第一幕 第一場
おっぱい王国の外れにあるおっぱい村。そこは人口四千人ほどの小さな村で、モルタルとレンガの家が建ち並び、それを縫うようにして石畳が走っている。あたりは平野と森に囲まれており、村の外壁には石積みの柵が使われ、それに沿うようにして川が村をぐるりと囲んでいた。
それは外敵対策で何者かが村に侵入しようとしても幅の広い川がそれを阻止し、たとえ橋を渡って来たとしても村の入り口に待ち構えている見張り番に容易に発見されてしまう。
そんなわけでおっぱい村は昔から外敵の侵入もなく平和で、村人達はそれを享受していた。そしてそれを象徴するかのように、おっぱい村では年に一度のにぎやかなお祭りである『おっぱい祭り』が開催されようとしていた。
おっぱい村の中心地にある広場に村人達は集まっていた。みなは広場中央に設けられた大きな舞台に熱い視線を注いでいる。そこにいたのは初老の男、それはおっぱい村の村長だった。
おっぱい村の村長は舞台から広場に集まった村人達を見た。大勢の村人達が目を輝かせている。きっとおっぱい祭りに胸を躍らせているに違いない、と村長は思った。
村長は大仰に咳払いをした。
「おっぱい村の村長ヨハネスである。このたびはお日柄もよく、こうして晴天に恵まれ無事おっぱい祭りを催すことが出来る。これはきっとおっぱい祭りを堪能せよ、という神様の思し召しに違いない」
村長は頭上に輝く太陽を指差した。村人達は太陽を見上げると、神への感謝の言葉をささやき始めた。しだいにその声は大きくなる。
村長は掲げた指を自分に向けた。村人達がどっと笑う。
「もちろん村長様にも感謝してるそ」村人の誰かが言った。
「村長様ありがとう」別の誰かが言った。「毎年おっぱい祭りが無事行われるのは、村長様のおかげだ」
「ありがとう」村長は村人の言葉に笑顔で手を振って応える。「ありがとう。皆のあたたかい声援があるからこそ、ワシもがんばれるというものじゃ」
村長はそこで咳払いをする。
「えー、おっぱい祭りはおっぱい村の伝統行事であると同時に、平和の祭典でもある。こうしてワシらが実り豊かに暮らしていけるのも、先代、先先代の村長をはじめとする村人達が荒れた荒野を切り開き開拓してくれたおかげである」
村人達が感慨深くうなづいた。
「彼らの魂に感謝を」村長は胸に手を当てた。
村人達は村長にならうようにして胸に手を当てる。
「それでは皆の衆」村長は声高に言う。「これよりおっぱい祭りを開催する!」
村人達が歓声をあげた。こうしておっぱい村のおっぱい祭りは幕をあげる。