表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

03_荒唐無稽にも程がある


 3日目。


 この日は村内を回り、遺骸を集めて回ることに終始した。見つかった遺骸はおおよそのところ200体。


 はっきりしないのは、五体満足そろっている遺骸がひとつもないからだ。


 本来なら個々に埋葬すべきなのだろうが、この状態ではどうにもならないため、申し訳ないがひとまとめにして墓地に埋葬することにする。


 そうして4日目。どうにか埋葬が終わり、墓石代わりに大きな石、私よりも大きな石を置いた。


 ……本当に私は何者なんだろうな。なんで大人でも絶対にひとりでは持ち上げられないような大きな石を、私は平気で担げるんだ?


 このどうにも無視できない疑問を解消する方法が見つかった。


 村人の遺骸を集める過程で発見したのだが、埋葬を優先したために後回しとした。


 いや、先にこれを確認すると、村民を弔うどころではなくなるんじゃないかと危惧したからだ。


 その確認方法はというと、教会に安置されている宝玉だ。


 これはいわゆる、人物鑑定……といっていいのか? それを行うものだ。


 わかりやすくいうと、対象の人間の性能を数値化して確認するものだ。


 人間の性能などというと酷く乱暴な物言いだが、そうとしかいえないのだ。


 教会の宝玉と一緒に置いてあった冊子に記されている内容を理解するに、他に言いようがない。


 なにせ、こんな感じに表記されるのである。



+-------------------------------------+


 Name:xxxxxxxx

 Race:xxxx Class:xxxx

 Sex:x  Age:xx


 Str:xxx

 Vit:xxx

 Int:xxx

 Mnd:xxx

 Dex:xxx

 Agi:xxx


+-------------------------------------+



 うーむ。まさにRPGのキャラデータ、ステータス画面ではないか。とはいえかなりシンプルではあるが。


 表記されるものは個人名と種族、性別、年齢、そしてパラメータのみだ。そのパラメータが数値表記されるわけだから、ある種とんでもないものだと思う。


 そもそもなにを基準として数値化しているのだろう?


 気温であれば、水の凍る温度とかを基準にしているわけだが、人間の性能などさっぱりだぞ。


 疑問は尽きないがまぁいいだろう。


 とにかく、現状、私は自分の名前すらわからないのだ。せめてそれくらいは確認したい。ついでに歳も。


 なにせ分かっていることが、幼女であることと、おかしな腕力? 膂力? があることだけだ。


 明日、朝ごはんを食べたら確認をしに行こう。




 5日目。


 私は寝床としている鍛冶屋から教会へと向かった。


 ちなみに、鍛冶屋を寝床としたのは、そこが一番破損が少なかったからだ。正確に云うと、鍛冶屋の建屋の鍛冶場を寝床としている。鍛冶場は火事対策も含め、かなり頑丈に作られていたため、村を滅ぼしたと思われる害獣襲撃にも耐えられたようだ。


 なにせ、いま向かっている教会の大扉は、クマにでも殴られたのか、大きな爪痕を残した状態で屋内に倒れていたのだ。恐ろしいことに、分厚い木板を束ねていた鉄製の骨組みも切断されていた。


 いったいこの村はどんな生物に襲われたのだか。三毛別の熊害のクマよりも凶悪な獣に襲われたのではないだろうか。でなければ、鉄が引き裂かれるなんてことにはならないだろう。


 教会に到着した。


 破壊された扉が屋内側に無惨に倒れている。そしてその周囲には、破壊されまさに木っ端のごとくとなったテーブルやら椅子やらが散らばっている。


 恐らくはここに村人たちが立てこもったのだろう。実際、多くの骨がここで見つかった。


 一昨日、苦心してガレキとなったそれらを脇に退け、私が通れる程度に作った道を進む。


 ものの2メートルも進めば、そこから先は殆ど物のないフロアが広がっている。


 正面に据えられている神様の像の足元に、件の宝玉は置かれている。この礼拝堂の隅っこに転がっていたのを、私がそこに安置したのだ。とりあえず、無事であった座布団を敷いて。


 さて、それじゃ確認してみよう。


 これで私が何者か分かればいいんだが。


 宝玉の正面にぺたんと座り込み、その上に左手を載せる。


 宝玉のサイズは直径が20センチはありそうな大きなものだ。淡いピンク色をしている。ローズクォーツなのだろうか?


 そういえばこの装置……魔道具? いや、宗教が利用しているのだから祭具か? まぁ、どうでもいいが、これはどういった由来のものなのだろう?


 とてもじゃないが人の手で作り出せるとは思えないものだ。かといって、神様からの授かり物というわけでもないだろう。そもそもそうであるなら、こんな魔境のなかにあるような開拓村に置いてあるはずがない。


 ま、考えたところで分かるものでもないか。


 私は宝玉に魔力を流す。宝玉の使い方は簡単だ。いま私がやっているように魔力を流すだけ。これだけで魔力を流した者のステータスを見ることができる。


 宝玉を載せた左手の直ぐ上に、私のステータス画面が現われた。



+----------------------------------+


 Name:村娘A[幼女/イベントモブ]

 Race:人間 Class:村娘

 Sex:F  Age:8(固定)


 Str:---(必要なだけ)

 Vit:---(必要なだけ)

 Int:---(必要なだけ)

 Mnd:---(必要なだけ)

 Dex:---(必要なだけ)

 Agi:---(必要なだけ)


         ▼

+----------------------------------+



 なんだこれは!?


 え、私は人間ではないのか? いや、人間と表記はされているけれども、明らかにおかしいことになっている。イベントモブってなんだ!!


 それに年齢もおかしい。8歳固定ってどういうことだ? まさか私は不老とでもいうのか!? いや、年齢が固定されているということは、見た目だけでなく、完全に歳をとらない、とれないということだ。つまり、永遠の8歳にして不老不死ということなのか!?


 それに各パラメータの“必要なだけ”っていうのはなんなんだ!?


 普通に岩を持ち上げたり出来ているから、そういうことなんだろうなと思うけれども。そんな怪力なのに、特に注意もしていないのに扉やらなんやらを一切壊したりせずに普通に扱えていることからも、なんだか腑に落ちて納得してしまっているけれども!


 これ、納得しちゃだめだろう!!


 私はいったいなんなんだ!?


 ……。


 この“▼”はなんだろう?


 眉根を寄せたまま、私は右人差指でチョンとその▼に触れてみる。


 するとページが切り替わり、フレーバーテキストとのような説明文が現われた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ