険悪な2人
待たせてしまってすみません。
仕事を辞めた反動ですごく開放的になってサボ……サボってました。何も言い繕えないです、はい…。
まぁ、とはいえ、作業をやるためにやることをやっていたのと、資格試験があったので少しはお許しを…。結果は多分、今週か来週くらいじゃないですかね。他人事みたくかなり興味なさそうに言ってるのは受かってるのが分かってるからなのかもです。自信があるのはそうですけど、どちらかというと直感でそうなのかなって。それで落ちてたら流石に笑いますけど(笑)
興味がないであろう話はこれくらいにして
とりあえず、落ち着いてきたので再開していきますね。
前にも言ったように、今回までの話が本に収録する内容になります。ちょうどキリが良くて打ち切りエンドでも大丈夫なんじゃないかな、って塩梅だと思ってます。…ややこしく書いてますけど、まだ終わりませんからね?(笑)
この話を読めば私が言いたいことが分かると思うので楽しんで読んでもらえれば、と思ってます。
マルコシアスとの戦いを経て、ヒルデの日記を手に入れたクロノ達はエンテの回復を待ってもう1度ヒルデ邸へと赴こうとした。エンテの回復を待った理由は、何かあった時に慎重を期する為のものだった。もうあの場所にはマルコシアスのような脅威はないのかもしれないが、もしものことがあってはいけないので彼女が全快するのを待ったというわけだ。そして、回復したエンテを連れていざヒルデ邸へと向かったのは良かったのだが、その肝心のヒルデ邸は疎か、結界すら見つけることが出来なかった。消えてしまったということで2日ほど探しはしたのだが、あの日の出来事自体が幻だったのかと思うくらいに何の痕跡も見つけることが出来ずに屋敷へと戻って来た、ということになる。
そもそも、何故ヒルデ邸へと向かおうと思ったのかというと、エンテの記憶の手掛かりが他にもないのかを探ることと、ヒルデから手渡された日記の内容がよく分からないものだったからだ。そのよく分からない日記の謎を解く為にも行ったのもある。結果としては、何も手に入れることが出来ない処か、ヒルデ邸への道すらも閉ざされてしまうという最悪な事態になってしまう――ここまでが彼等がこの1週間ほどに行っていた行動になる。
そのことで気落ちしてしまっている2人はいつもの鍛錬場へと来て対面している。まるで2人の心象を映し出すかのように空には雲が覆っていて、雨が今か今かと降り出してもおかしくないような天気模様だ。2人が何故日記の謎を解くことをせずに鍛錬場に来ているかというと、それはエンテのたっての願いを叶えるためにそちらを優先させることにしたからである。
「はぁ……。もう1度行けると思ったんだけど、まさか結界すら見つけられなかったのは想定外だったよ。あの後少しでも探索していれば何かを見つけることが出来たかもしれないのに――本当にごめん……」
クロノは悔やみながら浅慮だったことをエンテに謝り告げる。そのことに対してエンテは特に気に留めることなくクロノへと言葉を返す。
「……別に、そこまで気負わなくてもいいですよ。貴方もいっぱいいっぱいだったみたいですし、あの時に帰ったのは正しい選択だったのだと思います。それに、気を失っていた私が貴方に文句などを言う資格なんてありませんしね」
「そう言ってもらえると助かるけど、アインさんの協力者の存在を考えればこうなることも考慮に入れるべきだった。だから、これは僕の甘さが招いた事になる」
「……はぁ。別に、彼女の家がなくなった訳じゃないんでしょう? だったら、いいじゃないですか。今更あれこれ言ったってしょうがないです。……こんなふざけたことをした人物には何かしらの報いを受けてもらいますが――」
クロノを気遣うような言葉を言いながらエンテは物騒なことを呟く。そんなエンテを宥めつつ、その人物を敬うようにクロノは注意する。
「一応、きみの兄弟になる人なんだから少しは敬意を持ってあげてほしい。それに、隠したのには何か事情があったのかもしれないし……」
「そんなことは私の知る所ではないです。そもそも、私の兄か姉なんだったら、顔くらい見せたらどうなんですか。覚えている記憶ではそんな人物の記憶がないので顔を見ても分からないと思いますが……」
エンテの言葉にクロノは確かに、と納得してしまう。それはエンテがその人物の顔を覚えていないということではなく、彼女に姿を現し顔を見せることをしないことを言っている。今までの行動から考えて、少なくともこちらの事情や状況が分かっているはずだ。それなのに姿を現して事情を説明しないのはおかしいのではないだろうか。その人物なら、エンテの記憶も知っているはずだから協力を得ることが出来たら一番手っ取り早いのだが……。
それとも、姿を現し事情を説明するのが困難だというのだろうか……。例えば――そう、例えば、エンテの記憶が戻ってしまうと不都合なことになってしまうとか――
前にも考えたことだが、記憶喪失になるくらいなのだ。相当衝撃的な出来事があったのか、それか頭に強い損傷を受けたのかが考えられる。それがもし、前者なのだとしたら、記憶を戻すために姿を現せないのも納得出来る。しかし、本当にそんな出来事があったのか、と考えてしまう。あの時、クロノがヒルデと会って話していた様子から、アインやエンテを恨んでいるようなことはなかったように思う。あれは嘘だったとでもいうのか。それか、アインが都合の良いように彼女の魂を書き換えたのか……。いや、そんな考え自体不毛と言えるだろう。そう考えられるのは、ヒルデがエンテを心配してクロノに任せるような言葉を言ったからだ。あの言葉すら虚偽だったのなら何も言えないが、心から心配する彼女の表情や声を聞いたらそんな馬鹿な考えには決して至らないといえる。
だから、クロノはエンテが信じるヒルデを、自分と少しでも話をした彼女を信じようと思えるのだ。エンテにとって衝撃的な出来事なんてなかったと――
そんないろいろと考えていたクロノを気にすることなく、エンテは彼に声を掛ける。
「ヒルデの家に行けないのは残念ではありますが、今は先日言ったことをお願いします」
「……ん? あぁ、そうだね。こっちとしては嬉しい限りではあるけど……、日を改めたりしなくてもいいのかな? 朝から雨が降りそうで降らない感じだけど」
「問題ないです。出来るだけ早く確認したいですからね。天気なんか気にしていられません」
「それならいいんだけど……、まぁ、雨が降る前に終わらせれば大丈夫か。それよりも、本当に魔導の通り路をやらなくてもいいのかい?」
「はい。今はあの時のように開いている感じはしませんが、あれに頼っていてはこれからもこのままになってしまう気がするのです。だから、今の状態でやらせてもらいます」
「そうか……うん、その考え方はいいと思うよ! その方がきみの可能性も広がるだろうしね。それに、彼の言っていたことも気にはなっていたから、ちょうどいいのかもしれない」
「彼? 彼、というと――もしかして、あの獣のことを言っていますか? 何故、今その話になるのですか」
クロノの言葉から出てきた悪魔の存在にエンテは心底嫌そうに声を上げてしまう。そんなエンテを見て、クロノは思い出すようにしてマルコシアスから言われていた言伝を彼女に告げる。
「いや、彼がきみのことをかなり評価していたからね。それが本当なのか気になったっていう話だよ。あ、それと、彼から言伝を頼まれていたんだけど、きみの一撃をすごく褒めていたんだ。また戦いたいとも言っていたしね」
冗談交じりに言うクロノを見たエンテは微かに眉を顰めながら深くため息を吐く。そして、呻くかのように嫌そうに呟いた。
「はぁ…………。冗談じゃないです。もう2度とあんなのと戦いたくないですね」
「ははは。あんなのとそうそう出くわすようなことはないから安心していいよ。あーでも、そもそも強くなるために組み手をしたい、と持ち掛けたんじゃないのかな? 僕はてっきりそうなんだと思ったんだけど――」
「それは……、否定しませんが、それよりも確認したいことがあったのでお願いしたのです」
「確認……? そういえば、感覚を覚えておきたい――って言っていたっけ? そのことかな?」
「はい。私の考えが正しいのなら、今回は貴方に攻撃を当てることが出来るはずです。だから、今からやる組み手は手を抜かないことをお勧めしますよ」
挑発染みたことを言って退けるエンテにクロノはいつもの負けん気かと思い、和みそうになってしまう。しかし、仮にも悪魔に実力を認められている彼女を軽んじる訳にはいかないと思い直すと、彼女よりも少し強いくらいの強化を自身に掛ける。
「ふぅ……。今回は本気っていうことだしね。僕の強化は出来ているからいつでもいいよ」
「……っ、私もいずれそれくらい早く掛けられるようになってみせますよ。今はまだ時間が掛かるので待ってください」
素早く強化を掛けているクロノにエンテは気を悪くしながらも強化を掛け始める。そんなエンテをクロノは微笑ましく長い目で見ようとしたが、計らずもその考えを改めないといけないようになってしまう。そうなってしまったのは、いつものように強化を掛けるのが遅れるかと思ったエンテが予想よりも早く強化を掛け終わったからだ。そのことにクロノは驚くが、それと同時にマルコシアスから示唆を受けたことを思い出し、彼の言った言葉が真実味を帯びていることを実感してしまう。
「ふぅ…………、掛け終わりましたよ。それでは――早速攻めさせてもらいます!」
強化を掛け終わったエンテはクロノの返事を聞くことなく、彼に向って走り出す。クロノの間合いまで入ったエンテは最初の一撃に蹴りを繰り出す。だが、エンテの蹴りは呆気なくクロノに躱されてしまう。今まで組み手をやってきて大体の初撃蹴りだったことから、エンテは殴るよりも蹴りを好んでいることを改めて気付かされる。しかし、如何せん身長差という不利を覆すのはそうそう起こりえないといえるだろう。彼女もそれは痛いほどに分かっているのか、すぐに体勢を整えて殴り掛かる。右へ、左へと拳を繰り出すが、エンテの攻撃はクロノの動きを捉えることなく敢え無く躱されるばかりだった。
エンテの攻撃を躱しながらクロノは以前の彼女との相違点を確認していた。
「(……なるほど。確かに、ヒルデ邸に行く前より――いや、2人でマルコシアスと戦っていた時よりも動きは良くなっている。良くはなっているけど、彼が言うように特筆するようなことはないような気がする……。まぁ、まだ始まったばかりなんだ。もう少し様子を見てみようか)」
少しは成長していることに喜んでいるクロノとは対照的に、突然エンテは攻撃を止めるとその場に立ち止まってしまった。突然のエンテの行動を訝しんだクロノは彼女の調子が悪いのかと思い心配そうに声を掛ける。
「突然止まってどうしたんだい? もしかして、まだ本調子じゃなかったりするのかな?」
「……調子が悪い訳ないじゃないですか。その口ぶりだと、私が何で動きを止めたのか……、その理由に心当たりがないという訳ですね」
「いや、心当たりも何も、ちゃんとやっているだろう? それの何が不満なのかな?」
「はぁ……。貴方に期待した私が馬鹿でした。これならまだあの獣とやっていた方が良かったです」
エンテの要領を得ない言葉と、思い掛けない言葉にクロノは少し苛立ちを覚えてしまう。しかし、そんな態度を出す訳にはいかないと思ったクロノは、極めて冷静にエンテがどう思っているのか言葉を促す。
「僕が悪いのは分かったけど、何が悪いのか言ってくれないと直しようがないだろう。だから、教えてくれないかな?」
「……いえ、もういいです。貴方に言った所で意味があるとは思いません。それよりも、再開しましょう」
理由を言おうとしないエンテにクロノは更に苛立ってしまう。そうして険悪な雰囲気になってしまったまま組み手が再開されることになってしまった。




