表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/29

第2話 我慢の限界のようです

「ああ、ロゼッタ。入りなさい」

「……はい」


 侍女たちが王都でも人気なケーキを綺麗に4等分に切り分けていた。ティーカップも四つで、当然のように私の分はない。それを誰も指摘しないことに落ち込んだ。


「…………っ」


 フォビオ以外に私の両親と、病弱気味のアデーレの姿に嫌な予感がした。

 末の妹のアデーレは両親のお気に入りだ。病弱なフリをして弱々しい振る舞いをする妹は、いつだって周りを味方にするのが上手だ。平静を保ちながら空いている一人用のソファに腰を下ろした。


 沈黙。誰も何も言わない。アデーレはちらちらと私の顔を見て、フォビオも私が口を開くのを待っているようだった。これ私が話さないとダメな感じなの?

 モヤッとしつつも、彼らが望む言葉を投げかける。


「……フォビオ、話ってなに?」

「君は一人で生きられるかもしれないけれど、君の妹……アデーレは病弱で、僕の支えが必要なんだ。そんな彼女に寄り添ってあげたい」


 この人は何を言っているのだろう。病弱?

 確かに風邪を引きやすいけれど、それだけだ。余命幾ばくかとかではない。でも今はそんなことどうでもいい。一番の問題は別にある。


「……それって」

「だから、()()()()()()()()()()()()

「──っ」


 婚約解消されたことに多少なりともショックを受けたけれど、それ以上に唯一の希望が砕けたことのほうが衝撃だった。

 え? 待って、待って。

 スザンヌ姉さんとの約束が──。

 それじゃあ奴隷紋が消せない。ずっと姉の奴隷でいるしかない?


「けほけほっ……ロゼッタ姉さん、ごめんなさい。フォビオとお話をしている間に……話を聞いてくれるようになって……」


 咳をするアデーレの顔は青い。愛くるしい容姿で涙を浮かべながら言われてしまえば、文句を言う気持ちを持つことさえ許されない気がした。案の定、何も言わない私に両親や婚約者は非難の目を向けてくる。

 声が遠のいていく。

 婚約解消するというのなら、私が今まで積み上げてきたものは一体何だったのか。足下が脆く崩れていく。


 私の立ち位置は常に砂上の城だったのだと、愚かにも今更気付く。いや気付いてしまったら心が折れそうだったから、一縷の望みに縋って気付かないフリをしてきたのだ。

 情熱的な恋でも、愛もないけれど、それでも今の暮らしよりは幸せになると──そう思っていたのに……。


「ああ、なんて可哀想なの。私が丈夫に生んであげられなかったばかりに」


 可哀想? なんでアデーレが可哀想なの?


「お母さん」

「お前のせいじゃない。もう一人欲しいといったのは私なのだ」


 なんでアデーレを慰めているの? 悪いのは私みたいな言い方をして──。


「おじさん、おばさん。僕はアデーレがこの世界に生まれてきてくれたことを感謝しています。だから自分たちを責めないで」

「そうよ、お父さん、お母さん」


 ああ。いつものパターン。こうやって黙っていると皆が私を睨む。


 私の初恋の相手であり婚約者のフォビオは、病弱で庇護欲が湧く妹を選んだ。「お前がアデーレの代わりだったら」とか「アデーレが可哀想だわ」と言って、事務の仕事を押し付けてくる両親。

 幾つものホテルを経営していて、いずれは私に相続させてフォビオは婿として入る予定だった。だから忙しい中で事務の仕事を覚えたのだ。『アデーレはどこかの裕福な貴族か商家に嫁ぐから』と甘やかされて育った。


 アデーレとフォビオの仲を認めるとすると私は別の嫁ぎ先に行くか、ホテルで今までのようにこき使われる可能性が高い。

 スザンナ姉さんはリーニャ商会に嫁いでいるので離縁しない限り、付与(エンチャント・)刺繍加護(エンブロイダリー)魔法省略巻(スクロール)付与(エンチャント)魔法(・マジック)などの魔導具関係の仕事を押しつけてくるだろう。またフォビオと結婚解消となったので、奴隷紋の解除も白紙だとか言い出すに決まっている。


 面倒なことは全て私に押しつけてくる両親も、姉も、私から全てを奪う妹も一度だって私のことを優先してくれたことなんてなかった。

 この先もそれが変わらない。そのことが今、決定してしまった。


「じゃあ、これにサインをしてほしい」

「──っ」


 バタン。


 頑強な扉が未来を閉ざした音が聞こえた。

 自由になれない。

 鳥かごから一生出られない。

 このまま独りで搾取され続ける生き方──一生奴隷なの? ……っ、そんなの嫌! 

 嫌、嫌、嫌!! 絶対に嫌だ!

 自由のない押し付けられた生き方なんてもううんざり!! それならいっそのこと──。


 あ。


 その時、()()()()()()()()()()()()()

 ケーキを切り分ける際に、侍女たちが回収し忘れたケーキナイフだ。そのナイフに私の顔が写り込んだ。

 こんなナイフでも心臓を貫くことは出来るんじゃないかしら。そう思った瞬間、衝動的に私は自分の死を渇望した。

 自由になれないのなら──目の前で死んでやる!

楽しんでいただけたのなら幸いです。

下記にある【☆☆☆☆☆】の評価・ブクマもありがとうございます。

感想・レビューも励みになります。ありがとうございます(ノ*>∀<)ノ♡


お読みいただきありがとうございます⸜(●˙꒳˙●)⸝!


最近の短編。全て1万前後

【短編】私悪役令嬢。死に戻りしたのに、断罪開始まであと5秒!?

http://ncode.syosetu.com/n0205kr/ #narou #narouN0205KR


【短編】

初夜で白い結婚を提案されたので、明日から離縁に向けてしっかり準備しますわ

http://ncode.syosetu.com/n3685kr/


【短編】え?誰が王子の味方なんて言いました?

http://ncode.syosetu.com/n7670kr/


新作連載のお知らせ

深淵書庫の主人、 鵺は不遇巫女姫を溺愛する

時代は大正⸜(●˙꒳˙●)⸝

今回は異類婚姻譚、和シンデレラです。

https://ncode.syosetu.com/n0100ks/1/ #narou #narouN0100KS


同じく新連載

ノラ聖女は巡礼という名の異世界グルメ旅行を楽しみたい

https://ncode.syosetu.com/n2443ks/4/ #narou #narouN2443KS


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

(↓書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください↓)

https://potofu.me/asagikana123

html>

平凡な令嬢ですが、旦那様は溺愛です!?~地味なんて言わせません!~アンソロジーコミック
「婚約破棄したので、もう毎日卵かけご飯は食べられませんよ?」 漫画:鈴よひ 原作:あさぎかな

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

【単行本】コミカライズ決定【第一部】死に戻り聖女様は、悪役令嬢にはなりません! 〜死亡フラグを折るたびに溺愛されてます〜
エブリスタ(漫画:ハルキィ 様)

(↓書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください↓)

https://potofu.me/asagikana123

html>

訳あり令嬢でしたが、溺愛されて今では幸せです アンソロジーコミック 7巻 (ZERO-SUMコミックス) コミック – 2024/10/31
「初めまして旦那様。約束通り離縁してください ~溺愛してくる儚げイケメン将軍の妻なんて無理です~」 漫画:九十九万里 原作:あさぎかな

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

コミカライズ決定【第一部】死に戻り聖女様は、悪役令嬢にはなりません! 〜死亡フラグを折るたびに溺愛されてます〜
エブリスタ(漫画:ハルキィ 様)

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

攫われ姫は、拗らせ騎士の偏愛に悩む
アマゾナイトノベルズ(イラスト:孫之手ランプ様)

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

『バッドエンド確定したけど悪役令嬢はオネエ系魔王に愛されながら悠々自適を満喫します』
エンジェライト文庫(イラスト:史歩先生様)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ