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④①



「ふふっ、かわいい……ぷにぷに」


「……!」



ヴァネッサがアンリエッタの頬を触りながらニマニマしていると、なんだかいつもより大きくて固いことに気づく。


(あれ……? なんかおかしいような)


すると頬を触っていた手首を握られてベッドに寝かされるように押し倒されてしまう。

ヴァネッサは状況を把握しようと目の前にいる人物を見つめていると、白衣を着た端正な顔立ちの男性が目の前にいる。


(わたしはずっと病気で……ああ、レン先生が診察に来たのかしら)


前世の記憶が混ざってしまい、ヴァネッサは口を開いて名前を呼ぶ。



「レン、せんせ……?」


「……!」



今ではレン先生への気持ちが憧れで、ギルベルトへの気持ちが本当に好きということなのだとわかる。

恋愛は未経験なので自信はないが、これが好きな気持ちなのだとなんとなくではあるが理解できている。

ぼやけた輪郭、レン先生が消えてギルベルトの顔がハッキリと見えた。


(ギルベルト様が来てくれたのかしら。気持ちを伝えないと……違うわ、体調を崩してしまったことを謝らないと)


しかし次第に頭がボーっとしてクラクラしてくる。



「ごめん……なさい……すき、です」



ヴァネッサはそのまま意識が遠くのを感じた。

ひんやりと冷たい手のひらが額に触れたような気がした。



──どのくらいそうしていただろうか。


目を開くと外はすっかりと暗くなっていた。

まだ熱があるのだろうか。体が熱いような寒いような不思議な感覚だ。

アンリエッタはレイかセリーナが状況を伝えてくれただろうが、このままではギルベルトに何を言われてしまうかわからない。


(ああ、そうだ……わたしは熱を出してしまったんだわ! ギルベルト様に怒られるっ)


なんとか寝坊したことにして普段通りに振る舞おうと作戦を考える。

ヴァネッサが体を起こすと目の前に資料を読んでいるギルベルトの姿があった。

眼鏡をかけているギルベルトから赤い瞳が覗く。



「ギ、ギルベルト様……!?」


「…………」


「ねっ、ね、寝坊をしてしまって……! 申し訳ありませんっ」



具合が悪いことを隠さなければと思っていたが、苦しい言い訳だったろうか。

ヴァネッサが誤魔化せただろうかとチラリとギルベルトに視線を送るものの、彼は無表情でこちらを見つめている。


(ま、まさか……ギルベルト様、怒っている? やっぱり隠しきれなかったかしら)


不機嫌そうなギルベルトにヴァネッサはソワソワしつつも、誤魔化すようにヘラリと笑う。



「わたしはいつも通りですが、どうかしましたか?」


「……ヴァネッサ」



聞いたこともない低い声で名前を呼ばれたヴァネッサは大きく肩を揺らす。

どうやらギルベルトには熱が出ていることはバレているようだ。

ヴァネッサは肩を落として謝罪をするために口を開く。



「申し訳ありません……」


「体調は?」


「まだ少しボーッとしていますが大丈夫です」


「……そうか」



やはりギルベルトは怒っているのだろう。

以前の告白の件もあり、なんだか気まずいではないか。

ヴァネッサがどうリカバリーしようかと迷っていた時だった。



「ヴァネッサ、レンセンセとは誰だ……?」


「……レンセンセ?」


「熱に浮かされて呟いていた」


「わ、わたしがですか!?」



ヴァネッサは驚いて口元を押さえた。

それに『レンセンセ』とは『レン先生』のことではないだろうか。

熱で眠る時にアンリエッタが現れたり、レン先生が現れたりしたのだがその時に呟いたのかもしれない。

けれどレン先生を好きだと言った記憶がない。

ヴァネッサはその時のことを伝えるために口を開く。


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