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第6話 Aランク冒険者が調子に乗った結果

《D-Live 配信中:【緊急コラボ】Aランク神楽カレン様とダンジョン攻略!》


同接数:320,000人 名無しさん:画面が豪華すぎる kuma:ジャージ(最強)、シズク(癒やし)、カレン(高飛車) カレンファンクラブ:なんでうちの女神がジャージと歩いてるんだよ! 武器マニア:このパーティ、バランス悪くね?


「ちょっと剛田! もっとキリッとしなさいよ! 配信されてるんでしょ!?」


【新宿・地下森林ダンジョン(推奨ランクB)】。 鬱蒼とした木々が生い茂るフィールドを進みながら、カレンが柳眉を吊り上げて怒鳴った。 彼女は真紅のバトルドレスに、最高級の杖。対して響はいつものジャージだ。


「えー、歩きにくいんだよここ。根っこが多いし」 「文句言わない! シズクさんも、カメラのアングルもっと私の魔法が映えるようにして!」 「は、はいっ! すみませんカレンさん!」


恐縮するシズク。カレンの迫力に完全に飲まれている。 今日はカレンが「私の実力を見せてあげる」と豪語して連れてきた、難易度の高いダンジョンだ。


「いい? 私の炎魔法があれば、こんな植物系の敵なんていちころよ。剛田、あんたは後ろで指をくわえて見てなさい!」


そう言うと、カレンは前方に現れた『キラープラント』の群れに向かって杖を振るった。


「消し炭になりなさい! 『フレア・ストーム』!!」


ゴォォォォォォッ!!


渦巻く熱風と炎が、襲いかかる蔦を一瞬で焼き払う。 さすがはAランク。威力も制御も完璧だ。


「ふふん、どう? これがトッププロの力よ!」


カレンが得意げに髪をかき上げる。


「おー、すごいすごい。花火みたいだ」 「花火じゃないわよ! 上級魔法よ!」


響がパチパチと拍手をするが、その目は「きれいだなー」という感想しか抱いていない。 それがカレンには面白くなかった。もっと驚け。もっと尊敬しろ。 その焦りが、彼女の判断を少しだけ狂わせた。


「次はもっと奥へ行くわよ! ついてらっしゃい!」


カレンは先行して森の奥深くへと走っていく。


「あ、カレンさん! そっちはマップデータがない未踏破エリアです!」 「平気よ! 私がいれば何が出ても――」


カレンが茂みを抜けた、その瞬間だった。


ヒュンッ!!


音もなく、カレンの死角から緑色の影が飛び出した。 植物に擬態していたレアモンスター、**『カメレオン・ヴァイパー』**だ。 しかも、1匹ではない。3匹の影が同時に襲いかかる。


「えっ……!?」


カレンが反応するより速く、ヴァイパーの毒牙が迫る。 とっさに杖でガードしようとするが、魔法使いの筋力では間に合わない。 炎魔法を撃とうにも、近距離すぎて自爆してしまう。


(しまっ……避けきれない……!)


死の予感が背筋を駆け上がる。 スローモーションのように迫る牙を見ながら、カレンは自分の慢心を後悔した。


『ギャァァァッ!!』


ドォンッ!!!


爆発音のような衝撃と共に、目の前のヴァイパーが「真横」にすっ飛んでいった。


「……は?」


呆然とするカレンの目の前に、見慣れたジャージの背中があった。


「危ないなぁ。ここ、蛇が出るなら先に言ってよ」


響だ。 彼は残りの2匹のヴァイパーが飛びかかってくるのを、まるでお手玉でもするように見切った。


「シャーッ!!」 「はいはい、お座り」


パァン! パァン!


響が両手で同時に「裏拳」を放つ。 ただそれだけの動作で、Bランク相当の魔物がピンボールのように木々に激突し、光の粒子となって消滅した。


一瞬の静寂。 風に舞う木の葉だけが、動いていた。


「……剛田……?」


カレンが震える声で呼ぶと、響は屈託のない笑顔で振り返った。


「神楽さん、怪我ない? 毒蛇って噛まれると腫れるらしいから、気をつけてね」


「気をつけてね、じゃないわよ……!」


カレンの目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。 恐怖と、安堵と、そして圧倒的な実力差を見せつけられた悔しさ。 それらが入り混じって、感情が爆発する。


「なんで……なんであんたは、そんなに強いのよぉぉぉ!!」 「ええ!? なんで泣くの!?」 「私が先輩として……いいとこ見せようと思ったのにぃ……! バカバカバカ!」


カレンは響の胸板をポカポカと叩く。もちろん、響には蚊ほども効いていない。


「あーあ、カレンちゃん泣いちゃった」


追いついてきたシズクが、苦笑しながらカメラを回し続けている。


《D-Live コメント欄》


名無しさん:これはいいツンデレ kuma:完全に落ちたな カレンファンクラブ:解せぬが……剛田なら許す! ありがとう! 武器マニア:裏拳で衝撃波出てなかったか? 名無しさん:ジャージ > Aランク装備 が証明されてしまった


「うぅ……ぐすっ……助けてなんて言ってないんだから……」


ひとしきり泣いて落ち着いたカレンは、真っ赤な顔でそっぽを向いた。


「でも……その、ありがとう。……タイミングだけは、完璧だったわよ」


蚊の鳴くような声でのお礼。 響は「ん?」と耳をそばだてたが、カレンは「なんでもない!」と叫んで歩き出した。 その足取りは、先ほどまでの独断専行ではなく、しっかりと響の歩調に合わせたものになっていた。


「よし、じゃあ帰ろうか! シズクちゃん、今日の晩御飯は?」 「今日は『特製唐揚げ』です! 下味しっかりつけてきました!」 「最高!!」


「……ちょっと」


カレンが二人の会話に割って入る。


「私の分は?」


「えっ」 「えっ」


響とシズクが顔を見合わせる。カレンは腕を組み、ツンと顔を背けながら言った。


「助けてもらったお礼に、私の舌で味の審査をしてあげるって言ってるのよ! ……べ、別に、剛田の家に行きたいわけじゃないんだからね!」


「あはは、カレンさんらしいですね」 「響さん、唐揚げいっぱい揚げなきゃですね」


「マジかー。まあいいや、俺、唐揚げなら無限に食えるし!」


夕暮れの帰り道。 ジャージの男の両隣に、清楚系美女とツンデレ美少女。 すれ違う人々が「なんだあのハーレムは!?」と驚愕の視線を送る中、 響は相変わらず「早く唐揚げ食いてぇ」と考えていた。


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