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第13話 魔導具の歴史と、養父登場? 

 翌日、私はこの世界の情報を得るため歴史書、地学、最近の新聞を持ってきてもらった。やったー本だ♪

 改めてクライフェルゼ王国と、シュプゼーレ聖魔法国との関係を含めた歴史的背景から学び直すことに。ロゼッタとしての知識はあるものの、学校に通うこともできず、その知識はだいぶ偏っているからだ。


 歴史書は読み比べをするためクライフェルゼ王国出版と、シュプゼーレ聖魔法国出版の二冊を用意してもらった。

 クライフェルゼ王国は自国を華美しすぎで、シュプゼーレ聖魔法国に対して皮肉めいた部分が多い。というかもう悪口じゃないか。品性を疑うレベルだった。


「まずはクライフェルゼ王国の特徴について……と」

「それならこの本がおすすめだよ」

「ありがと──!?」


 ジルベール様が目の前のソファに座っていた。いつの間に!?

 しかもテーブルには大量の本が積み上がっている! なんで気づかなかったの!?


「何度かノックしたんだけどね。夢中で読んでいてすごい集中力で驚いたよ」

「す、すみません」

「良いって。ああ、この本は読みやすいよ」


 ぺらぺらとページを捲った。

 ふむふむ。クライフェルゼ王国は背後に山脈が連なり、冬の山越えは自殺行為に等しい。春から秋は雪が溶けるものの断崖絶壁が多いため、山越えがそもそも難しい地形だ。

 山脈の向こうのイティス連合国とは不可侵条約を結び、隣国のシュプゼーレ聖魔法国とは古くから交流があり同盟を結んでいた。王家の世代が変わるタイミングで同盟条約の見直しを行う慣例があり、時の王子がシュプゼーレ聖魔法国を訪れた時に、その事件は起こった。

 シュプゼーレ聖魔法国の広大で一面に広がる麦畑や、国内に幾つもの貿易都市があり、自国よりも生活水準が高い町並みを見て「自分の物に出来ないか」と王子は愚かにもそう思ったそうだ。


 うん、アホなのかな。アホすぎる。

 ちなみに王子は騎士たちに命じて国境付近のルクレ要塞を落とそうとしたらしい。止めろよ、騎士。

 そんな暴走を止めたのはシュプゼーレ聖魔法国の将軍だった。騎士たちを瞬殺、王子との一騎打ちにの末、惨殺。そもそもシュプゼーレ聖魔法国とクライフェルゼ王国ではそもそも大国と小国、武装も武器も、魔力量も、食料も、人口も、士気も兵たちの練度も次元が違ったのに、何故勝てると思ったのか。

 クライフェルゼ王国は賠償金を支払い、第二王子が属国に近い形で和平を結んだ。これが500年前。とりあえず王家にまともな後継者がいて本当に良かった。


 ぺらぺらと国の発展の流れを読み解く。ジルベール様もいくつかある本を手にして、読んでいた。そうしているうちに侍女がお茶を用意してくれて、ゴニョゴニョと話しかけている。


「見ての通り、ロゼッタ嬢は私と一緒にいるから他の来客は断ってくれ」的なことが聞こえてきた。どう言うことだろう?

 私を訪ねてきた?

 少しだけ耳をそばだてると、色々なことがわかった。


 私と接点を持とうとするクライフェルゼ王国の貴族たちが、面会を求めてきたらしい。しかし「隣国の王子(ジルベール様)が先に面会している」と言う理由で断っていると言う。

 今の段階で会えば平民の私をどうにでもできてしまう。それをジルベール様は良しとせず、かと言って私が負担にならない感じでフォローしてくれたのだ。


「あ、これはこの国の『魔導具の歴史について』の本もあるけど読むかい?」

「是非! わあ! ありがとうございます」

「うん……役得だなぁ」

「?」


 ジルベール様に感謝しつつ、渡された本に集中する。

 クライフェルゼ王国は魔法を使える者が少なかったものの、300年前に魔法鉱石が発掘されたことで、魔力補助道具として魔導兵器が開発された。ふむふむ。威力は初級レベルの魔法と同等。その頃から魔物が増えたため、魔物殲滅用魔導兵器としてシュプゼーレ聖魔法国から生産許可が下りた。

 なるほど。アホ王子の暴走以降、シュプゼーレ聖魔法国のほうが力関係は上なのね。国の関係性って大事だから調べておいて良かった。


 それからこの国では魔導兵器の開発が進み、他国に魔力増幅導具を可能とする魔法宝石を作り上げ、実質それは魔導具の核として取引が行われるようになった。魔法鉱石を磨き上げたものが魔法宝石……。そっか、魔法宝石はこの国では兵器のみに使用しているから、見たことがなかったのね。


 250年前に王室魔導具研究室が設立。魔物専用魔導兵器の他に、羊皮紙に魔力術式を施したものを魔法略巻(スクロール)と名付け、強力な魔法が撃てる(一回限りの使い捨て)武器が開発される。


 うーーーーん。近年の魔導具の歴史を見ても、生活用魔導具など一つも出てこなかった。魔導具は生活を豊かにするものではなく、魔物を討伐するための手段であり武器という認識が強かったのね。


 この国で生活用魔導具を作ったのは、リーニャ商会の会長の息子であるジェレミアさんだった。スザンヌ姉さんの夫で、私にとっては義理の兄である。一度も会ったことがないけれど。

 生活用魔導具のカタログだ! リーニャ商会のだけど。どんなのが載っているんだろう?


 ジェレミアさんが作ったのは魔法瓶、魔導ポット、魔導暖房具、空になると自動洗浄される魔導鍋……と、本当に庶民の生活水準を向上させるような魔導具ばかりだ。あ。こっちの通信魔導具や、魔導ランプ、付与(エンチャント・)刺繍加護(エンブロイダリー)は私が開発したんだった。ジルベール様が私を引き抜くために、婚約者枠の切り札を出したのも頷けるわ。

 他に魔導具に関する新聞にも目を通してみた。ジルベール様も本に夢中で、お互いに無言だけど、この雰囲気は居心地が良かった。


 そしてこの国における魔導具の認識を改めた。

 なるほどねぇ。魔導具の需要って今は少し裕福な平民や商人、下級貴族であって上級貴族や王族は関心がなかったのね。意外。……ああ、原因は魔導具研究所か。


 現在の魔導具研究所の所長サントス・レフティネン、伯爵家当主『平民の魔導具は、似て非なる物。彼らは魔導具を作っている我々の猿まね以下だ』と激しく批判していたのだ。なるほど。この国では魔力量が多い者は少ない。だからこそ魔導具の扱いその物を、貴族のみの優位性としたかったのだろう。


 なるほど。ジェレミアさんは、この国で生活用魔導具を広めるのは難しいと早々に諦め、シュプゼーレ聖魔法国に売り込むことにしたのね。まあ、商人なら当然よね。売れると分かっていているのなら、売れる市場に持ち込めば良い。


 シュプゼーレ聖魔法国では魔法適正による職種が多いけれど、魔導具の需要も近年少しずつ広まっていると書かれていた。クライフェルゼ王国よりはちょっと期待できそう。ジルベール様も魔導具開発局を作るって息巻いていたし……!


「魔導具開発局か」

「ロゼッタ嬢?」

「シュプゼーレ聖魔法国の魔導具の歴史についても知りたいわ」

「……! それは嬉しいな。でもこの国では詳しい本はないから、一緒にシュプゼーレ聖魔法国に行った時に、図書館を案内するよ」

「まあ!」


 心躍る響きだわ。ジルベール様は私を喜ばせるのがとても上手だ。



 ***



 その日の夕方に、年配の騎士と若い騎士が部屋を訪れた。どなただろう? 警備上の関係で交代制とか?

 ゴニョゴニョとやりとりをしたのち、私に振り返った。


「ロゼッタ嬢、明日には奴隷紋の解除が行われるそうだ。私が立ち会いをしても?」

「もちろんです。一人だとやっぱり緊張してしまうので、同行していただけると助かります!」


 私の言葉にジルベール様は、ホッとしている様子だった。私としても全く知らない人がいるよりも、安心できる。


「それと彼らのことを紹介させてくれ」


 五十代前後に見えるが鍛え抜かれた筋肉は凄まじく、騎士服を着ていてもすぐにわかる。上腕二頭筋もすごい。筋骨隆々、百戦錬磨の騎士というよりなんか将軍っぽい人だわ。


 もう一人はエメラルドグリーンの美しい髪の若い騎士で、中性的な顔立ちだけれどとても凜としている。うーん。このお二人、もしかして親子?

 威厳のある壮年の騎士は私を見るなり、驚くほど笑顔になる。あれ? 思った以上に好意的っぽい?


「ロゼッタ嬢。君と養子縁組をしても良いという方を連れてきた」

「え?」


 パドゥン?

 昨日の今日で私の条件に合う貴族を連れてきたと言う。え、ジルベール様有能すぎません? しかも他国なのに、よくすぐ連れてこられましたね。


「ロゼッタ嬢、お初にお目にかかる。私はアルフレード・デサンティスと言う、現在は騎士団総括。まあまとめ役のようなことをさせてもらっている。爵位は侯爵で、リーニャ商会に支援する予定だったのだ。天の采配に感謝せねば」


 あ。なるほど、リーニャ商会に支援する予定の貴族の方だったのね。だからこの国にも来ていた、と。

 リーニャ商会……。ジェレミアさんが頑張っていたけれど、今回のことで大打撃を受けて廃業確定だとか。ジェレミアさんは姉と違って魔導具マニアらしいが、この人も私のSOSには気付かなかったのよね。覚醒前にも魔法術式にSOSを書き込んでいたんだけれど、やっぱり隠蔽してたってことよね。それともこの国の魔導具の技術は、私が考えていたよりもずっと低い?

 そんなことをつらつらと考えながら、挨拶をする。


「初めまして。デサンティス卿、ロゼッタと申します」


 両手でスカートの裾をつまみ、軽くスカートを持ち上げて、膝を曲げて挨拶をする。この世界でこの礼節が正しいのか不明だけれど、挨拶は大事だもの。

 ん? あれ? 皆固まっているけれど、やっぱり付け焼き刃的な挨拶は不味かった??


「殿下、彼女は本当に平民なのですか?」

「それは間違いない。……だがとても知的で、魅力的な人だ」

「なるほど」


 デサントティス卿は殿下とコソコソ話しした後、私に向き直った。みなさん、コソコソ多くありません?


「いや失礼。見事な挨拶でしたので少し虚を衝かれました。さて私の娘もさせてほしい」

「お初にお目にかかります。ミレイア・デサンティス、女の身ですが近衛騎士団を務めております」

「はじめまして、ロゼッタです」


 親子揃って騎士とか格好いい。背筋もピンとしていて、姿勢がとっても素晴らしいわ。それにしても侯爵様が名乗りを上げてくれるとは思わなかった。


「殿下から素晴らしい魔導具技師だと伺っているが、私にもその実力を見せてもらえないかね?」


 さっそくきたーーー!

 私の技量に興味を持っているようで嬉しい。ここはド派手にすごい感じなのを出そう。やっぱり洗濯機? それとも通信魔導具? 迷うなぁ~。

 色々考えつつも私は空間格納魔導具のブレスレットに触れた。次の瞬間すぐ傍に空間の穴が生じたので、手を突っ込んだ。何がいいかな~。


「ロゼッタ!?」

「はい!?」


 急にジルベール様が大きな声で名前を呼んだので、両肩が跳ね上がった。


「その空間は!? 亜空間? ロゼッタが何かしたとか……。時空間魔法の使い手……いやまさか伝説の亜空間魔導具!?」


楽しんでいただけたのなら幸いです。

下記にある【☆☆☆☆☆】の評価・ブクマもありがとうございます。

感想・レビューも励みになります。ありがとうございます(ノ*>∀<)ノ♡


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