雨の人
私が彼女に出会ったのは
先日、歯医者で治療を待ちながら窓の外を眺めていた頃だ
私の中の、一輪の花も供えられていない墓所に
彼女は私を気遣うような、見守るような瞳で立っていた
そばに座り込む私は、小さくうずくまり、頭を垂れていた
寂しく降る雨の中、雨を遮るものもなく一人で座り込んでいるのは
他人の目にはずいぶん変わり者に映っただろう
しかし、私にしてみれば一人ではなかった
彼女は私の中でだけ生き、また、私も彼女の中にいる
私には、彼女の顔立ちも姿すらもわからない
ただ、一つ言えるのは
私の重く濡れた心に暖かく入り込んでくる
べつだん綺麗でも、可愛らしくもない
色も香りもなく包んでくれる雨のような人だった