第9話 私を救い出した方は隣国の王子でした・後編
「こんなに魔導具のことについて語れるのが祖母以外にいるなんて……」
「わ、私も。魔導具についてこんな風に話を聞いてくださるなんて、夢のようです」
「ロゼッタ嬢」
ちょっと涙ぐんでしまった。だってしょうがないじゃない。生まれてからずっと家のため、姉の奴隷として生きてきて、ホテルや領地運営は事務仕事で関わる人間は最小限だったし、取引とか色々あっても基本的に外に出ることを姉が許さなかった。
だから魔導具について語ることも、誰かと話すことあって……機会がなかったのだ。それに前世の記憶を取り戻す前の私の心に、そんな余裕もなかったもの。自分が上手くやらなかったら殺される、あるいは居場所がないと思っていたから。
ようやく安心して、自分の居場所を作ることができる。
「本当にあのクソ女と家族は許せない」
あまりにも低い声に、空気が一瞬で凍りつく。思わず体が竦んでしまう。
な、なにか粗相した!? ホッとするはまだ早かった! やっぱり不敬罪とかになる!?
「ああ、ロゼッタ嬢のことじゃないから」
ジルベール様の優しい言葉に、不敬罪は免れるだろうか? と一縷の希望が出てきた。
目が合うと私を安心させるために飛び切りの笑顔を向けてくれた。
ひゃああ。直視できない。あまりの美しさに目が潰れそうになるのだけれど!?
「ロゼッタ嬢?」
コテンと小首を傾げてあざとすぎません? あとそんなことを他の方にしたら、勘違いしますよ? 私は弁えているので大丈夫ですが!
「殿下、異性としては一応意識して貰えているようで良かったですね」
「煩い」
なんだか話がごちゃごちゃし始めたので、魔導具の話に戻してしまおう。
「そ、そんな訳で、ご依頼頂いた魔導具の修理させていただいて光栄でした! だからできるのなら私が直したという証を残したかったのです。あとご推察の通り、保護と……そのできれば」
「できれば?」
和やかに微笑んでいるが、この類いの笑みは本当のことを言うまで終わらせない気だ。
金髪の髪も今日は三つ編みにしていてお洒落だし、服装も以前の貴族服よりも豪華になっている。直視しづらいけれど、嘘は見抜かれるわね。たぶん。
「……できれば隣国、シュプゼーレ聖魔法国に移籍する手続き方法と、職業の斡旋を手助けして貰えないかと思ったんです」
「……ん?」
「それと可能なら上流貴族の養子を希望します。ただ養子になるに当たって魔導具研究を第一に考えてくれる理解がある家のみ。こちらの注文に対して引き受けていただけるのなら、私の持つ魔導具をいくつかお渡しますし、リーニャ商会の功績以上ものを提供できます」
「んん??」
「今なら設計図もお望みでしたら付けますので、信頼できる方の仲介をお願いできませんでしょうか?」
怒濤の売り込みをして見た。本来なら手札を明かすべきはないのだけれど、ジルベール様相手の場合は、晒さないほうが疑念を持つ可能性が高い。赤裸々に語ってみた。
要約すると魔導具研究をする場所と衣食住の保障してくれる場所か人の紹介をしてほしい。その代わり私の技術と商品を提供する。ギブアンドテイク。WIN-WINの関係こそ商談において大事なことだ。
さあ、私の交渉術はどう!?
「!?」
「「ぶっ」」
部屋の傍に立っていた護衛者のお二人は、唐突に吹き出して大笑いしている。しかもお腹を抱えて……。
ええええ……??
思った反応のどれでもない。喜ぶわけでも怒るわけでもなく、爆笑ってどういうこと?
「ぶふふふっ、殿下。この嬢ちゃん凄いっすね!」
「ぶふっんん……リュカ。不敬だぞ。でもあの殿下相手に寄りかかるわけじゃなく、交渉を……それなのに殿下はぶぶっ……」
「リュカ、アベル!」
なぜ爆笑しているのでしょう。面白いことを言った記憶は無いのですが……。そしてジルベール様は顔を真っ赤にしている。なぜに。
「…………ロゼッタ嬢が、とても善良な娘だというのが分かって良かった。そういうことを言ってくれる君だから……私は……」
ジルベール様は頬を掻きながら安堵半分、しょぼんとしている。途中でごにょごにょ言っているのは独り言っぽい。
うーん、分からない。
「ロゼッタ嬢。……その保護と言っていたので、てっきり『私のほうで面倒をみてほしい』という意味だと……。王家に庇護下を求めるのは、君の才能を鑑みれば妥当だと思ったのだが……」
「え……あ!」
ジルベール様の言葉に、私はピンときた。そういえばそんなことを口走ったし、あの状況であれば保護=養えという風に聞こえたのだろう。これはいけない。早合点だとお伝えしなければ!
「すみません! 王家の後ろ盾があるのは嬉しいのですが、いくら才能があっても王家の養子というのは無理があると思いますし、王家の責務など英才教育を受ける場合、研究時間が減るので私としては嬉しくはありません」
「ぶふっ、そうじゃねぇ」
「くるしい……っ」
「リュカ、アベル……」
貴族というだけで色々面倒な側面があるのに、王族になればもっと制限も掛かるし立場も生じるし、公務などもあるだろう。そもそも私生児とかでない限り難しいし。なにより王家の一員になる準備に時間があるのなら、今まで出来なかった魔導具研究に回したい。縛られる生き方なんてお断りだもの!
「いや……もう一つだろうだろう。《《最も簡単に王家の庇護下に入る方法》》」
「???」
ジルベール様はちょっと照れた顔でちらちら私の顔を見るのだけれど、ごめんなさい。全く分かりません。そんな都合のいい方法があるの?
護衛の人に答えを求めるも、未だお腹を抱えて笑っている。長くない?
そんなに面白いことだった?? うーん、わからない。シュプゼーレ聖魔法国特有の法律でもあるのかしら?
楽しんでいただけたのなら幸いです。
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