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恋愛草紙綺譚  作者: 紫逢瑠依(しおうるい)
本編
3/10

尾張の鷹 前編

 帰蝶が美濃へ来て一週間が経った。

 三日目に信長が遠乗りに連れ出してくれた後は一人おとなしくしている。信長は忙しいのか、あのあとも昼間ほとんど姿を見せない。

 実はあの明くる日、また退屈で死にそうになった帰蝶は馬を借りようと思った。しかし、一人で馬屋に行った帰蝶に、厩番は胡散臭そうな目で言ったのだ。

「殿の許可もなく馬は出せない」と。

 許可はある。信長はいつでもいいといった。自分が付き合うともいってくれた。楓は帰蝶の馬だから好きな時に乗っていいとも言ってくれた。

 何よりも信長の正室になった帰蝶に対して失礼極まりないとも思う。けれど帰蝶は引き下がった。ここの家臣から見れば帰蝶は信長の正室の前に敵の間者にも等しい。うろうろされたら目障りなはずだった。

 まして供もつれずに一人で自由にさせることなど論外だろう。帰蝶にもそれは分かっていた。

 帰蝶も実際なにかわかったら実家に何としてでも知らせようとするだろう。

それが自分の役目だった。それが現実。だからずっと自分が影で見張られていることに気づいても仕方がないと思った。

 鬱陶しいとは思ったが織田家から見れば当然のこと。自由に動けないというよりは、なんだか面倒になってしまってその後はずっと部屋に篭っていた。

 退屈だった。どうすればいいのだろう。こんな無駄な時間を過ごすつもりはない。早く信長の弱みを握って、あやめとともに抜けだそうと思うのに何もする気が起きなかった。

 信長は毎日夕餉の時間には帰ったが、すぐに寝てしまう。毎晩、帰蝶は置き去りにされたように取り残されていた。

 その晩は信長の帰りが早かった。

 夕餉も早目に済ませたあと帰蝶はぼんやりとしていた。どうせまたすぐに信長は寝てしまうだろう。自分も寝てしまった方が退屈しないのだが……昼間も時間を持て余しているので、最近は夜もなかなか寝付けなかった。

 そんな帰蝶に珍しく信長が話し掛けてくる。

「顔色が悪いようだが?」

「そうでしょうか?」

 別に加減が悪いわけではないのだが、退屈な毎日にいささかうんざりしているのは確かだった。それとは別に気持ちの中に焦燥感もある。

 信長がごろんといつものように横になった。いつもと違うのはそこが帰蝶の膝枕だったことだ。

 一瞬驚いたが、声には出さなかった。夫婦なのだからこれくらいは当たり前だろう。

「退屈なのか?」

 どうしてこの男は帰蝶の心を読むのがうまいのか。

 けれど

「いいえ」

 なぜか帰蝶は素直に告げられなかった。厩番の言葉を告げるのはたやすいが、幼稚な告げ口をしているようで嫌だったし、自由にできないのはむしろ当然なことだと思ったからでもあった。

「そうか?」

 下からじっと見つめられる。

 まるで嘘を言ってないかと探られているようで居心地が悪かった。

 気まずい沈黙が流れたあとに、帰蝶はいきなり腕をつかまれた。あっと思った時は信長の上へ倒れ込み、そのまま抱え込まれて男の下になっていた。

 油断していた。

 普通ならこんなにたやすく組み敷かれたりはしない。一週間もの間、何もされなかったのですっかり警戒心をなくしてしまったのだ。

 悔しくて思わず唇を噛む。

「どうした?案外あっけないな」

 そう言ったとたんに着物の胸元から手が滑り込んできた。

「ぁ…やめてください」

「なぜだ?夫婦なのに?」

 からかうように聞いてくる。

(どうしよう)

 柄にもなく帰蝶は混乱した。こんな事ははじめてだった。

「やめっ……」

「誰かを呼ぶか?大声を出して誰かに来られたら困るのはお前ではないのか?」

 帰蝶は青ざめた。

(やはり知られてい……る?)

 まさかと戸惑ううちに信長の手が直に肌に触れた。そのまま帰蝶の平らな胸に触れてくる。着物の前を乱暴に大きく開かれた。

「ぁっ……」

 帰蝶が小さく叫んだのと、信長が息を飲んだのが一緒だった。帰蝶は全身の力を抜いた。

(殺される)

 覚悟を決めようとしたが、その時もっと大きく着物をはだけようとした信長に本能的に逆らった。

「やめて!」

 その瞬間、信長の瞳の中に剣呑な光りが宿る。あっという間に帰蝶は両手を押え込まれた。

「ここまでばれて逆らうなんていい度胸だな。ばれないとでも思ったのか?俺も馬鹿にされたものだ」

 帰蝶は首を振った。

 ばれてるかもしれないと思っていた。少なくともずっと騙せるとは思っていなかった。

 信長は馬鹿ではない。そんな事はすぐに分かっていたのに。

「なら、なぜいつまでもぐずぐずしていたんだ?チャンスはやっただろう?時間も足も……」

 帰蝶は唖然とした。そういうことだったのか?楓をくれて帰りたいかと聞いてくれたのはそういう意味だったのか?

「もう少し利口かと思った」

 信長が冷たく呟く。

「さっさと逃げ出せばいいものを、それとも本気で俺を殺せると思ったのなら身の程知らずだな」

 忠告だったのか。さっさと美濃へ帰れという、あれは忠告だったということか。なぜか帰蝶は寂しいと思った。慰めてくれたのかと思ったのに、ただの脅しだったとは。

 しかも自分はそれに気づけなかった。なぜのんびりとこの男の側にいつまでも居たのだろう。信長の言うとおりいつまでもぐずぐずしていたせいだ。

 自分でも分からない。でもあの時、この男のなにかが分かったような気がしたのだ。だからもう少し分かりたかった。そばに居たかったのだ。

「このまま殺すこともできるぞ。お前の正体を世間にばらしたら蝮はいい面の皮だな」

 端正な顔をした男はそんな酷い言葉を吐いた。

「知ってたくせに……」

 どこで信長が気づいたか帰蝶には分かる。やはり最初に湯殿で見られていたのだ。知っていて、黙っていたのだ。腹で笑っていたのだろう。男だとばれて無事なはずがなかった。

「笑っていたんだ、知ってて」

 帰蝶の言葉に信長の表情がなくなった。

「そうだ、いつだって殺すことはできた。だからチャンスをやったのにな。だがもう逃げられない。こうやって首を絞めるか?簡単だぞ」

 片手で帰蝶の両手首を押さえたまま、もう片方で細い首を絞める。ほんの少し力を加えられただけで息が詰まる。

 視界が揺らいで頭の中が白く濁った。

 喉が焼け付く。

「それともこれで刺し殺してやろうか?」

 信長の視線の先には帰蝶の懐剣があった。

 信長を殺す為の懐剣だった。

 帰蝶の本能が動いた。下から信長のからだを蹴り上げると、懐剣を奪い取った。素早く離れて身構える。

「ほう?俺を刺すか?やってみろ」

 面白そうに信長が煽る。

 帰蝶は剣を抜いた。

 本来女性ものの守刀だった。殺傷力は低い。殺すには信長の懐に入らなければ無理だった。

 だから帰蝶が次に取った行動は

「なにをするっ!」

 信長が焦って声を荒げたのは帰蝶がその刀を自分の首筋に当てたからだった。殺されるならせめて自分で死ぬ。

 なにもできなかった。自分はなぜここへ来たんだろう。なにもできないなら来る意味がなかった。

 しかも男だとばれて、恥を晒しに来ただけだ。

 父上に申し訳ない。

 せっかく女にしてまで守ってくれた命をこんな形で捨てることになった。でもせめて父に恥をかかせたくはなかった。

「おねが……い、男だってことは黙ってて」

 なぜそんな事を言ったのかわからない。死んでしまえばそんな事はどうだってよかった。

 けれど、惨めな気がしたのだ。父も信長も笑い者だろう。

 自分のせいで。そんな自分の存在が急に疎ましくなった。

「お願い……」

 驚いた信長はその言葉に我に返った。

「わかった」

 ほっとしたのだろう。

 帰蝶は二度目の油断をした。

 その時、目の前に信長が襲い掛かってきた。

(今度こそ殺される!)

 自害もさせてもらえない。

 そう思った瞬間、意識が闇に落ちた。


 帰蝶が目覚めた時、あやめが心配そうな顔で覗き込んでた。

「だいじょうぶですか?」

 一瞬なにが起きたのかと考えを巡らせて、なぜ自分は生きているのかと思う。

「とのさま……」

 その時あやめが振り返って声をかけた相手が、座ったまま襖に寄りかかってこちらを見ているのに気づいた。

「大丈夫か」

 問われて帰蝶は肯いた。

 どれくらいの時間が経ったのか、明るい外は朝も早い時間ではないようである。

 興奮した気持ちは落ち着いていた。

 信長も穏やかな表情をしている。

「お出かけにならなかったのですか」

 毎日信長は朝早くから出かけて帰らない。

 鷹狩だとか、城下の見回りだとか言っては同じような若い家臣だけを連れて飛び回っている。

 帰蝶は信長が本当は何をしているのか知っていた。見回りといっては城下で若い者を物色して、体格のいいものや機転の聞く者を連れてくる。

 その者たちを家来に加えては、今度は野山を駆け回り、河原や山の中で合戦の真似事をして実践の訓練をさせていた。子供の戦争ごっこと思ったら大間違いだ。

 帰蝶はその様子を美濃に居る時に、遠くから何度か眺めたことがあった。ぼろ布を纏ったような子供たちが、本来の小姓達に混じって一人前に戦うのを何度か見た。

 その異様な光景に惹かれて、そして信長に興味を惹かれた。強烈な印象を帰蝶に与えたのだ。

「悪かったな」

 ふとその声に現実に引き戻された。帰蝶に乱暴をしたことを謝っている。

 あの信長が、だ。

 信長が帰蝶に当て身を食らわせたので帰蝶は気を失ったのだ。だがそのおかげで帰蝶は生きている。

「いえ……私は大丈夫ですから、お出かけになっても」

「今日はここに居る」

 信長の即答に、

「もうあんなことはしませんが」

 帰蝶は信長を見詰めかえした。信長が帰蝶をどうするつもりなのかわからないが、いまさらどうしようもない。

「お願いがあるのですが」

「なんだ」

 下がらせたあやめを伺って帰蝶は頼んだ。

「あやめは帰してやって頂けませんか?」

 信長は腕を組んだ。

「お前のことを知っているのだろう」

「ですが、あやめは悪くないので」

 帰蝶は食い下がった。

 信長は黙っている。

「と……の?」

 なんだというように信長が見た。

「なぜ、黙っていらしたのですか」

 きのうは興奮していたが、やはりなんだか腑に落ちない。

 どうしても聞きたいと思った。

 信長は帰蝶の枕元までやってくると、腰を下ろした。

 この男を恐いとは思わない。みんなは乱暴者だとかいって、家臣の中にさえ怖がるものが居るらしいが帰蝶はそうは思わなかった。

 けれど、いまの信長は帰蝶と何よりもあやめの命を握っている。帰蝶はせめてあやめのことは助けたいと思っていた。

「初めて会った時に見た」

「はい」

 帰蝶はやはり、と思っただけだった。

「だが」

「はい?」

「信じられなかった。胸が平らだったように見えたんだが、まさかとも思ったし、半信半疑だった」

「なぜ聞かなかったんですか?」

「面白いかと思って」

「はぁ?」

「男みたいに胸が小さい女なのか、それとも女にみえる男なのか。どちらにしても面白いと思ってな。しばらく様子を見てみようと思った」

 やはり変わっている。どちらかわからないなら確かめればいいではないか。知っていて、確信があってわざと知らないふりをされているのかと思ったが少し違うようである。

「それで……どうするつもりだったのですか?」

 少しの安堵と、そして冷たくなる胸のうちをかくして帰蝶は聞いた。

「遠乗りに誘ったのは試したのもあった」

(やはり)

「あそこまで俺に付いてこられるのはなかなかだ。女ではちょっと無理だと思った。なにが目的なのかは……」

 そこで少し言葉を切って信長は帰蝶を見つめた。

 帰蝶も負けずに見返した。

「どうしてきたのかはわからないでもない。でもお前を試してみたかったのも確かだ」

「私を試す?」

「そうだ」

「なにを試すのです?」

 きょとんとした帰蝶を見てフフッっと信長は笑った。

「どこまで根性が据わってるか……かな?」

 そう言うといきなり信長は帰蝶に掛けられていた薄掛けをめくると自分も隣に入ってきた。

 とっさに帰蝶は逃げを打つ。これはもう本能だった。

 信長のような男は獲物を狩るような雰囲気が常にある。同じ男でも帰蝶とはまったく違うのだ。

 哀しいというよりは、これは圧倒的な『差』でかなうなどとは思っていない。だから攻撃的に出られるととっさに身体の方が先に逃げて守りに入ってしまう。

 昨日のように向かっていくのはかなりの精神力が必要だった。

 今朝はもうその元気はない。逃げるしかなかった。

 だが信長に腰のあたりをしっかりと捕まれて引きずり戻されてしまう。なにかわからない恐怖があった。こんな思いをしたのは初めてだった。

 昨夜の記憶があるからかもしれない。組み敷かれた時の信長は本当に恐かった。彼に恐怖を抱いたのはあの時がはじめてだった。

 それが甦る。

「やめて」

 口調が哀願になっていた。

「逃げるな」

「いやっ、やだっ!」

 叫んで、再び帰蝶は混乱していた。

「落ち着け!なにもしない。話すだけだ」

 信長の落ち着いた声に帰蝶はおとなしくなる。だが身体の方はまだ震えていた。

 信長はおとなしくなった帰蝶を腕の中で抱え直すと、乱れた薄掛けを直し、そっと帰蝶の背を撫でた。そのまま二人は並んで横になる。

 帰蝶は信長の胸に抱えられたままで、緊張と安堵を同時に覚えた。不思議なのはこの安堵感なのだ。

 緊張は分かるのだが、なぜ信長のそばにいると安堵するのかわからない。数少ない例外を除けば、帰蝶は信長に対して緊張よりは安堵を覚えた。自分より強い男だからか?畏怖より安堵というのが自分でもよく分からなかった。

「また驚かせて悪かったな」

「からかったのですね、わざと怖がらせて」

 落ち着いて状況が分かると頭の回転の早い帰蝶には信長の悪戯が分かった。わざと怖がらせたのだ。

「驚かそうと思ったが、怖がらせるつもりはなった、悪かった……」

「いいえ」

 必要以上に怖がったのは自分の方だ。帰蝶は恥ずかしくなる。自分の思い過ごしで顔が赤くなった。

「聞いてもいいか」

「なにをです」

「どうして女なのか、嫌なら話さなくてもいいが」

「いえ、もういまさら隠すこともないですから」

 この先、死ぬことになっても信長なら余計なことは口外せずにいてくれると思う。いまはそのくらいの信頼は感じていた。

「父は敵が多いですから……」

「外に……ではないな」

 さすがに信長は察しがいい。

「兄は……父を誤解しているのです」

「義龍か」

「父を仇だと思っています」

「蝮どのもいろいろやってきたらしいからな。親父どのには聞いたのか」

「いいえ、父は何も言いませんし私もそのことは問いません」

「だがお前が女にさせられたのはその辺が一番の理由なのだろう?」

「兄やその家臣たちはずっと不穏でしたから。父は母と私が狙われるのを危惧したみたいです」

「お前に美濃をやりたかったのか」

 そこまで見抜く信長に帰蝶はやはりただなら無い物を感じた。

「無理です、いまさら私が男だと言うわけにもいかないでしょうし、兄もけして愚かなわけではありません」

「逆に悔やんだだろうなお前の親父は」

「そうでしょうか」

「女にするのではなかったと思ったはずだ。別に今から訂正しても問題はあるまいにどうして俺のところなんかに」

「父がどう思っていたのかは知りませんが、ここへ来たいといったのは私です」

 信長が少し驚いたように帰蝶を見た。

「なぜだ?」

「あなたを知っていました」

「どうして?」

「連れていって下さったあの国境いのあたりで何度か見かけていました」

「おれをか?」

「はい」

「小姓の格好をした小柄な男が何度かうろついてるのを見た」

「ご存知だったのですかっ?」

 川の反対の森の木陰から隠れて見ていたので気づかれているとは思わなかった。

「別に何をするわけではないようだったから、見られるくらいなんでもなかったが……そうか、あれが……さすがにお前とはわからなかったがな」

「興味がありました」

「俺にか?」

「逢ってみたかった」

「それで、会って殺すつもりだった?」

 帰蝶は黙った。本当に自分はどうするつもりだったのだろう。

「俺を騙せると思っていた?」

「わかりませ……ん」

 帰蝶は正直に答えた。

「おかしなやつだな」

 信長は笑った。

「それで?これからどうするのだ?」

「は……い?」

 どうするもこうするも信長の考えひとつなのではないか。

 帰蝶に聞かれても困る。

「ですから、できればあやめのことは国に帰して頂けると」

「それはできんな」

「でも」

「あやめを帰すと、お前の世話をするものが居なくなる。さすがに俺もお前を今更男だと振れて回るわけにはいかない」

「でも私は……」

「殺すと思ったか?」

 帰蝶は黙った。

「家名にも俺にも泥を塗ることになる。いまさら嫁が男だったとはいえないし、お前を殺して蝮とこの時期に要らぬ戦になるのは馬鹿らしい。お前は殺さないし、家にも帰さない。そのつもりでいろ」

「は……い」

 帰蝶は中途半端なまま、どうしていいかわからない。どうやら一番望まない形で、尾張にとどまることになりそうだった。

 仕方がない。

「なんなら、逃げてもいいぞ」

 ぞっとするような冷たい目で見つめられた。

「楓はやる。逃げられるならにげてもかまわん。俺はな」

 信長の言葉に

「いいえ、逃げません」

 帰蝶は小さな声で答えた。いまさら逃げてどうするのだ。逃げるとはこのまま負け犬になるだけだ。そんなのは帰蝶の矜持が許さなかった。すると、

「もう少し寝ろ」

 信長はそう言って帰蝶を腕に抱いたまま自分も寝息を立てはじめた。

 帰蝶は信長にわからないようにそっと泣いた。声も出さずに泣いた。けれどそれが何の涙なのかわからない。

 信長に叶わないと思い知らされたからか、とりあえず無事な自分に安堵したのか、見えない明日が不安になったのか。

 なにひとつわからなかった。



-綺譚メモ-


信長の父信秀はかなりやり手で、元々はこの地方の主の三家老の一人だったのが国主にまで登りつめた男です。美濃の斉藤道三も(有名な話ですが)一介の油売りから主殺しをしてまで登りつめた男で、どちらもなかなか引かないで戦いは続いていたようです。

婚儀の陣頭に立ったのは、信長の養育係じいやの平手政秀です。この養育係は信長の才能を信じ切れずに非業の死を遂げてしまいますが、父の信秀は早々に廃嫡になどしなかったところを見ると案外彼の才覚を見抜いていたのかも知れません。

ちなみに後の遺恨となる明智光秀は濃姫にとっては母方の『いとこ』に当たります。(一部では母のいとことも伝えられているまたは不明ともされています)彼は婚礼に着いてきて信長と出会ったとも言われているし、後に濃姫の口利きで臣下に下ったとも言われています。


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