第一幕 第四場
村長の屋敷の広間には、猟銃を携える大勢の猟師とその相方である猟犬達が集まっていた。
妻のトゥルーデと女中のグレーテルの間に立つ村長は、居並ぶ面々を順繰りに見ていく。
「猟師諸君ならびに猟犬達よ」村長は威厳たっぷりに言った。「先ほどワシの屋敷におっぱい祭りを中止せよとの脅迫状が届いた。この要求が通らない場合はおっぱい村に災いをもたらし、さらにはおっぱい村の村長を殺すと予告している」
集まった猟師達と猟犬達がざわめき始めた。
「おいおいマジかよ。せっかく楽しんでいるのに」とある猟師が言った。
「まったくだよ。どこのどいつだ。そのふざけたやつは」別の猟師が言った。
「なんだか大変な事になったな」猟犬がしゃべった。
「やれやれ。とんだ迷惑だぜ」別の猟犬が嘆かわしげに首を横に振る。
「静かに静かに!」村長がみなを制する。「なので諸君らにはおっぱい祭りの警固にあたってほしい」
「村長」猟師の一人が前に歩み出た。がっちりとした体躯にあごひげを生やした男だ。
「どうしてのじゃコルベス」村長は猟師の名を言った。
コルベスは質問する。「脅迫状を送りつけてくるような輩に心当たりは?」
「ない」村長はきっぱり言い切った。「ゆえにワシは外部の者による犯行だと考えておる。なので諸君らにはよそ者を警戒してほしい。頼んだぞ」
「わかりました村長。ここから先は俺に任せてください」そう言うとコルベスは猟師達に向き直る。「みんな聞いての通りおっぱい祭りをぶちこわそうとするヤツがいる。それを未然に防ぐのが俺たちの役目だ。今日はおっぱい祭りという事もあり、よそ者の出入りは自由でその人数を把握するのは難しい。今この場には猟師四十八人、猟犬三十匹がいる。猟犬のいる者は村の外を警固しろ。森に怪しい奴らが隠れているかもしれん、念入りに頼むぞ。それ以外の猟師は村の中で怪しいよそ者の警戒にあたれ。いいな」
一同が返事をする。「はい!」
「それじゃあ猟犬チームは俺と一緒に来てくれ。村のことはお前に任せたハインリッヒ」
「まかせてください」ハインリッヒと呼ばれた青年は、猟師十数名を引き連れて広間から出て行く。
「おっと、忘れてた」コルベスは自分の側にいる年寄りの猟犬に向かって言った。「ズルタン。お前はここに残ってろ」
「そんなどうしてですかご主人様」ズルタンが言った。「私も猟犬。お役に立ちます」
「老いたお前では足手まといになるだけだ。俺は一人でも大丈夫。おとなしく留守番してろ」
他の猟犬達がズルタンを嘲笑するかのように、笑い声を漏らした。
「それじゃあいくぞお前ら」コルベスは他の猟師と猟犬を引き連れて、意気揚々と出て行った。