奇妙な晩餐
「では、レイダちゃんとの出会いに乾杯!」
一人上機嫌にキフィは皆にグラスを持たせるとそういった。
彼女、レイダ・ゼイライスは結局ついてきたのだ。
テーブルに並ぶ肉や、エビの姿煮込みなどを前に、早くもレイダは後悔しているように見えた。
何故なら、キフィが連れて来たのは高級食堂として有名な店だったからだ。一介の花売りが入った事があるはずがない。
「こんな物は作法なんか気にしなくて良いから」
そうアドバイスする。
「そうそう。俺、そんな物は気にしてないしー」
そう言いつつも、キフィの手さばきは見事だった。
それを横目に、レイダに切り出す。
「それで、私に何の話が?」
「…スカート、洗えば大丈夫なんです」
「そんなのは気にせずもらっておけばいい」
いつもなら、口を挟むキフィが横でニコニコして話を聞いている。
「そんなわけにはいかないです。ケノワ様からこんなお金もらえません」
「汚したのは事実なのだから、手間賃と思うんだ」
「ですから、スカートなんて平気です。花を落としたわけでもありませんし」
「私は返してもらうつもりは無い。私が悪いのだから」
「でも」
二人の話が平行線をたどり始めた頃、キフィが発言する。
「じゃあさ、レイダちゃんって花売りなんでしょ? その代金が続く限り毎日俺のところに花を持ってきてよ。部屋に飾る」
「な、貴方は何を言っているんです。軍内の一般人の進入は禁止です」
「貴方は無しだろ。別に中に入らなくてもケノワが門まで受け取りに行けばいい」
平然と言われ絶句する。
「まってください。私がそんなに暇に見えますか? ただでさえ、あな…キフィに手を焼いているのに」
「じゃあその時間は大人しくしてるよ。なっ、レイダちゃんどうだろう?」
レイダは話を振られ、戸惑った顔で頷く。
「分かりました」
妥協案を呑まないわけにはいかない。
「花瓶が小さいからそんなに沢山要らないからね」
にんまりして、キフィはメインの肉に取り掛かった。
「貴方は馬鹿だ」
ケノワは、呆れてレイダに呟いた。
レイダの顔が一瞬歪んだのには気づかず、ケノワは久々の豪華な食事を腹いっぱい詰め込むことに専念する事にした。