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成長

今日の話は一応分かりやすいように区切って2つ分の話を展開していることになっています。言わなくても分かってくれるかと思いますが、一応説明をしておきます。

まぁ、これから”◇”の仕切りがある場合はエンテの心象を表しているのだと思ってください。これからもこういった投稿になったりもすると思うので先にそのことを言っておきますね。


1つ大変なことを言うと、この話以降まだ書けてないことですね。まぁ、私が何とかしてるでしょう。多分…(笑)

 険悪なまま組み手が再開されることになったが、すぐにその雰囲気は吹き飛んでしまうことになってしまう。その理由は、先程まで構えが甘かったエンテの構えが変わり、クロノのそれに近い形になったからだ。クロノが教えているのだからそれはおかしいことではないと思うだろう。確かに、おかしいことではないのだが、それにしては急に変わったら誰だって驚くのも無理はない。

 しかし、変化はそれに留まることはなかった。エンテは目を瞑ると、さっきよりも集中するように深く息を吐く。そして、準備が整ったのか、目を開けクロノを見据えると再びクロノに向かって走り出した。先程のような速度ではなく、更に速くなった速度でクロノの目前まで行ったかと思えば、そのまま軽く跳んで1回転する。そして、その勢いのままかかと落としを繰り出した。

 だが、速くなったといっても、まだクロノの目で捉えることの出来る速度だったのでまたしてもエンテの攻撃は避けられてしまうことになった。しかし、エンテはそのことも織り込み済みのようにその場にしゃがみ込んで体を縮こめると、自身の体をバネのようにしてクロノに拳を繰り出す。

「ふっ……!」

「……っ!」

 その甲斐あって、エンテの拳はクロノの服を掠めることに成功する。今まで掠めることすら出来なかったことを考えると、かなり進歩したといえるだろう。だが、エンテの攻撃はそれで終わることはなかった。少しずつ、少しずつ速度を上げながらクロノに拳を繰り広げていく。そのことにクロノは少し動揺しながらエンテの攻撃を順々に躱し、捌いていく。

「(さっきと大分動きが変わった……!? これが彼の言っていたエンテの可能性っていうやつなのかっ!?)」

 戸惑い焦るクロノとは裏腹に、エンテは冷静に彼を攻めていく。そして、エンテの攻撃はついにクロノの脇腹へと――

「(っ、しまった……! 魔力を込めて防がないとマズい――!!)」

 エンテの攻撃を受けてしまったらただでは済まないと思ったクロノは、彼女が攻撃しようとしている箇所に魔力を集めて防ごうとする。エンテの攻撃はそのままクロノの脇腹へと向かうかと思われたが、突如としてエンテは攻撃を止めて間合いを取るため後ろへと数歩下がる。

「(どういうことだ……? 攻撃のチャンスだったというのに、攻撃を止めて距離を取るなんて……。まるで攻撃を防がれて反撃されるのが分かっているかのような動きだ)」

「…………」

 そんな不思議なことをした当の本人は、自分のしたことを特に驚いたりすることなく再びクロノに攻撃を仕掛ける。しかし、落ち着きを取り戻したクロノにかかれば、まだ未熟なエンテの攻撃など避けることは造作はない。いつもなら、ここでエンテはムキになって攻撃を続けている所なのだが、今回はそういうこともなく再び攻撃を止めて距離を取った。そして、地面に向けて手を伸ばし目を閉じると、信じられないことを口遊み始める。


「……地を侮りし愚者よ――」

「(っ! その文言は僕の魔術……!? いつの間に使えるように――)」

 思い掛けないエンテの行動にクロノは咄嗟に身構えてしまう。クロノが身構えたのを確認したエンテは微かに笑う。そう、これはエンテがクロノに向けた罠そのものだからだ。そもそもが、エンテはまだ魔術を使うことが出来ない。そのことはクロノが一番分かっているはずなのだが、今までと違う動きを見せたエンテに気が動転したのかもしれない。それに、もしかしたら使えるようになったのではないか、と変に予想を立ててしまったのもある。

 大体が組み手であるはずなのに魔術を使うなど、言語道断といってもいいだろう。エンテは疎か、クロノすら、そのことが頭から抜けているくらいには今の組み手が繰り広げられているのだろう。

 これを好機と捉えたエンテはクロノ目掛けて充分に助走をつける。そして、クロノの目前まで迫ると彼を跳び越すように大きく跳躍した。クロノの背後を取ったエンテは着地した足を回転させて直様彼の方へと向き直ると、隙だらけな背中へと攻撃を仕掛ける。今度こそエンテの攻撃がクロノに入るかと思われたが、再び攻撃を止めて彼を突き飛ばすと自身も後ろへと飛び退いた。

「――っと、とと! 危なかった……」

 突き飛ばされたクロノは転ぶことなく、前転をして体勢を整える。お互いに充分距離が取れていることを確認したクロノは身構えることなく、落ち着くために深く息を吐く。そして、落ち着きを取り戻したクロノは不思議なことをしたエンテに今までの行動の意図を問い掛ける。

「……エンテに少し、聞きたいことがある。2回も攻撃のチャンスがあったのに、何で攻撃を止めて間合いを取ったりしたのかな? いつものきみだったら攻撃していただろう」

「……確かに、前はそうでしたね。あの獣と戦っていていろいろと気付くことがあったんです。ただ攻撃しているだけじゃ駄目だ、って――」

「そうか。彼と戦ってそこまで成長しているとは思わなかったよ。だけど、それだけで攻撃を止めるまでにはならないだろう? 僕が防ぐことを()()()()()()()()()かのような行動だった。その理由が知りたいんだ」

 クロノに問い掛けられたエンテは考えるように俯いてしまう。考えても本人もよく分かっていないのか、たどたどしく自分が何故そんな行動をしたのかを語り出した。





 彼と組み手をやり出したのは良かったが、依然として本気でやってくれることはなかった。確かに、あの悪魔との戦いで魔力切れ(気絶)をしてしまったが、それでもそれなりに戦い抜くことが出来たのだから少しは認めてくれると思ったのに、結局は認められることはなく手を抜いて対処されてしまう。彼のお陰でヒルデの日記を持ち帰ることが出来たから少しは見直せるかと思ったが、やはりそんなことはない。所詮、人間なんてこんなものなのかもしれない。見直し、期待しようとした私が馬鹿だったのだろう。

 だが、それならそれで私にも考えがある。本気を出さないのなら、本気を出させればいい。そうすれば、私が試したいと思っていることも出来るはずだ。私は強くならなければいけないんだ。あの悪魔に私の体術が通じなかったことでその思いは更に強くなってしまった。

 私は弱い。弱いモノはただ踏み潰されるだけだ。そうならない為にも、私は強くならなくてはならない。目の前の男を踏み台にしてでも――



 あの時――悪魔と戦っていた時の事を思い出しながら体に魔力を込めていく。さっきの組み手でやった速度で駄目ならもっと足に魔力を集中させろ。そして、腕にも同じように集中させて留まらせるんだ。私は出来る……。私なら、やれる――

 そして、準備が整った私は再び彼に向って走り出した。今の状態はさっきよりも良くなっているとはいえ、それでもまだ私の攻撃は避けられてしまうということは分かる。そう、今の私だと普通にしていてはとても通用することはないだろう。それはこの数日間、イメージしていたので簡単に考え付くことが出来た。それなら、今までと違う行動をしたら戸惑わせることが出来るのではないのだろうか。そうすれば、流石に彼も本気を出さざるを得なくなってしまうはずだ。私が試したいと思っていることは、ある程度本気に近い状態でないと出来ないと思うので彼には本気になってもらわなくては困る。

 速度を活かしながら自身の体も使って攻撃を仕掛けていく。その甲斐あって、ようやく服に攻撃を掠らせることが出来た。この調子で攻撃を続けていけば、隙が作られて私が試したいことが実行出来る。そうして攻撃を続けていると、遂に念願のチャンスが訪れた。このチャンスを活かすために私は力を込めて拳を前へと突き出――

「――っ!」

 そのまま拳を突き出そうとしたが、既の所で動きを止める。あのまま攻撃を続けていたら私の拳は受け止められて反撃されていたに違いない。まだ確実とは言えないが、少し分かったような気がする。この調子で攻めてまた隙を作り出すことが出来たら、そこを攻めた時に防ごうと()()()()()()はずだ。それを確認出来れば、私の考えが正しいのだと証明される。


 しかし、彼も馬鹿ではない。さっきので私の攻撃は警戒されてしまい、当てることが難しくなってしまった。それに、どうやら落ち着きも取り戻しているようだ。こうなってしまってはもう攻撃を当てることが出来なくなってしまう。せめてあと1度だけでもさっきの状況を作り出すことが出来たら――

 何か打つ手がないのかと、焦りそうになった私はふと、悪魔との戦いのことを思い出した。追い込まれて切羽詰まった状況になった私は、あの獣の目を塞ぐために目に泥をかけた。あの時は全く意味がなかったが、あれに似た状況を作り出すことが出来たら現状を打開することが出来るんじゃないだろうか。要は、さっきよりも何か意表を突けるようなことをしたら、彼を動揺させて隙を作り出すことが出来るのかもしれない。問題はどうやって動揺させるかだ……。彼の性格上、そこまで動揺するようには見えない。悪魔と戦う前(あの時)は確かに動揺していたが、それはあんな化け物が相手なのだから無理もないといえるだろう。

 ……そうか。その手があったんだ。ここ数日間は私の魔力を戻すためにしばらく魔力を使うようなことは控えさせられていた。その私が、彼に隠れて魔術の練習をして()()使()()()()()()()()()()()()()()()()が出来たら、流石に驚くだろうし少しは戸惑ったりするはずだ。私の術はまだないから呪文がないので、彼の術の呪文で代用させてもらおう。宛も術を使えるかのように見せるには、目を閉じて集中しているように見せかける……。確か、彼の術の呪文はこうだったはずだ。

「……地を侮りし愚者よ――」

 薄目で彼がどういう反応をするのか様子を伺う。すると、私の想定していた通りに彼は驚いて守るために身構えてしまった。それを確認した私は彼に向って走ると、目前でジャンプして後ろへと回り込むことに成功する。そのまま着地した足を回すように(ひるがえ)すと、()()()()()()()隙がある彼の背中目掛けて再び拳を突き出そうする。しかし、隙があると思われた箇所は見る見る内に魔力で覆われて分厚い層のようになってしまった。そうなったのを確認した私は攻撃を止めて、彼を軽く突き飛ばして距離を取ることにした。


 ……やっぱりそうだった。防ごうとする時、その場所が他よりも()()()()()()()()()()()()。最初は気のせいか見間違いだと思っていたけど、目を凝らして視た今ならその考えが正しいのだと言い切ることが出来る。何でそんなことが視えるのかは分からない。だけど、これで少しは戦う時に有利に働くことが出来るのかもしれない。体術も、これから学ぶであろう魔術も、きちんと修めていけば私はもっと強くなれる。それこそ、目の前にいる彼やあの獣にも――それだけじゃなくて、ヒルデよりも強くなることだって出来るのかもしれない。

「…………」

 何でこんなことを考えてしまうのだろうか……?

 前にもこれに似たようなことを考えたことがあった。何故か焦るように、何かに恐れるかのように、誰よりも強く、負けないように願ったことがある。あの悪魔と戦っていた時にも感じたことだったが、何故か戦うことを楽しいと思ってしまった。そのことと何か関係があるのだろうか。それとも、やっぱり私はどこか壊れているのだろうか……。

 もやもやと考え込んでいた私に彼が声を掛けてきた。どうやら私の行動を不思議に思ってその意図がどういったものなのかを知りたいというものらしい。私自身もよくは分からないが、彼なら何かを知っているのかもしれない。そう思った私はつっかえながら私のやったことを彼に説明することにした。

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