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第8話 しつこい勧誘を断っていたら、いつの間にか裏社会のドンになっていた

犯罪組織『黒蛇ブラックスネーク』本部ビル。


「ええい! ガイがやられた程度で怯むな! 奴はただの高校生だ! 数で押し潰せ!」


組織の首領ドン、マムシの怒号が飛ぶ。 彼らは焦っていた。響の存在が裏社会の均衡を崩し始めているからだ。 マムシの号令により、組織が抱える暗殺者、傭兵、魔術師、総勢500名が一斉に動き出した。


ターゲットは剛田響、ただ一人。


***


放課後、駅前のクレープ屋。


「わぁ、これが新作の『マウンテンチョコバナナ』! 美味しそうです!」 「ふふん、私の奢りなんだから感謝しなさいよね」


シズクとカレン、そして響の3人は、学校帰りの寄り道をしていた。 両手にクレープを持った響は、満面の笑みだ。


「いただきまーす! ……ん?」


ヒュンッ!


響がクレープにかぶりつこうとした瞬間、遠くのビルから放たれた『対物ライフル』の銃弾が、彼のこめかみを狙って飛来した。


「……おっと」


響は口を開けたまま、左手の親指と人差指で、空中の「何か」を摘んだ。


「剛田? どうしたの?」 「いや、なんか金属の豆みたいなのが飛んできてさ。危うくクレープにゴミが入るところだった」


響は摘んだ銃弾(極太の徹甲弾)をポイッとゴミ箱に捨てた。


「豆……?」


カレンがゴミ箱を覗き込み、顔面蒼白になる。 (あ、あれ最新鋭の狙撃弾じゃない!? あの速度の弾丸を、指先で……!?)


「よし、気を取り直して……」


ブォォォォン!!


今度は暴走したトラックが、歩道に乗り上げて響たちに突っ込んでくる。 明らかに殺意を持った暴走だ。


「キャァッ!?」 「チッ、結界魔法を……間に合わない!」


シズクとカレンが身構える。 しかし、響はクレープを持ったまま、トラックのバンパーに片足を「トン」と置いた。


ドガァァァン!!


トラックは響の足にぶつかった瞬間、まるで巨大な壁に激突したかのようにひしゃげ、後輪が浮き上がって停止した。


「危ないなぁもう! ここ歩行者天国だよ?」 「運転手さん、大丈夫ですかー?」


響が運転席を覗き込むと、覆面の男たちが泡を吹いて気絶していた。


「……ねえ剛田。これ、明らかに狙われてるわよ」 「えー? 交通マナーが悪いだけじゃないの?」


その後も、毒入りのドリンク(炭酸が効いてて美味い!)、忍者部隊の襲撃(フラッシュモブかな? 完成度低いな)など、波状攻撃が続いた。


ついに、響の我慢が限界に達した。


「……あーもう! せっかくのクレープタイムなのに、ハエみたいにブンブンと!」


響は、襲ってきた構成員の一人(忍者)の首根っこを掴み、吊り上げた。


「君さぁ、どこかのグループ? リーダーに『迷惑だからやめて』って言いたいんだけど」 「ひぃッ! 本部は……六本木の……黒蛇ビルですぅぅ!!」


「よし、案内して。直接文句言ってくる」


「えっ、今から行くの響さん!?」 「剛田、相手はマフィアよ!? 私も武器を持ってくるわ!」


「いいよいいよ、ただの話し合いだし。シズクちゃんと神楽さんはここで待ってて。すぐ戻るから」


響は忍者を小脇に抱え、猛ダッシュで消えていった。 その背中からは「クレープのおかわり買って帰るねー!」という呑気な声が聞こえた。


***


『黒蛇』本部ビル、最上階。


「ほ、報告! 正面玄関が突破されました!」 「第1部隊、全滅! 魔法部隊も杖をへし折られて壊滅!」 「はやい! 速すぎます! もうエレベーターホールに……!」


モニターを見つめるマムシの顔色が青を通り越して白くなっていた。 カメラに映っているのは、次々と襲いかかる部下たちを「どいてどいてー」と手で払いのけながら、階段を駆け上がってくるジャージの男。


払いのけられた部下たちは、壁にめり込み、天井に突き刺さっている。


ドォォォン!!!


重厚な防弾扉が、紙屑のように蹴り破られた。 粉塵の中、響が部屋に入ってくる。


「たのもうー」


「ひぃっ……!」


部屋にいた側近たちが腰を抜かす。 響は部屋を見回し、一番奥の豪華な革張りの椅子に座るマムシを見つけた。


「あ、君がリーダー?」


響がスタスタと歩み寄る。 マムシは震える手で懐から拳銃を取り出し、乱射した。


バン! バン! バン!


響はそれを避けることすらせず、歩き続ける。 弾丸は彼の鍛え上げられた腹筋に当たると、「ぺちゃん」と平べったくなって床に落ちた。


「……は、はぁああ!? なんなんだ貴様はぁぁぁ!!」


マムシの絶叫。 響はマムシの目の前まで来ると、机をバン!と叩いた。


「ひぃっ!!」


「あのさぁ! 街中で危ないことしちゃダメでしょ! クレープに埃が入ったらどうすんの!」


「は……? ク、クレープ……?」


「そうだよ! みんな迷惑してるんだよ。やるならもっとこう、人に迷惑かけないように、ゴミ拾いとか清掃活動とかしなさいよ!」


響の正論(説教)が響き渡る。 圧倒的な暴力の頂点に立つ男からの、あまりにも平和的な説教。 マムシは恐怖と混乱で思考がショートし、その場に土下座した。


「は、はいぃぃぃ!! 申し訳ありませんでしたぁぁぁ!!」


その瞬間、生き残っていた構成員数百人が一斉にひれ伏した。 Sランク冒険者すら瞬殺し、銃弾を弾き返す男。 そして、前ボスを一喝して従わせた男。


裏社会の論理はシンプルだ。 『強い者が、一番偉い』。


「「「一生ついていきます!! オヤジ!!!」」」


野太い声がビルを揺らす。


「え?」


響はキョトンとした。


「オヤジ? ……ああ、もしかして俺のファンクラブ的な?」


(まあ、悪い人たちじゃなさそうだし、反省してるみたいだし、いっか)


「わかったわかった。じゃあこれからは、街の平和を守るボランティア団体として頑張ってね」


「「「ヘイッ!! 我らがボスの命により、この街の『秩序』を守ります!!」」」


構成員たちは涙を流して感動していた。 これまでの悪行を捨て、最強のボスの元で新たな組織に生まれ変わる喜び。 彼らは勝手に解釈した。響の言う「ボランティア」とは、「裏社会の掃除(シマの浄化)」のことだと。


「ん、素直でよろしい。じゃ、俺帰るね」


響は満足げに頷き、マムシが座っていた椅子にあった高級そうなお菓子を一つ掴んで帰っていった。


***


数日後。


「ねえ剛田……なんか最近、街の柄の悪い人たちが、あんたを見ると敬礼してくるんだけど」 「あれ? そういえば私の配信のコメント欄にも、『構成員一同より、スパチャ500万円』とか届いてます……」


学校の屋上で、カレンとシズクが不審そうに尋ねる。 響は購買のパンをかじりながら首を傾げた。


「んー? ああ、あいつら『剛田ファンクラブ』の人たちだよ。なんか最近、街のゴミ拾いとか、お年借りの荷物持ちとか頑張ってるみたいだし、いい奴らだよ」


響の背後には、校舎の影から彼を見守る黒服の男たち(元マフィア)の姿があった。 彼らは響に手を出そうとする不良や、怪しいスカウトを、闇から闇へと葬り(更生させ)続けている。


こうして、剛田響は本人の知らぬ間に、 『東京最大の裏組織・剛田組(仮)』の初代総長となっていたのだった。


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