【一部最終話】第24話 魔導具ライフは波瀾万丈?
それからはあっという間で、ジルベール様が術者を教会に送り返して事なきをえた。その後、領地の息子にプロポーズされたことをリュカ様たちから聞いていたのか、「馬車での移動は危険だ」とジルベール様が言い出し、転移魔法を使いシュプゼーレ聖魔法国に到着。
超過保護になってません?
この世界で初めて私を大切にしてくれた人は、ジルベール様だった。私のことを気付いて隣国まで来てくれて、暗闇から救い出すだけじゃなくて守ってくれている。
最初は私の能力を買ってくださった。それだけで満足だったのに、魔導具の話で意気投合してから楽しい時間が増えた。
もっと色んな話がしたい。
自分の作った物を見せてどんな反応をするのか、いつの間にか楽しみになっていた。ミレイア様やお父様も喜んでくれるけれど、ジルベール様はどうやって作ったのかとか、魔法術式を紐解いて同じ物を見て話を聞いてくれる。
一方的に喋る上位神官様、国の発展を第一に考えるクライフェルゼ王国の王太子とも違う。遠くもなく、上からとか下からでもない。
同じ景色を見て、同じ方向を向いている。
利用し合うとも違う。
お互いに魔導具が大好きで、話をするのが楽しい。ジルベール様が私のために何かするたびに私も何か返したくなる。
この感情に名を付けることが怖い。
だから今はまだこの気持ちを伝えることが出来ないけれど、いつか私が怖くなくなるまで待っていて貰えるかしら? 自分勝手で都合のいいことを言ってもジルベール様は許してくれると良いな。
***
シュプゼーレ聖魔法国に到着早々、ジルベール様は私を抱っこしたまま離さない。これは王族として品位が失われるのでは?
そう内心汗だくだくだったが、周囲の騎士や衛兵、出迎えた侍女や執事はみな生暖かい目を向けている。いや、止めて?
「ゔぅ!」
「こら、分身体のくせにロゼッタにべったりするな」
「ゔゔぅ!」
何故か自分の分身である幻獣猫とジルベール様は仲が悪い。なぜに?
同族嫌悪? いや同一の存在なのでは?
「ロゼッタ」
「はい!?」
「礼が遅くなったけれど、ロゼッタのおかげでアウジリオ兄様の病が回復に向かっている。本当にありがとう」
柔らかい笑顔を向けられて、私まで釣られて笑ってしまう。
「それは頑張った甲斐がありました」
「両親にも紹介したいのだが、これから構わないだろうか」
「もちろ──」
「殿下!」
ストップをかけたミレイア姉様だ。馬車での道中、沢山お喋りをしたので私とお姉様はとっても仲良しになった。そしてとっても猫かわいがりしてくださるのだ!
今もジルベール様から私を抱き返している。うん、私は抱き枕ではないのだが。
「何を考えておられるのですか、ロゼッタは長旅で疲れているのにすぐに謁見など! それに謁見の間で会うのなら身なりを整えませんと!」
「そ、それは……確かにそうだ。早計であった。すまない」
すんなり謝罪をして和やかな雰囲気になったのだが、ジルベール様は再び私を抱き上げて離さない。
「部屋まで送っていこう」
どこまでも甘いような? 気のせいだと否定することは難しくない。でも蕩けるような眼差しを向けられたら否定が難しいと思う。
立場上、婚約者として殿下と私の仲がよいと見せつける必要もあるのかもしれない。
「ジルベール様。道中、認識阻害の魔導具を作ったので、時間があるときに見て貰えますか?」
「え、あ、うん!」
他のだと冷蔵庫とか掃除機とか大きいものだし、パッと見て用途も分からないだろうし説明することを考えたら、イヤリングとか小物のほうが良いはず。
この時の私は知らなかった。シュプゼーレ聖魔法国にも贈り物に意味があるということを。そしてイヤリングとは「いつも貴方の傍に居たい」とか「貴方を見守りたい」という意味だということを全く知らずに渡したのだった。
しかも意図せず、ジルベール様の空色の瞳と同じアクアマリンの宝石をあしらったドロップ型のイヤリングという偶然が重なる。
「私に──っ、大事にしよう(ロゼッタが私と一緒に居たいと……嬉しい)」
「喜んで貰えて良かったです。あとで利用方法とか教えますね」
「ああ、そうだな。魔導具について沢山教えてくれ」
「はい」
魔導具の話ができると思うと、自然と嬉しくなる。
その後は王城の侍女に案内されてお風呂、髪も肌も磨き上げられ、ドレスアップとめまぐるしい時間が過ぎていった。
Aラインの淡いスカイ・シルバーのドレス。銀の刺繍がお洒落で、五つ生地をふんだんに使われていて、アップリケが緩やかに広がってとても豪華だった。コルセットは着けなくとも美しく見せる作りで本当に良かったわ。
髪はハーフアップにしてもらった。以前はあまり手入れする暇も無かったのでくすんだコーラル・レッドだったけれど、今は艶やかで綺麗だ。
「……綺麗だ。ロゼッタ」
「うぅ!」
「ジルベール様」
幻獣猫とジルベール様は息ぴったりで頷く。うん、同一の存在だって実感するわ。そのままエスコートスをして貰い、謁見の間に向かう。
中庭を通るとスーパーベナ・ホワイトが美しく咲き誇っていた。その美しさに足が止まってしまった。ハート型の小さな花びらで、綺麗な八重花だ。別名美女桜とも呼ばれているらしい。
「ああ、綺麗だろう。東の薔薇庭園も良いけれど、スーパーベナ・ホワイトは夏から秋まで咲いている」
「はい」
ほんの数秒ほど見ていたら、何やら後ろのほうで甲高い声が響いた。絶叫、きいきい喚く声。女性だろうか。え、いつから王城は動物園に!?
ジルベール様を見ると顔色が青い。というかなんだかブチ切れているような?
「──っ、ロゼッタ。君の髪は目立つ、先ほどの──そうだ認識魔導具を着けて、そこのガゼボで待っていてくれないか?」
「え、あ、はい?」
言うなりジルベール様は飛び出して言ってしまった。ミレイア姉様は報告があると言ってドレスアップが終わったら先に行ってしまったのよね。護衛騎士一人と、侍女が「こちらです」と案内してくれたので大人しく従うことに。
とりあえずジルベール様にお渡しした魔導具と同じ、空色のイヤリングを耳に着ける。途端に私のコーラル・レッドが一瞬で空色に早変わりした。これで私だとはバレないはず。
それにしても一体何の騒ぎだったのかしら。
「あの、ロゼッタ様。その……髪の色が変わられたのですが、もう少し違う色には出来たりするのですか?」
「え?」
おずおずと侍女が訪ねて来るので、魔導具技師としてはその着目点が嬉しい。
「もちろんです。一応デフォルトはこの宝石のアクアマリンを基調としていますが、魔力調整するため、アクアマリンの石に触れていくと──」
「あ、少し青みが増しました」
なぜか侍女は顔を青ざめたが、もしかして青い髪は不吉とかあるのだろうか。もう少し色を濃い目にして黒に近づけよう。そう思ったとき、耳に触れていた手首を強く掴まれた。
ん?
ジルベール様?
次の瞬間、腕に痛みが走った。あまりの痛みに顔が歪む。
「我が物顔でこんな所に入り込んだのか、無作法者が!」
痛っ、そして誰!?
顔を見ようにも逆光でよく見えない。傍に居る騎士と侍女が何か叫んでいるが、私の腕を掴んでいる男の人には届かない。
「ひゅっ」
サラサラの金髪に、空色の瞳。あまりにもジルベール様に似た偉丈夫が眼前にいた。
ジルベール様じゃない? でも誰?
「お前ごときがジルの妻になれると本気で思っているのか? 国のためであったとしても精々二番手──愛妾が限度であろう」
唐突にジルベール様似の偉丈夫に怒鳴られ、腕を掴まれた。これだから王城での生活は!?
どうやら私の楽しい魔導具ライフは波瀾万丈確定らしい。
楽しんでいただけたのなら幸いです。
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今回は第一部のみまででいったん完結扱いとしております。
お読みいただきありがとうございます⸜(●˙꒳˙●)⸝!
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