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【完結】悲劇の継母が幸せになるまで  作者: やきいもほくほく
四章 家族で幸せになるために
69/70

⑥⑨


──それからは心穏やかな日々を過ごしていた。



今でもアンリエッタとのお茶会は楽しみの一つだ。

表では母親としてだが、二人きりの時は友人のようにヴァネッサと呼び姉のように慕ってくれる。



「聞いて、ヴァネッサ! マエル殿下ったらひどいのよ。わたくしのことを可愛くないって言ったの! このわたくしをよ!?」



アンリエッタは王太子であるマエルの婚約者候補だ。

王家主催のパーティーの前、開かれたお茶会で初めて顔を合わせたそう。

その時は他の令息たちと一緒に悪戯を仕掛けてくるほどに親しげだった。


だが昨日、改めて顔合わせをおこなったそうだが、どうやらマエルはアンリエッタに冷たい態度をとったらしい。

そのことにアンリエッタは傷ついているようだ。

気の強い彼女がじんわりと涙を滲ませている姿を見る限り、マエルにそう言われたことがショックだったのかもしれない。


(もしかして好きな女の子にはいじわるをしてしまうという、男の子特有のアレかしら……)


恋愛経験はまったくないが、恋愛ものの物語ならばたくさん読んできた。

それからアンリエッタの話を聞きつつ、ヴァネッサはどこかで聞いたことある流れだと思っていると……。


(あっ……! そうだわ、思い出した。これは物語で知ってる。アンリエッタがマエルを遠ざけるきっかけになったという一件ね)


ヴァネッサが自ら命を絶ったところを目の当たりにしたアンリエッタは心が弱っていた。

シュリーズ公爵の噂のこともあり幼いアンリエッタは知らず知らずのうちに精神的に追い詰められていたのだろう。


この件でマエルに『可愛くない』と、言われたことでアンリエッタは反射的に彼に暴言を吐いてしまう。

そこから二人の確執が始まるのだ。

しかし結局はアンリエッタが婚約者に決まってしまい……という流れになっていたことを思い出す。


今は物語と状況も違うため、アンリエッタはなんとか取り繕うことができたようだ。

ここでアンリエッタが悪役令嬢の道を歩まないようにヴァネッサに手伝えることがあるとすれば、マエルとの仲を悪くならないようにすることではないだろうか。

それにヴァネッサの気のせいでなければ、アンリエッタとマエルは互いを意識して好意を持っているのかもしれない。

つまり気になる相手ということだ。



「アンリエッタ、聞いてちょうだい!」


「なにかしら?」


「男の子はね、好きな子ほど意地悪したくなるのよ!」



アンリエッタはそれを聞いて目を見開いた。

ほんのりと頬が赤くなり髪の毛をいじっているところを見るにヴァネッサの予想は大当たりだ。



「そうなの……? 本当に?」


「そうよ。だって関心がないのにそんなこと言ったりしないでしょう?」


「たっ、確かにそうよね! ……ふーん、そう。マエル殿下も可愛いところもあるじゃない」



アンリエッタはほんのりと頬を染めている。

マエルのことを思い出しているのだろうか。

にこやかに笑ったヴァネッサはアンリエッタとマエルの恋がうまくいくことを祈っていた。


その夜にヴァネッサはいつものようにギルベルトと過ごしていた。

ヴァネッサの体調が完全に回復してから、こうして積極的に触れたり恋人らしい行動をとる機会も増えている。

ヴァネッサの片想いだと思っていたのだが、いつの間にか両思い。

最近は彼の勢いに押されっぱなしである。

仕事をしている時はクールで淡々としているのに、普段はとても情熱的なようだ。


どうやらギルベルトは仕事とプライベートをきっちりとわけるタイプということだろう。

たまに『……疲れた』と、ヴァネッサに甘えてくれることも。

ヴァネッサを抱きしめながら癒しを求める彼が大型犬のようで可愛らしい。


そのまま寄りかかって寝てしまった時はどうしようかと思ったが、そんなところも心を許してもらっているようで嬉しかった。

ギルベルトは意外にも仕事以外はずぼらで寝ぼけている姿も見られるようになった。


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― 新着の感想 ―
そんな無責任な励まししてしまって良いのか? 同い年の幼女の発言みたいで戸惑ってしまいました。 まあ、今までの環境的に精神年齢は同じようなものか。
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