厄介なあいつ(SS)
お久しぶりです。
ちょっと前に書いたSSをUPします。
キフィの親友シンが軍から失踪した直後くらいのお話です。
「キフィ・クレイー! シンはどこよ!? どこにやったのよぉー!!」
急に怒鳴り込んできて自分の襟元をガタガタ揺らされながらキフィは考えてた。
あいつってやっぱり厄介かも。
キフィ・クレイの部屋に気安く入れる人間は滅多に居ない。
しかし、彼女は違った。
ジョセフィーヌ、キフィと同じ特別上級士官である彼女はただの同僚ではなく15歳まで同じグループとして生活していた。
便宜上は、仲間だ。
「ぐるしぃ」
首をガクガク揺らされてキフィは声を絞り出した。
助けを求めたのに、遠目からケノワは無視するようにお茶を入れているだけだ。怨んでやる。
「だったら教えなさいよー!」
目尻に涙を浮かべて彼女はキフィを乱暴に手放した。
「しらない」
「よりによってアタシが遠隔地へ行ってる間にどうしていなくなるのよ?!」
睨まれてキフィは憮然と言い返した。
「知らない。何で俺に言うわけ?」
「アンタが私からシンを奪ったからでしょ?! シンがどう踏み違えたのかあんたなんかといるから!」
びっと指を指されて威張っていわれたことに目を細める。
「選んだのはシンだ」
「くっ」
ジョセフィーヌはぷいっと顔を背けた。
シンとジョセフィーヌは物心ついたときから一緒のグループに振り分けられていたらしく幼馴染だった。大きくなってその中に入ってきたのがキフィ。
あっと言う間にシンはキフィと親しくなってしまった。
それが、シンに恋心を持っていたジョセフィーヌには許せなかったらしい。
シンの事で事あるごとにぶつかっていた(ジョセフィーヌの一方的な八つ当たり)がとうとう彼女が居ない間にシンが脱走したのだ。
実際彼女が居ない間に逃げるように指示したのはキフィだった。
彼女にシンも愛情を抱いていたから。
でも彼女が向けるものとは違う、家族に向けるもの?そういうものを感じていた。
悪いけど、どうせ叶わない恋だったのだ。
「お前、俺の事嫌いなくせによく来るよな」
ぽろっと本音を漏らしてしまった。
ジョセフィーヌはキッとキフィを睨みつけた直後、手元にあった書類のファイルを取ると振りかざした。
あ、やべっ。
そう思ったときには側頭部へそれはぶつかり、頭は反動で押しやられていた。
「馬鹿っ!! 本当に、大っ嫌いよ!!」
入ってきたときと同じように乱暴にドアを閉めてジョセフィーヌは出て行った。
頭を押さえつつ横まで近づいてきたケノワを睨む。
「何で助けないんだよ!」
ケノワはいつも通り無表情に口を開いた。
「一応、あの方も上司ですので」
さらりと言われた言葉にキフィは唸った。
シンを心の中で怨んだ。
キフィの周りがいつも騒がしかったのはシンが居たからだ。
彼が居なくなれば少しは静かになるかと思ったが、今度は違う意味で自分に騒々しさがやってきた。
この俺様を殴る奴さえいる。
彼が居ない寂しさなんて感じていられない。
あいつは、やっぱり厄介だっ!
キフィが殴られるの図でした(笑)