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ノリと勢いに任せるとこうなる。

ほのぼの異世界珍道中


「我もう侵略辞めます!!!!!」

時の魔王の一言で、100余年も続いた人魔の戦争は終息した。

「やーぶっちゃけ限界じゃったんじゃよね。物量も無いし、軍人も減ってたし!ラッキーラッキー」

王のそんな一言に思わずずっこけた。

「はぁ!!?」

「聖剣に選ばれたとこ悪いんじゃけど、世界平和になったんで帰ると良いぞ」

「ちょちょちょちょちょっ」

あまりの事に王の裾を引っ掴んで引き止める少年。

腰の聖剣もまるで同調するようにガチャガチャと音を立てる。

「あっぶな何すんじゃい!!!」

「何すんだはこっちのセリフだわ!!!!さっきまで神妙な顔で魔王討伐の話してたろーが!!?」

「っつっても終わっちゃったしの〜」

「そうじゃねぇ!!!!え!!?聖剣に選ばれたっつうからめっちゃ送別会されちゃったよ!!?生きて帰るみたいなこと言って幼馴染に死亡フラグ立ててきちゃったよ!!!?」

「折れたじゃん、良かったの!!!」

「良かったちゃうわボケェ!!!!!!」

謁見の間に悲痛な叫び声といたたまれない空気が満ちていく。

その中心に立つやや語気の強い少年が王座に座る貫禄ある老人にさらに詰寄ったのをやや苦笑いで衛兵が見守る。

ぶっちゃけ今回は勇者君気の毒だし、0:10で王が悪いよ……という空気感を感知した王が大変不服そうに衛兵を呼び付ける。

「ちょっとーちょっと近衛〜!!?在任史上最大の不敬なんじゃけど!!?」

「じゃっかぁしゃぁ!!!!!!」

「あいたっ!!!!王を叩くとは何事じゃ!!!!ちょっ、おいよせっ、痛い痛い!!!!ちょっと〜!!!!!?」

近衛のうちから1人、しょうがないとでも言いたげに現れた近衛が哀れな勇者を引き剥がした。

「離せっっ!!!!こんのクソ王がァ!!!!!」

「はいはい、気持ちは分かるけど一応王様だからさぁ……堪忍してやってくれ……」

「一応って何!!?!?立派に王様やっとるんじゃけど!!!!??」

「お言葉ですが王よ、立派な王は戦争相手の言葉を鵜呑みにしませんよ。」

「ぐうの音くらいは出そう」

「出すな。」

「ぐう」

「今回も出ましたねぇ……」

「何風物詩なの????」

「前回は娼館通いが王妃様にバレた時以来ですかね。」

「ぐうの音で大丈夫だったのそれ?????」

「えぇ、華麗な腹パンでした。」

余談だがこの国の王妃は趣味でボクシングをしている。

「え、大丈夫なの?????」

「人生で初めて内臓破裂したわぃ……」

「1回もないのよ普通は」


閑話休題(それはさておき)


「で。俺はどうしたらいいのさ」

「帰れば良くね????」

場所は変わって来賓用の食堂で王と勇者が対峙する。

「帰れって……出てきたの2日前なんだけど」

「最近多いじゃん、帰れって言われて帰るやつ。」

「多いからって俺がその出来の悪い人材に該当する前提で話さないで????」

「思想強。今メラゾー○くらいあったぞ」

「今のは○ラでは無いメ○ゾーマだ。」

「何の話してんすか揃いも揃って」

つややかな頭を撫で擦りながら近衛が零した。

「おいハゲ、ちょっとお酌呼べ。ワシ喉乾いた」

「ハゲはやめてください王よ」

「じゃってハゲとるじゃん」

「思った事を言わなくなってからが大人って話あるよな。」

「ワシ今遠回しにディスられた????」

運ばれてきた食事を前に思わず勇者は喉を鳴らす。

豪華なカトラリーには各地で取れる名産品をふんだんに用いた食事が乗せられており、はために見たとて垂涎は必至である。

「食って良いぞ〜魔王討伐記念……否戦争終結祝いじゃて」

「集結したせいで俺は晴れて無職だけどね?」

「じゃあ食わんの???」

「食うよそれとこれとは別だし。」

一応王族との食事なので付け焼き刃にも近いテーブルマナーで食事を始める勇者を禿げた近衛が微笑ましげに見つめる。

「……なんだよ食べづらいよ」

「オジサンにもな、ボウズくらいの歳の息子がいてな……」

「そうなん???」

「あぁ、1週間前誕生日で、祝いに模造剣を送ったんだけどなぁ……」

「おぉ、良いじゃん。」

困ったような顔で溜息をひとつ。

「時代はSwitc○だって怒られちまったよ」

「ねぇ大丈夫??さっきからかなりギリギリだけど大丈夫なの神様!!?」

多分怒られることを覚悟しています。

そんな2人の掛け合いをよそ目に王はただ黙々と食事を続ける。

「ダメなんじゃん……」

戦争が集結し訪れた平和、さてこれからどうなっていくのでしょう。

神様は続かない事を祈ってます。




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