邂逅
クロノベルトが吹き飛ばされてしばらくすると、何事もなかったかのように光は収まった。
この現象を引き起こした本人はというと、弾けた魔力の衝撃で軽く吹き飛ばされてしまい寝そべってしまっている。すぐに立ち上がらないところを見ると、どうやら体中にあるほとんどの魔力が放出されてしまった反動で身体に力が入らないようだ。気力を振り絞りなんとか立ち上がろうと試みるが、全身が極度の筋肉痛のような状態で上手く立ち上がることがままならない。それでも、なんとかして四つん這いの体勢にまで持っていくと、その恰好のままゆっくりとのそのそ動き始めた。
かなり無様な格好だが、そうも言っていられない。封印していたモノが安全だとは限らないからだ。いくら魔力がない状態だとしても臨戦態勢でいつでも対処出来るように備えておきたいところだろう。
ふらふらしながらもその状態で這うようにして棺のある場所へと向かう。ゆっくりと進みながらも辺りを見回すことも怠ることはない。大小さまざまだが、あちこちに何かしらの破片が散乱しているのが見て取れる。棺の方も見てみると、先程まであった蓋が無くなっているのが分かる。吹き飛ばされている時に砕け散る音が聞こえていたが、どうやらそれは棺の蓋が砕け散った音だったようだ。
「これは、なかなか酷いな……」
そんな酷い部屋の状態を眺めながらクロノベルトは思わず声が漏れ出る。これを後で片付けなくてはならないと思うと少し気が滅入ってしまうが、今はそんなことを考えている場合ではない。少しでも早く棺の置いてある場所まで辿り着くために、体に鞭を打ちながらも進み続ける。
ゆっくりと、しかしなるべく早く到着するように歩を進める。
彼が急いで辿り着きたいと思っているのは先程辺りを見回した時に棺から煙が出ているのを見たからだ。恐らく、中に籠っていた魔力が爆発して漏れ出ているのだろう。或いは、クロノベルトが流し込んだ魔力が中で爆発したからなのか――いや、両方の可能性も捨てきれないだろう。
現状では棺の中の状態がどうなっているのか分からないので、無理をしてでも早く辿り着かなくてはならないのだ。
そうこうして時間を掛けて棺まで辿り着く頃には、痙攣しながらだが立てるほどまでに回復することが出来ていた。万全な状態ではないが、情けない姿で対面するよりかは幾らかマシだろう。
棺の方もその頃には煙の方も収まっており、中から出ていた煙も大分霧散して中の様子を窺うことが出来るようになっていた。
「……大丈夫、なのかな?」
恐る恐る、中の様子を覗き込む。何が起きてもいいように警戒しながら煙が晴れるまでじっとしていると、中で封じられていた"モノ"の正体が現れるのだった――
「女、……の子?」