第11話 思ったよりも危機的状況?
その後は「軽く食事を取りながら」と提案されたので頷いた。もっとも護衛の人たちが「うんって言ってあげて」と無言の圧があったからでもあったが。
客室にテーブルや料理など色々準備をして貰って、食べることに。自国じゃないのに、優遇されている部分を見ると、改めて王族のすごさを実感する。
医師の診察で「栄養失調です」と診断されたこともあり、料理は体に優しいジャガイモのスープと鳥とトマトリゾットだった。
「美味しいです」
「それは良かった。……食べながら聞いて欲しいのだけれど、この後ロゼッタ嬢がどうしたいかによって、私もどう動くべきか考えているんだ」
「と言いますと?」
「今後のロゼッタ嬢の扱いについて、今は『私の大事な知人』という形で王城側には私と同じ客人対応をして貰っている」
「ごぶっ」
スープを吹き出さなかった私を誰か褒めてほしい。忘れていたけれど、私の待遇が良い理由を思い知った。というかそうですよね。奴隷紋の被害者であっても普通なら王城の客間なんて好待遇とかないですよねーーーー。失念していましたぁあ。
あーーー、恥ずかしい。穴があったら入りたい。
「……ロゼッタ嬢?」
「あ、いえ……。ジルベール様に助けて貰って私は運が良かったと実感しまして……」
「……うん。私も君という素晴らしい女性に出会えて……僥倖だったと思う」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
ジルベール様はふにゃりと蕩けるような笑顔を見せるので、こっちまで頬が熱くなった。イケメンって凄いな。
「今は『私の大事な知人』として待遇を受けているが、恐らくクライフェルゼ王国側と教会から後継人と仕事斡旋の打診がくるだろう。その時にロゼッタ嬢が自国で生活することを選ぶのか、それと私たちとシュプゼーレ聖魔法国に行くかで私もやるべきことがある。……それにリーニャ商会の商品にロゼッタ嬢が関わっていたとなれば、その才能を手中に収めたいと暗躍する者も多い。良心的な相手もいるかもしれないが『奴隷紋を施された者なら、何をしても良い』と考える愚かな者もいるかもしれない」
「!?」
ジルベール様の危惧していることがよく分かった。確かに今の私は才能はあっても後ろ盾は全くない平民だ。私もそれがあったから、上流貴族の人とパイプを作りたくて、偶然だけれどジルベール様にSOSを出した。この辺は賭けだったけれど。
「先ほどの話に戻ってしまうのですが、私はこの国に留まる気はないです。あれだけ派手に動きましたし、何よりこの国に頼れる人もいません。いえ、学びたい人、頼りたいと思える人がいない──と言うのが正しいでしょうか」
それほどまでに私の友好関係は狭い。だからこそ自国で改めて基盤を作りよりは、他国のほうが気持ち的に楽だ。
「そうか。移住希望なこと。……それでも君の才能を他国にやりたくないと、王家や教会は考えているだろう。だから──」
その時の秘策?
一体どんな交渉材料を?
「その時は、『《《私の婚約者として》》君をシュプゼーレに連れ帰る』という対応を取りたいと思うのだが──良いだろうか」
「ふぇ」
こんにゃくぜりーじゃない、こんやくしゃ……。
婚約者!?
婚約者ってさっき言っていたアレよね? え、私さっき王家との婚姻や養子は嫌だって言ったよね?
「そのぐらいしないと、他国に移住できないってことですか!?」
「強いて言えばそうだ。すでにこの国の王侯貴族には目をつけられていると思っていたほうがいい」
「ひゃあ……」
思っていた以上に自体は切迫した状況だったりしている!?
「一番、狙っているのは、うちの王子だけど……」
「リュカ」
「はい、黙ります」
またゴニョゴニョ言っている。仲良しだなぁ。
「私は第五王子で王位継承権を放棄して、王族の籍を抜けて公爵になる予定だ。王家よりは窮屈な思いはさせない」
「それは……」
「シュプゼーレ聖魔法国では、ロゼッタ嬢が好きに研究ができるよう尽力しよう。もっともロゼッタ嬢が一番懸念しているマナーや礼節は、貴族の養子になるなら、最低限でも学んでもらう必要はある。そこは申し訳ないが、呑み込んでもらうしかない」
「うう……」
クライフェルゼ王国が色々言ってきた時に、隣国とはいえ爵位や立場が弱ければ跳ね除けることも、私を守ることも難しいということだろう。それはその通りだ。
そして貴族であれば、確かにマナーや礼節は必要にある。これは自分の価値を低く見積りすぎていたかも……。
「まずロゼッタ嬢は養子を望んでいるけれど、それだけではクライフェルゼ王国からも上流貴族から打診が来るだろう。それに婚姻を要求してくる可能性は十分にある」
「あ。私自身平民なので後ろ盾もそうですが、伴侶としての席を埋めたほうが手っ取り早いということですね!」
「てっとり……あーーーー、うん。……その、うん、とりあえず今はその認識であっているかな。私は……その……ロゼッタ嬢が気に入ったから……本心でだな」
「なるほど!」
護衛の人たちが「ヘタレ」と言っているのが聞こえたけれど、気のせいだろう。
こうなってくると養子になるだけでは、魔導具研究を謳歌するのは難しい。多少の不自由と好きなことができて、魔導具作りに理解のある人がいい!
そう考えるとジルベール様の婚約者という肩書はとても素晴らしい提案に思えてきた。
楽しんでいただけたのなら幸いです。
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