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①②



* * *



ヴァネッサが目を開けると、そこにはふわふわのホワイトゴールドの髪とクリッとした目が見えた。

ピンク色の瞳が宝石のように美しくて見惚れてしまう。

人形のように可愛らしい少女が目の前にいる。

キラキラと光る瞳がヴァネッサの眠たげな顔を映し出していた。



「…………天使?」



ヴァネッサがそう言うと、少女は驚いたように目を見開いている。

そのままボーッとしながら互いに見つめ合っていること数秒。

ヴァネッサが咳き込んでしまうと、少女は心配そうに眉を寄せていた。



「ねぇ、大丈夫?」



ヴァネッサの頬をピタリと這う小さな手。

火照った肌がひんやりと冷たくて気持ちいい。

ヴァネッサの肌が赤くなっているのを気にしてくれているのだろうか。



「大丈夫よ。ありがとう」


「……なら、いいわ」



小さな少女がツンとした表情で照れているのを見ていると、なんだか微笑ましい。

ヴァネッサは寝ぼけた状態で少女に問いかける。



「何をしているの?」


「あなたが……に、相応しいか見に来てあげたのよ」


「……相応しい?」



ところどころ聞こえなかったが、相応しいとはどういうことだろうか。

まだ状況を理解しきれていないヴァネッサは反射的に笑みを浮かべる。



「ふふっ、がんばるわね」


「……!」



すると少女は目を丸くしてこちらを見ている。

その後、椅子に座った少女のドレス姿を見てあることを悟る。


(天使が親しげに話しかけてくるわ。ここは天国かしら……。そうだわ、わたしは病気で亡くなったのよ)


記憶の混濁から、前世の記憶が前に押し出ていた。

日本に住んでいるため、こんな可愛らしい少女の知り合いがいない。

ヴァネッサには可愛らしい少女が天使に見えていた。

西洋人形のような花柄のドレス。ヘッドドレスも彼女によく似合っている。



「……ドレス、素敵ね」


「え……?」


「とっても可愛い……お姫様みたい」



ヴァネッサは前世の記憶を思い出していた。

いつもパジャマを着ていたのだが、可愛いパジャマにも限界がある。

こんな風にお姫様のようにおしゃれをすることに憧れていたのだ。

少女は褒められたことが嬉しかったのか、慌てたように髪に両手で触れている。



「あ、当たり前じゃない! わたくしを誰だと……っ」



ベッドから顔を出してこちらを見ている少女が誰なのか考えていると、ノックの音と共に誰かが部屋の中へ入ってくる。



「──アンリエッタ!」


「大変……お父様だわ!」



そう言った少女は焦ったように椅子を降りた。

可愛らしいドレスと真っ白なレースがサラリと揺れた。

どうやら部屋の中に入ってきたのは白衣に眼鏡をかけたギルベルトのようだ。

髪がぴょんと跳ねている部分があり、なんだか可愛らしいと呑気に考えていたのだが……。


(アンリエッタ……? アンリエッタって、どこかで聞いたことある名前だわ)


ヴァネッサの意識が次第にはっきりとしてくる。


(ギルベルト様がお父様ということはもしかして……あのアンリエッタ!?)


アンリエッタ、ギルベルトの一番目の妻との子どもである。

ヴァネッサは悲劇の継母として彼女の目の前で自害。

そのまま強烈なトラウマを植え付けてしまうのだ。

ヴァネッサが亡くなったことをきっかけにアンリエッタとギルベルトの親子の仲はどんどんと崩れていった。


天使のように可愛らしいアンリエッタが、将来悪役令嬢になるなんて信じられない気分だ。



「患者の部屋に勝手に入るなと何度言ったらわかるんだ」


「患者なんかじゃないわ。わたくしの……新しい、その……」



もじもじとしているアンリエッタはやはり天使のように可愛らしい。


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