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【完結】悲劇の継母が幸せになるまで  作者: やきいもほくほく
二章 過去に向き合って
33/70

③③

食事も量は少ないかもしれないが、三食しっかり食べてアンリエッタと一緒にクッキーを三枚も食べられている。

今にも折れてしまいそうなガリガリだった手首も、骨ばっていた四肢もふっくらっしてきた……ような気がする。


ギルベルトを見つめながら『お願いします』と念じていると、ギルベルトは再びため息を吐いて頷いた。

やはりギルベルトはとても優しいようだ。



「……ヴァネッサ。無理をしないと約束できるか?」


「もちろんです」


「なら、構わない」



ギルベルトの許可をもらえた喜びから、ヴァネッサはアンリエッタと手を合わせて喜んでいた。

こっからがスタートラインだ。

今から一ヵ月半でどこまでできるかはわからないが、できる限りのことはしたい。



「今から診察をする。アンリエッタは部屋に戻りなさい」


「わかりましたわ、お父様。ヴァネッサ、明日から頑張りましょう!」


「えぇ、もちろん! 全力で頑張るわ」



ヴァネッサが気合いを入れて拳を振り上げた時だった。



「…………ヴァネッサ」


「ほ、ほどほどに頑張ります……」



ギルベルトに睨まれたヴァネッサは急いで言い直す。

それから診察を行なっていく。

特に前回との変化もなく、ギルベルトに怒られることもない。

「強いて言うならもう少し食事量が増えたら……」と呟いているギルベルト。

診察を終えたヴァネッサはやはり彼の顔色が悪いことに気づく。


(ギルベルト様、やっぱり休んだ方がいいんじゃないかしら。でも今からやることがあると言っていたから忙しいでしょうけど……けれど今にも倒れてしまいそう)


診察の道具をカバンにしまっていたギルベルトは額を押さえて目を閉じる。

フラリと立ち上がり、椅子やテーブルにぶつかりながらも扉に手をかける。


(休んだ方がいいって、言ってもいいのかしら……)


ヴァネッサがギルベルトを引き止めようと手を伸ばした時だった。



「ヴァネッサ、アンリエッタが迷惑をかけてすまない」


「……え?」


「君はアンリエッタに巻き込まれたのだろう?」



ギルベルトは先ほどアンリエッタを庇ったことで、そう思ったのかもしれない。



「アンリエッタはわたしの背中を押してくれました。わたしも過去を話して恐怖や悲しみと少しだけ向き合うことができました」


「アンリエッタが? それに君は過去を……話せたのか?」


「はい、まだ怖いですが乗り越えたいと思っています」


「……!」



ヴァネッサは先ほどのアンリエッタのやりとりを思い出して笑みを浮かべた。

完全にトラウマを乗り越えられたわけではないけれど、確実に前に進めている気がした。

ギルベルトもヴァネッサの前向きな変化を見て驚いている。




「わたしが震えていたら、アンリエッタが守ってくれるって言ったんですよ。その時、とても嬉しかったんです」


「…………」


「最後までわたしの気持ちに寄り添ってくれました。あんなに小さいのに……。だからわたしもアンリエッタとギルベルト様のために動きたいと思ったのですっ!」


「……!」



ギルベルトはヴァネッサがアンリエッタとパーティーに行きたい理由をわかってくれるだろうか。



「わたしもギルベルト様とアンリエッタを守るために強くなりますからっ!」



気合い十分で拳を上げたヴァネッサを見て、ギルベルトを息を漏らすようにフッと笑った。



「はは、君に守ってもらうほど俺は弱くないよ」


「…………!」



ギルベルトの笑顔を見たヴァネッサはボンッと顔が赤くなってくる。

彼の長い前髪がサラリと流れて、切れ長の目が照れて戸惑うヴァネッサを映し出す。


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