表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/70

昏睡

今日中には出来たけど、時間が大きくずれてしまって申し訳ないです。昨日も言えることですが…。

多分ですけど、今回は後3小節分くらいで終わると思います。


改めて思いますけど、言葉って難しいですよね。言い方によっては高圧的にみえたり、偉そうにみえたり…そんなつもりじゃなくても、受け取り手によってその意味が大きく変わってくる。それに加えて、言わなくても通じるだろうっていう、曰く察してっていうのも場合によっては相手を傷付けたり自分を傷付けたりする。

今日の話はそういう話になります。

私自身、察してっていうのはない代わりに、結構ずけずけと言うタイプなので知らず知らずのうちに傷付けてると思います。一応、言葉には気を付けてますけど、もう少し抑えて発言しないと、って思ってます。

 エンテを連れて屋敷へと戻ったクロノは、アルスを呼んで濡れている服をどうにかするためにエンテのことを一先ず任せる。残ったクロノは1人でその場に座り込むと、エンテの言動や気を失ったことについて整理しようと頭を働かせる。しかし、気を失ってしまったエンテのことが気掛かりになってしまってまともに頭が働くことはなかった。そこへ、戻って来たアルスがずぶ濡れになっているクロノを気遣うように声を掛ける。声を掛けられてもしばらくクロノは動くことはなかった。クロノの様子を見たアルスは只事ではないことに気付くと、何も言うことなくタオルを持ってきて濡れてしまっているクロノを静かに拭いていく。アルスに拭かれていることに気付いたクロノは彼女の持ってきたタオルを受け取ると、お礼を言ってフラフラと自分の部屋へと戻ろうとする。部屋へと戻ったクロノは次の日になったらエンテは目覚めて話を聞くことが出来るだろうと考え、自分も目を閉じて寝ようとした。だが、エンテのことが気になってしまい、碌に眠ることは出来なかった。

 そして、次の日に目覚めると思われたエンテは目を覚ますことなく、その次の日も眠り続けたままになっていた。エンテのことが心配なクロノはここ数日あまり寝ることなく、彼女の部屋へと来て様子を確かめている。何も事情を聞いていないアルスもこの間2人を見守るだけだったが、流石に痺れを切らしたのか、クロノに説明を求めるためにエンテの部屋へと来ていた。



「エンテ様が意識を失い、眠りについてから彼此3日になります。……そろそろ何があったのか、話を聞いても宜しいでしょうか?」

 アルスに問い掛けられたクロノはエンテの手を握ったまま考えるように俯いている。その様子から、まだ時間が必要だと思ったアルスはその場から立ち去ろうとするが、クロノはガラガラな声で彼女の問い掛けに返答する。

「……雨」

「雨……? 雨に打たれたショックで気を失ったということですか?」

「いえ、雨や雷に強く反応していた……ように見えたんです。おそらくそれが関係があるんだと思います」

「雨……それも、雷雨が原因で気を失ってしまった、と……。確かにあの日は雨が強く雷も鳴っていましたが、そんなことで気を失ってしまうものなのですか?」

 クロノの答えにアルスは怪訝そうに頷きながら詳しく聞こうとする。クロノもあの時の出来事を思い出しつつ、自分の考えを織り交ぜてアルスに説明をする。

「それもあるんですが、何て言ったらいいんだろう……。あの子の――エンテの記憶が戻ったかのような……いや、でもそれはないか。そんなこと、ありえるはずがない……」

 自分で予想を立てたことを根底から否定するようにクロノは答えるとそのまま俯いてしまった。事情が分からないアルスはそれでも2人に何が起きたのかを確かめるため、クロノに何があったのかを聞こうと試みる。

「ありえない話だとしても、それが原因の一端なのかもしれないのですよね? でしたら、それを教えて頂けませんか? そうはいっても、私は部外者になるので話したくないというのなら無理に聞きませんが……」

「いえ、そんなことは……! アルスさんは、部外者なんかじゃないですよ。でも、ありえない話だし、あの子の記憶違いだと思うんです……」

「それでも、その可能性があるのなら、1度話されてみてはどうですか? いつものクロノベルト様なら、迷いなくそれを実行するはずです。それに、それが勘違いなのだとしても、それでも話さないよりは話す方が良いのではないか、と私は考えます」

「……そう、ですね。アルスさんの言う通りです。ただ、僕もまだ頭の整理が出来ていないので荒唐無稽でよく分からない話になるかと思います。……それでもいいですか?」

「はい、問題ありません。私としては、知らないよりは知ることが出来る方が非常に助かります」

「ありがとうございます、アルスさん。それでは、順々に話していきます。あの時の出来事を――」


 クロノはあの時あった出来事を思い出しながら、最初からアルスにそのことを話していく。

 先程説明した通り、雷雨から様子がおかしくなったこと。そして、それに合わせるようにしてエンテの記憶の一部らしいことを言い始めたこと。そのエンテが言っていた言葉では、自身がヒルデを殺したことによって封じられた、ということを説明していく。エンテの怯えようや恐れようから信憑性はありそうに見えるが、クロノはそれを否定するようにアルスに伝える。

「――ということがあったんです」

「そう、ですか。そんなことが……」

 クロノの話を聞いていたアルスは戸惑い困惑しながらも、静かに彼の話を最後まで聞いた。アルスなりに聞いた話を整理するため、手を口元に近づけると目を細めて考え始める。考えているアルスを見ながら、クロノは自身が思っていることを彼女に伝え告げる。

「僕は、あの子が言っていたことは記憶違いなんだと思っています。エンテが、そんなことをするなんて……、考えられない。せめて、あの子が目を覚ませばその真相が分かると思うんですが……」

「……あれから眠りにつかれたままですね」

「こういう時、どうしたらいいんだろう……。アルスさんはどうすればいいと思いますか?」

「どうするか……。そうですね――クロノベルト様がエンテ様と接吻する、というのはどうでしょうか?」

「……え? 接吻って、キスをするっていうことですよね? アルスさん、それは一体どういう……」

 アルスの突拍子もない発言にクロノは困惑して彼女の真意がどういったものなのかを聞き返してしまう。戸惑っているクロノとは裏腹に、アルスは至極当然といったように自身の意見を申し立てる。

「童話でも言われていますが、眠ってしまった姫君は王子の接吻で目を覚ましています。そういった話を鑑みて、エンテ様もクロノベルト様の接吻で目を覚ますのではないか、と思ったのです」

「アルスさんの言いたいことは分かりました。でも、そういうのは話の中の出来事で上手くいっただけですよ。それに、流石に眠っていて無防備なこの子に勝手にキスをするのはどうかと……」

 アルスなりに場を和ませようとした冗談なのだと思ったクロノは彼女に提案を却下しようとする。しかし、アルスは真面目な表情で真剣に話を続ける。

「何も問題なんてありませんよ。もし何かあれば、私の方でフォローさせてもらいますので、クロノベルト様は何も気にせずに接吻をなさって下さい」

「いや、アルスさん。流石にマズいですよ……。倫理的にそれを超えてしまうのはいけないと思います」

「……なるほど。倫理的に良くないと言うのなら、貴方様だけの心に仕舞っておいて下さい。その間、私は後ろを向いていますので、遠慮せずに手早く接吻を済ませて下さい」

「そういう問題じゃなくて……! 話を聞いてください、アルスさん!」

 アルスに詰め寄ろうと急に立ち上がったクロノは足に力が入らないのか、その場でフラついてしまう。この3日間、碌に寝ることもなくエンテの様子を見ていたのだから体に無理が来ても無理花だろう。フラついてしまったクロノを急いで支えると、アルスは自分の失態を恥じるようにクロノに謝罪する。

「……申し訳ございません。失言でした。今までのことは忘れて下さると助かります」

「いえ、アルスさんなりに考えてくれた、というのは分かるので大丈夫ですよ。でも、アルスさんもそんな風に取り乱してしまう事もあるんですね」

「そんなことは……、いえ、そうですね。確かに、少し冷静に欠けていました。大変な時だというのに、本当に申し訳ございません」

 自身の失態を責めるようにアルスはクロノに謝りながら反省する。そんなアルスを見たクロノはこれ以上話を続けていたら自身を責め続けてしまうと思い、再びその場へと座り込む。座り込んだクロノを心配するようにアルスは声を掛ける。

「ここ数日あまり休まれていないように見えます。エンテ様は私に任せて、クロノベルト様はお休みになられてはどうですか?」

「……そういうわけにはいかないですよ。アルスさんにも仕事がある。それに、こうなってしまったのは僕の責任でもあると思うので……」

「? 雷雨が原因なので、クロノベルト様は何も悪くないのではないですか?」

「いえ、本来なら雨が降り出す前に屋敷に入ることが出来たはずなんです。エンテと口論になってしまって、そのせいで雨が降り出すまで彼女を外に出すことになってしまった」

「……そうだったのですか」

 アルスの返事を最後に、2人の間に思い沈黙が流れてしまう。


 しばらく沈黙が流れた後、アルスはクロノの考えが変わらないということを察すると改めてこの場を去ろうとする。しかし、クロノはアルスを引き留めるかのように自分がエンテに言われたことを口走る。

「エンテに、言われたんですよ。"貴方は自分しか見ていない"、"自分が大切なんだ"と……」

「…………」

「正直に言って、図星を突かれたようで何もあの子に反論することが出来なかった……」

「……何故、そのような話になったのですか?」

「……、鍛錬をする上で危険なことをさせたくないといった話から、危険な任務には連れて行くつもりはない、という話になって……。そこからエンテが心配だからそういうことをする、と言ったらエンテに自分しか見ていない、って言われたんですよ」

「……そうだったのですか。クロノベルト様はエンテ様を想った行動だったけれど、エンテ様にとっては余計な心配だった、というわけですね」

「そう、ですね……。あの子には――エンテには母さんのようになって欲しくない。だから、過剰だとしても安全な場所にいてもらおうとした」

「…………」

 クロノの言葉にアルスは呆れるでもなく、馬鹿にするでもなく静かに息を吞んで聞く。再び沈黙が流れるかと思われたが、アルスが沈黙を破るようにクロノに言葉を掛ける。

「確かに、クロノベルト様の行動は過剰なものだと思います。そんなことをされれば、誰だって反発もするものです。ですが、エンテ様を大切に想っているのは事実なのですよね? でしたら、もう少しエンテ様を信じて、やりたいようにやらせてみてはどうですか?」

「でも、それでもしエンテが死ぬようなことがあれば――」

「それなら、そうならないようにクロノベルト様が強くなって、彼女を見守れば宜しいではないですか?」

「…………」

「シルヴィア様のことは非常に悲しい出来事でした……。あのようなことにならないように、クロノベルト様は強くなろうとなられたのですよね? でしたら、そのままもっと強くなられたら、その不安は消えてしまうと考えられます」

 アルスはクロノの言動を否定することなく、彼の間違っていた行動を正すため優しく諭す。アルスも、クロノの事情が知っているからか、あまり強く言えないのだろう。しかし、そうだとしても間違っていることは間違っているとクロノに伝えなければいけない。彼にはもう、そのように叱って諭すような親はいないのだから――

 アルスに言われたことに、クロノは弱々しく力なく頷く。

「そう、なのかもしれないですね。大切だからといって、閉じ込めていたら窮屈で息が出来なくなる……。僕がもっと強くならないと……。ありがとうございます、アルスさん。少しすっきりしました」

「こんなことで宜しければ、いつでも話してください。私は貴方様の従者ですので――それでは、仕事に戻るので失礼します。クロノベルト様も程よく休んで下さいね」

 アルスは一言断りを入れると、エンテの部屋を後にした。

 残されたクロノはしばらくエンテの側で見守っていたが、アルスに休むように言われていたことを思い出すとエンテの部屋を後にして自分の部屋で休息を取るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ