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④③


「その流行遅れのドレスを買い替えなくっちゃね! 今はこれで我慢して」


「えぇ……」


「ヴァネッサは明るい色のドレスが似合うわ。そうだわ、わたくしと似たデザインのドレスも買いましょう!」



どうやら今ヴァネッサが着ているドレスは新品ではあるが前妻であるクロエが買ったもので、四年前のもののため流行とはかけ離れているそうだ。

ヴァネッサの体が細すぎる影響で着れるものがこの屋敷にはほとんどないのだそう。

よく着ているワンピースもブカブカなことを思い出す。


(わたしには流行がわからないけれど、ここにあるドレスがすべて高級なことだけはわかるわ)


ヴァネッサは元々細すぎたため、最近は少しずつ体重が増えてきたとはいえ、まだ服のサイズがなかなか定まらずにいた。

最近では体重が安定してきたので、ドレスを買い揃えてもいいだろうとのことだった。



「ふふっ、お母様と一緒に買い物するって初めて。ずっとわたくしの夢だったの」


「……!」


「ヴァネッサ、準備が終わったら行きましょう!」



本当に嬉しそうなアンリエッタに手を引かれてヴァネッサは外に出る。

レイやセリーナも一緒に来るそうだ。

それから護衛も数人いて、ヴァネッサがティンナール伯爵家からずっと見ていたエディットたちが買い物に出かけて行く光景を見ているようだ。

それよりもずっと豪華な気がするが。


アンリエッタと外に出ると、ヴァネッサの前に信じられない光景が広がっていた。



「ギルベルト、様……?」


「……ヴァネッサ、急にすまない」


「い、いえ!」



豪華な馬車の前でギルベルトが正装して立っているではないか。

いつもはラフな格好にボサッとした髪、白衣を着ているギルベルトだが、今は大人の色気が漏れ出ているアンニュイなイケメンな男性である。


(す、すごい……! ギルベルト様、かっこよすぎて直視できない)


服装だけでここまで雰囲気が変わるのかと不思議だが、圧倒的なオーラに萎縮してしまう。

アンリエッタもオーラがあるが、ギルベルトはまた別格な気がした。


そんなギルベルトを見ながら固まっていたヴァネッサだが、彼はこちらに気づいたのか近づいてくる。

アンリエッタの頭を撫でたギルベルトは柔らかく微笑んだのを見て胸が高鳴る。


するとヴァネッサに伸ばされるギルベルトの手。

ヴァネッサがボーッとしていると、アンリエッタがヴァネッサにこっそりと「ほら、エスコートよ!」と教えてくれたことでハッとする。

ヴァネッサは緊張しつつギルベルトの手を取り馬車の中に乗り込んだ。


馬車の中でもいつもとは違って緊張していたヴァネッサだったが、アンリエッタがお喋りで話してくれているおかげで助かっていた。



「お父様とこうしてでかけるなんていつぶりかしら!」


「今日はちょうど時間ができたんだ。アンリエッタにもドレスをと言われたことを思い出してな」


「新しいドレスが必要だもの。それにお父様だってたまには息抜きが必要でしょう?」


「……そうかもな」


「それに今日はヴァネッサとお揃いのドレスを買うのよ!」


「ヴァネッサの意思を尊重しなければ……」


「あら、それくらいわかってるわよ!」



ギルベルトはいつもより饒舌だ。

アンリエッタも彼との会話を楽しんでいるように見える。


(ふふっ、アンリエッタが楽しそうでわたしも嬉しいわ。ギルベルト様にとっても息抜きになるでしょうし)


もしギルベルトと二人きりだったら、ヴァネッサは沈黙に耐えられなかっただろう。

それよりも緊張してしまい、また変なことを口走ってしまうだろうか。


ヴァネッサはふと窓の外に目を向ける。

目まぐるしく変わる景色を見て息を呑む。


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