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雨のにおい

今回の章は登校時間がかなり変則的ですみません。それに加えて、文章も多分変な感じになっているかと思いますが、後で修正するのでお許しを……。

この調子で後2日分、大丈夫なのか…。

 暗い闇の中で、私はただ立ち尽くしている。いや、立っているのかも寝ているのかも分からない……。

 何で私はここにいるのだろう? 私は一体、誰なのだろう……?

 そんな疑問が頭に過っても思い出すことも、考えることも出来ない。何で……、何でなの……。誰か、教えてよ……。

 何も分からず、私は頭を抱えるだけだった。そんなよく分からない状況だった私に、突然脳内に映像が流れ込んでくる。そう、私にとってとても大切な記憶が――



「――ごめんね、×××。私の家で話をすればいいのに、×××くんったら何の用何だろう……」

 目の前の女性は私に謝ると、どこか嬉しそうに呟いた。私は、彼女にここから出ないで欲しいと声を掛けようとする。だけど、声は出ることがなく、ただ茫然と目の前の女性を見るだけだった。

「本当にごめんね。すぐに帰ってくるから。そしたら、久しぶりにゆっくり過ごしましょう」

 彼女は私に向けて小指だけを出した手を差し出す。私も彼女に見習って同じように手を差し出すと、お互いに指を絡ませて言葉を交わす。

「それじゃあ、行ってくるわね。大人しく……って、××××みたいな子じゃないんだから大丈夫ね」

 彼女は柔らかく優しい笑顔を私へと向ける。そして、頭を優しく撫でると、足早にこの家から出て行ってしまった。


 彼女が出て行ってから、私はしばらく本を読んだり流れていく風景を眺めながら彼女のことを待っていた。だけど、いつまで経っても彼女は帰ってくることはなかった。そうしている間に、雨が降り、雷もゴロゴロと鳴り響き始めていた。私は心配になって外へ出て彼女のことを探しに行こうとする。すると、ちょうど同じくらいにドアから何かを打ち付けるような大きな音が聞こえる。何の音なのかと恐る恐るドアを開けると、彼女がフラフラとした足取りで私に寄り掛かって来た。

 ここで映像が途切れてしまう。一体この映像は何を示しているのだろうか。いや、私はこの映像が何を示しているのかを知っている。だけど、そんなの、見たくない。知りたくなんて、ない……! 困惑している私のことなんか無視するように、再び映像が流れ始めた。

 再び流れ始めた映像では、血塗れの彼女が目の前に転がり込んでいた。私は……返り血を受けたのか、血塗れになってその場に立ち尽くしている。

 嘘、だ……。嘘だ嘘だ嘘だ! こんなの、信じられるわけない!! 何かの間違いだ……、こんなの……。彼女が、死ぬはずがない……。それも、私が――

 必死に目の前の現実を否定しようとするが、映像の私は何がおかしいのか高笑いをして立ち尽くすだけだった。ここで映像が途切れてしまうと、再び私だけが暗闇に取り残されてしまうことになった。





 暗闇に取り残された私は映像で見た光景を否定しようと必死に考える。だけど、考えても考えても、思い浮かぶのは血塗れになって横たわる彼女の光景だけでまともに考えることは出来ない。何でこんな光景ばかり思い浮かんでしまうのか……。そんなことを考えていた私の前に、1人の人物が現れていた。その人物は私が思い浮かんでいる映像を眺めながら愉快そうに笑いながら私に話し掛ける。


「ふふ……、ははは、あーっはっはっは! 壊れた……、壊れちゃった! 脆い、脆いなぁ……。もっと強いと思ったのにね」

 ……違う。私じゃ、ない……。

「違わないよぉ。あなたが壊したんだから。うぅん、わたしが壊しちゃったのかな? まぁ、いっか。そんなの。どっちでも変わらないもんね」

 違う、違う違う違う違う! そんなこと――

「何で否定するのかなぁ? 否定しても何も変わらないんだよ? 認めちゃおうよ。ヒルデはあなたが――」

 違うっ! そんなこと、私がするはずが、ない……。何で私が、大切な人を殺さないといけないのですか!

「何でってぇ、あなた言ってたじゃない。可能性を試したい、って。その可能性を試せる人が、ヒルデだった――それだけじゃない」

 だからって、殺す必要なんてない……。そこまでする強さなんて、私は求めていない……!

「そうだね、求めていないよね。だったらさ、本当は分かっているんじゃないの?」

 何を――

「ヒルデがわたしにとって――あなたにとって邪魔なんだっていうことを」

 ……っ、そんなはずが、ないでしょう! ヒルデは私にとって大切で――

「本当に?」

 え……。

「本当にそうなのかなぁ? 本当はこう思っていたんじゃないのかな。ヒルデは疎ましくて、目障りな存在なんだ、って」

 そんなこと、思うはずがない……。出鱈目を言わないでください! 記憶のヒルデは――

「その記憶って、本当に正しいモノなのかなぁ?」

 は……、何を、言っているんですか。ヒルデは、優しく、て……いつも私を、気に掛けて……いつも、私を、見て……。

「その記憶こそ、出鱈目なんだよ。あなたがヒルデのことをそう思いたいから、そうであってほしいと思っているから、間違えて覚えているんだよ」

 違、う……。私のヒルデを、汚さないで……。もうそれ以上、言わないで……。

「あなたの記憶のヒルデは、あなたが思い描いた都合の良い――幻だよ。現実逃避をするために生み出した存在なんだよ」

 そんなはず、ない! それじゃあまるで、ヒルデが悪い人みたいじゃないですか……!

「そうだよ。ヒドい人だったんだよ。あなたは都合良くでっち上げちゃってるけど、あなたにとっては悪い人だった。うぅん。世界にとっても、かな?」

 そんなことない! 彼は言っていた……、ヒルデはすごい人だって。ヒルデがいなかったら和平を結ぶことも、魔術師が生き永らえることだって出来なかったって……!

「そうなのかもしれないけど、それはあくまで表面上の話でしょ? 彼女がどういうことをしたのか、結局のところあなたはよく知らない。……うぅん、知ろうとしない。綺麗な部分しか見たくないもんね。分かるよ、わたしもそうだもん。だけどさ、それでヒルデのことを知った風に言うのはどうなんだろうね?」

 ……何が、言いたいんですか?

「別に、知らないなら知らないでいいんだよ。ただ、そんなんでよくすごい人だって言えるのかと思っただけ。記憶を忘れているあなたはヒルデに何をされたかも覚えていないのに……」

 どういうことですか。ヒルデが私に悪い事なんて、するはずがないじゃないですか……!

「それじゃあ聞くけど、何で魔術が使えないのかな? 体術も、短剣のことだって、あなたは知らなかった。何でかなぁ?」

 そ、それは……私がただ忘れているだけ――

「そんなはずないよ。あなたは馬鹿なんかじゃない。本を読んで知識を得ているもんね。だから、本当は気付いているんじゃないの? ヒルデは、意図的にあなたに魔術や体術を教えなかった、って……」

 それ、は……。で、でも、ただ単に忙しくて教えることが出来なかったかもしれないじゃないですか!

「うん、そうだね。そういう考え方も出来るよね。あなたの考えは正しいのかもしれない。でもさ、だったら何であなたは封印されちゃったのかなぁ?」

 それは、私が欠陥品だったから……。

「ふふ、欠陥品だからといって封印するなんて、それこそヒドく悪い人じゃない。それとも、認めてくれたのかな?」

 ち、違う! そんなことない! 欠陥品だった私が悪いんです……、ヒルデは悪くない!!

「ふーん、まだ否定するんだ。だったら、もう話すしかないか。あなたの秘密を――」

 私の、秘密……? 一体、何を言って――

「あなたにはとても強い力が宿っている。あなたと戦った悪魔もそれらしいことを言っていたじゃない。ヒルデはそれを恐れてあなたを封印した。その力を使えないように記憶と一緒に、ね……。その後に彼女は死んでしまった。これがあなたの本当の記憶なんだよ」

 …………。

「わたしは、あなたを助けたいんだよ。認めちゃって楽になろ? そしたら、もう苦しまなくてもいい……わたし達は自由になれるんだから!」

 認めたからといって、楽になれるわけでも、自由になれるわけでもないじゃないですか……。そもそも、貴方は一体誰なんですか。何で、私を苦しめるようなことをするのですか……。

「わたし? わたしは――あなただよ。ねぇ、×××」

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