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第10話 世界が騒いでいるけど、今日のすき焼きは最高に美味い

渋谷でのスタンピード(魔物の氾濫)から一夜明けた、とある日の昼下がり。 日本のインターネット界隈は、かつてないほどの熱狂の渦に包まれていた。 すべてのトレンドは、一人の男子高校生の名前で埋め尽くされている。


『剛田響』。


彼は一体何者なのか? SNS、掲示板、ニュースサイト……あらゆる場所で、彼の「伝説」がまとめられ、拡散されていた。


■ 大手匿名掲示板『Dちゃんねる』


スレタイ:【悲報】物理法則、ついに死ぬ。剛田響の伝説をまとめてみたwww


1 :名無しの探索者 渋谷のドラゴン、マジで星になったぞ。 衛星カメラにも映ってたらしい。


2 :名無しの探索者 あれ合成じゃなかったのかよ…… 俺、現地にいたけど「ドォォン!」って音の後、空にキラッ☆って光が見えたわ。


3 :まとめ職人 新規のために、これまでの剛田ニキの伝説(被害報告)を時系列でまとめたぞ。


【第1話】卵を守る戦い

敵:レッドオーガ(Bランク相当)

結果:一撃で壁に埋める

動機:特売の卵が割れるのが嫌だった


【第4話】素手で鉄を切る

敵:スチールゴーレム(物理無効)

結果:手刀で切断、寸勁で粉砕

動機:硬くていい運動になるから


【第7話】アイスの乱

敵:元Sランク暗殺者ガイ

結果:アイスを持ったまま3秒で圧殺

動機:風圧でアイスが溶けるから

(※後に黒蛇により判明)


【第8話】クレープ抗争

敵:犯罪組織『黒蛇』500人

結果:組織壊滅 → そのままボスの座に就任

動機:クレープに埃が入るから


【第9話】和牛防衛戦(NEW!!)

敵:アビス・ドラゴン(国家災害級・Sランク)

結果:アッパーで大気圏外へ射出

動機:和牛の脂が溶けるから


4 :名無しの探索者


3 動機が全部「食い物」で草。


5 :名無しの探索者 人類最強の動機が「食欲」ってどういうことだよwww


6 :武器マニア 俺、専門家だけどマジレスすると、ドラゴンを成層圏まで飛ばすのに必要なエネルギー量は核弾頭並みだぞ。 それを人間の腕力で? 剛田響の筋肉はオリハルコンか何かか?


7 :剛田組構成員A オヤジ(剛田様)を呼び捨てにするな。 オヤジはお肉のついでにドラゴンを掃除しただけだ。 神だぞ。


8 :名無しの探索者 ヒェッ……本職ファンクラブ湧いてて草。


■ SNSのトレンド


#剛田響


#和牛アッパー


#シズクちゃん


#神楽カレン


#物理最強


@kuma_dungeon 剛田くんの切り抜き動画見たけど、和牛の袋を地面に置く時の手つきが一番優しくて笑った。ドラゴンへの扱いとの差よwww


@karen_love カレン様がデレた!! あのツンデレAランク様が、剛田の後ろで「お肉食べたい」って顔赤くしてるの可愛すぎ死んだ。


@shizuku_fan シズクちゃん、最初は「弱小配信者」だったのに、今や「魔王の妻(仮)」みたいなポジションになってて感慨深い。登録者数100万人おめでとう!


@goda_beef 【速報】スーパー『ホーム』の和牛、剛田効果で完売。 「これを食べれば強くなれる」との噂。


@news_zero 政府官房長官、会見にて。「剛田氏への対応は?」「彼は日本の宝であり、丁重に……いや、美味しいご飯を提供して見守りたい」とコメント。政府も手出し不能か。


***


■ 剛田響の自宅(ひまわり荘)


世間がそんな大騒ぎになっていることなど露知らず。 六畳一間のアパートでは、卓上コンロを囲んで幸せな湯気が立ち上っていた。


「んん~っ!! この肉、溶けるぅぅぅ!!」


響は目を輝かせ、霜降り和牛を頬張っていた。 口の中で広がる脂の甘み。昨日、ドラゴンを殴り飛ばしてまで守り抜いた甲斐があったというものだ。


「ふふ、響さんが喜んでくれてよかったです。割り下、ちょっと濃い目にして正解でしたね」


エプロン姿のシズクが、甲斐甲斐しく響の取り皿に肉を追加する。 その横では、カレンがスマホの画面を見ながら呆れていた。


「ちょっと剛田……あんた、自分が今世界中でどうなってるか分かってるの?」 「ん? なにが?」 「『和牛の守護神』とか『食欲の化身』とか呼ばれてるのよ!?」


カレンが画面を突きつけるが、響は興味なさそうに「へー」と言っただけだ。


「そんなことより神楽さん、白滝煮えたよ。早く食べないと味が染みすぎちゃう」 「……っ! 食べるわよ!」


カレンは即座に箸を伸ばした。 彼女もまた、この「剛田空間」の平和な空気に毒されつつある。


「しかしオヤジ! さすがです! 世間の評価なんて気にも留めない、その『不動心』……!」 「勉強になります!」


部屋の外(廊下)では、剛田組の幹部たちが正座して警備をしていた。 アパートの大家さんも「まあ、賑やかでいいわねぇ」と差し入れを持ってくる始末だ。


「えぇ……もう、どうにでもなれ」


シズクは幸せそうに肉を食べる響を見て、小さく笑った。 どんな強敵が来ても、どんなに有名になっても、この人は変わらない。 ただ「美味しいご飯」と「平和な日常」があれば、それでいいのだ。


「響さん、〆のうどんもありますよ」 「最高!! シズクちゃん一生ついてく!」


「えっ……い、一生……!?」 「(……剛田、それはプロポーズと取られても文句言えないわよ)」


赤面するシズクと、ジト目のカレン。 そして、うどんをちゅるちゅるとすする最強の高校生。


窓の外には、平和な青空が広がっている。 かつてドラゴンが飛んでいった空は、今日も綺麗に晴れ渡っていた。


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