート。インプラントの管理だそうだ。
また、食事もできるとか。
嬉しい。
食べるのはストレス解消になる。
・・・っと、言葉はどうして通じているのか?
《精神ダウンロードの際に、言語を最適化しています。》
凄いな。
《これからメディカルチェックがありますので、思考を通常化します。》
体が自由になると同時に風景が動き出し、様々な音が聞こえて来た。
隣には、髪のまとめたちょっとつり目のロリエルフが、スクリーンをみながらキーボードを叩いている。
ふとこちらを見ると、素っ気なく「気分は?」と聞いてきた。
俺は少し考えて「普通、かな。」と答えた。
再びキーボードを叩き出す。
なんだ、この人。
《医療主任のシエラさんです。私の前のマスターでした。》
そういえばウィルは医療用バイオロイドだったっけ。
《はい、今はマスターのサポートOSになりましたので、シエラさんから医療スタッフの任を解かれています。》
・・・・それって支障無いのか?
《問題ありません。大きな怪我人や病気人が出れば別ですが。》
シエラさんが手を止めた。続けてライトを俺の目にかざしたり、体の反応をチェックする。
そして「ウィル・・・じゃないわね、う~んと、あなた、名前は?」
「賢治です。加藤 賢治。」
「よろしくね、ケンジさん。私は当船の医療主任、シエラです。
事情はウィルやエリナから聞いてると思うけど、メンタルチェックを先に行います。そのあと、当船のメンバーに会ってもらうわ。」
「はい、わかりました。」
「あと、まだ体の同期が完全じゃないから、可動椅子で移動してもらいます。2~3日のリハビリが必要ね。」
《私が体のコントロールをすれば問題無いのですが、それではマスターが困るでしょう。少し我慢して下さい。》
うむ、仕方ない。
「シエラさん、よろしくお願いします。」
女性型のバイオロイド(フォウ、という名前らしい)の補助を受けて可動椅子(車椅子だ)に移る。
確かに動きが多少ぎこちない。
脳卒中の時に近い感覚だ。
椅子に座り簡単な質問に答えた。
自分の常識と彼らの常識が同じとは限らないが、問題無かったようだ。
「メンタルチェックに異常無し、っと。」
シエラさんがキーボードを叩きながら頷いた。
「それじゃあフォウ、可動椅子をお願い。ケンジさん、これからブリッジに向かいます。船長と探索チーム、クルーの紹介をします。」
「わかりました、よろしくお願いします。」
医務室を出て、通路を移動する。
なるほど、よく有るアニメの宇宙船通路っぽい。
感心してるうちに、突き当たりの自動ドアに着いた。
すぐにドアが左右に開く。
そこは宇宙船のブリッジらしい場所だった。
・・・・・重要区画なのに、セキュリティは大丈夫なのか?
しかも、その体育館並みのスペースの中央には、1本の大木が植えてある。
・・・・・こんな所に、木?
そして、正面の大きなスクリーンに地球が大写しになっている。
・・・・リアルタイムか。
確かに、地球は青かった。
・・・・・自分は彼処にいたのだ。
はたして帰れるのだろうか。
あそこには自分の日常が有った。
大事な家族、友人達。
胸が熱くなって来た。
涙が溢れてくる、が、気を取り直す。
必ず帰る。
家族の元へ。
その時、頭の中で、ウィル以外の声が響いた。
《《ようこそ、歓迎する。 早速相談したい。》》
うわ、なんだか凄い重い思念波だ。
なんだ?
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GW中に複数回の更新を目指しています。
・・・・・・・ファンタジーじゃないけど、スペースオペラなんてファンタジーと変わらないんです。
はたして受け入れられるだろうか?