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①④

「いいか? わかったな?」


「……は、はい!」



ギルベルトの低い声にヴァネッサは首を縦に振って何度も頷いた。

立ち上がったギルベルトは随分と高圧的にこちらを睨みつけているように見える。



「薬は絶対に飲むように。クリームもなるべくこまめに塗ってほしい」



彼は立ち上がると眉間を押さえながらフラフラと部屋の外へと行ってしまった。


(言っていることは正しいんでしょうけど、なんだか怖いわ……!)


この圧のある言い方では、ずっと虐げられていたヴァネッサもパニックになるか、萎縮して震え上がってしまうのではないだろうか。


(もしかしてわたしはギルベルト様に嫌われているのかしら……ご飯をしっかり食べないから苛立っているだけ? 全然わからないわ)


呆然としつつもギルベルトの態度について考えていると、セリーナがこちらの様子を窺いつつヴァネッサに声をかける。



「あの、ヴァネッサ様……僭越ながらよろしいでしょうか?」



真剣な表情のセリーナにヴァネッサは視線を流してから頷く。

何を言われてしまうのか、身構えていると……。



「旦那様のこと、誤解なさらないでください」


「……誤解?」


「昨晩からヴァネッサ様に何かあったらすぐに動けるようにと一睡もしていないのです」


「え……?」



ヴァネッサはその言葉に驚いていた。



「ヴァネッサ様が眠っている間に薬の調合や料理人たちへの指示、領地の仕事など……少々、気が立っているだけで決して怒っているとかではありませんから」


「…………」


「誤解されやすい方なのです。口下手でして、最近はアンリエッタお嬢様とも対立してしまっていて……」



彼が口下手で誤解されやすいと聞くと、また違って見えてくるではないだろうか。

だが、ギルベルトとは今まで関わったことがない。

そんなヴァネッサに彼がここまで身を削る理由がわからなかった。



「どうしてギルベルト様はそこまで動いてくれるのでしょうか?」


「私にはそういう方としか。それに以前の奥様たちも……。……っ、申し訳ありません」



セリーナは口元を押さえつつ言葉を止めてから深々と頭を下げた。

ヴァネッサはエレーヌから一番目と二番目の妻は既に亡くなっていると聞いた。

けれどギルベルトが今、ヴァネッサにやっていることや前の職業などを聞いてあることを考えていた。

それも憶測でしかないが人体実験なんてしていないことだけは確かだ。

強いて言うなら薬の調合をしていることくらいだろうか。

気になったヴァネッサはセリーナに問いかける。



「セリーナ、もしよければわたしに今までの奥様たちのことを話してくれないかしら?」



セリーナがヴァネッサの言葉に目を見張る。

以前の妻たちのことを聞けば、人体実験などとよくわからない噂が広まることもない。


(ギルベルト様に直接、聞いたら『今は自分のことだけ考えろ』と言われそうだもの)


それに今は機嫌が悪く高圧的なギルベルトに聞いて説明してもらうよりも、セリーナたちに説明してもらう方がいいと判断したのだ。



「……ヴァネッサ様、申し訳ありません。今はお話しすることはできかねます」


「どうして?」


「今は……ご自分のことだけ考えてください」



セリーナは複雑そうな表情でそう言った。

確かに今の状態のヴァネッサは人の心配をしている場合ではないかもしれない。

だが一晩、しっかり眠ったことで随分と気分が落ち着いたような気がした。


なので普通に話してしまっているが、昨日ヴァネッサは自分で命を断とうとしていた。

そんな不安定なヴァネッサに話せないと思うのは当然だろうか。


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