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【完結】悲劇の継母が幸せになるまで  作者: やきいもほくほく
二章 過去に向き合って
27/70

②⑦

「いいえ、違うわ。ヴァネッサが来る前からなの。だんだんとお父様と話しづらくなってしまったの……なんでかわからないけど」


「……そうなのね」


「お父様に甘えたいけど、素直になれなくなって……」



ヴァネッサはアンリエッタの話を聞きながら納得していた。

確かこのくらいの時期に父に対して少しだけ反抗的になったことがあったことがあったかもしれない。

特に意味はなかったけれど、まるで愛されているかを確かめるように。

前世でも反抗して無理難題を父に言って困らせていた。

しょんぼりとしていた父には今になって申し訳なく思う。


(あの時、お父さんはかなり落ち込んでるってお母さんが言っていたっけ……ギルベルト様はお父さんのように素直なタイプじゃなさそうだし)


それは父親と娘ならではの問題なのかもしれない。

アンリエッタはギルベルトのことについて、ずっと思い悩んでいたのだろうか。

次々と彼女の不安が口からこぼれ落ちていく。

ヴァネッサはアンリエッタの話に相槌を打ちながら最後まで聞いていた。



「それに……お父様の噂のこと許せないの」


「……え?」



アンリエッタがギルベルトの噂を話してくれたが、エディットと侍女たちがヴァネッサに言っていたことが一致していた。

それは人体実験をして今までの妻を殺した。

兄を殺して公爵家を奪ったなどの心ない噂だった。

ヴァネッサは噂が流れるようになった詳しい経緯は知らないが、ギルベルトがそんなことをする人物ではないことだけはわかる。

ここにきたばかりの時にレイやセリーナに聞こうと思ったが結局、今まで聞いてはいない。



「ヴァネッサも最初は噂を聞いて、お父様のことが怖かったんでしょう?」


「…………!」



ヴァネッサはエディットにシュリーズ公爵についての悪い噂を吹き込まれていた。

それをすべて信じたヴァネッサは恐怖からあんな行動を取ったのだ。

アンリエッタはヴァネッサが自ら傘を喉元に突き立てる姿をどこかで見ていたのだろうか。



「お父様の噂は全部嘘だってヴァネッサに教えてあげたかったの。お父様を信用してほしいって……」


「……アンリエッタ」


「近づいてはいけないと言われていたけれど、どうしてもわかってほしかったのよ」



ヴァネッサはアンリエッタの気持ちを知って涙が出そうになった。

彼女はギルベルトのことを思い動いたのだろう。



「お父様は仕事の合間に困っている人たちを救っているの。前のお母様……クロエ様もわたくしのお母様もそうだったのよ」


「…………!」



アンリエッタによればギルベルトは人体実験などはしておらず、ただ人助けをしていただけ。

今までの妻たち、つまりアンリエッタの母親リリアンや二番目の妻クロエたちも、ヴァネッサのように病がきっかけで苦しめられていた令嬢を救っていたのだそうだ。



「わたくしのお母様もそうだったんだって聞いたわ。病気が原因で生家でひどいめにあっていたそうよ」


「…………え?」


「二番目のお義母様、クロエ様も同じだった。令嬢を救い出すにはそうするしかないのでしょう?」



アンリエッタの言葉にヴァネッサは衝撃を受けていた。

ギルベルトはヴァネッサをあの地獄から救い出すために結婚という方法を使ったのだ。


(ずっと気になってた……どうしてヴァネッサと結婚したんだろうって)


ティンナール伯爵家は資金難に陥ってお金を欲していた。

だからこそこの条件を飲んだに違いない。

公爵家ではあるが継子がいて悪い噂があるシュリーズ公爵家に、溺愛しているエディットを嫁がせるわけがない。

そのことがわかっていたからこそ、ギルベルトはそう動いてくれたのかもしれない。


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