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アイオライトの魔導人形(エンテシア)  作者: 七瀬朔夜
第6章 目覚め-息吹-
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悲しい結末

えー今さっき出来ました。多分、見直しが出来ていないので若干おかしいと思います。


…と、ここまでは予想で書いてみます。

実際、かなりギリギリなのでどうなってるのか分からないですが、多分見直せてますよ。……多分。

 意気込みを新たに悪魔へと挑もうとした私は、まず動きを見極めるために適度に間合いを取りながら悪魔の動きを観察するのを専念することにした。間合いを取る上で一番注意するべきなのは拳に纏っている炎(悪魔の魔術)だと考えてみる。彼も言っていたことだが、魔術にしても体術にしても射程というものが存在している。その射程が分からない内は無暗矢鱈に相手に近づいたりせず、まずはその射程がどれくらいなのかを確かめる必要がある、と言っていた。今までは後先考えずに突っ込んでいけたが、これからはそういうことも考えなくてはならない。


「(確か、最初に私の幻を攻撃した時はあの纏っている炎を放出しながら飛ばしていたような気がする。そうすると、充分距離を取っていた方が良さそうですね。10……、いえ、20mくらいは取っていた方がいいのでしょうか……)」

 初めてする行動なのでいまいち感覚を掴めずにいる。そうだとしても、1つ1つ試していかなくては……。今までサボ……あまり意識を向けていなかったツケがこうして回ってきたのは何とも自業自得ではあるが、そのツケを支払うチャンスが巡ってきたのだ。何としてでも活かさなくては……!

「ほぅ、これを警戒して距離を取るか……。そんな退屈なことをされては、逃げ場をなくしてしまっても構わんよな!」

 まだ目が見えないはずの悪魔はやはりこちらを狙うように拳に纏った炎を飛ばしてくる。しかし、見えていないからか、今度は私から大きく外れるようにしてその炎は飛んでいった。……いや、違う。さっき、あの悪魔は何と言った? ()()()()()()()、と言わなかっただろうか……。ということは、悪魔の狙いは私ではなく、もしかすると――

「そんな……。こんなことも出来るんですか……」

 悪魔が放った炎は確かに私から大きく離れることになったが、私とあの獣を中心に円を描くように炎が走っていった。そう、悪魔の狙いは私ではなく、私の逃げ場をなくし行動を制限するためのものだった。例えるならそれは宛ら、決闘場と言ったところだろうか。

「笑えないですね……」

 距離を取りたいというのに、これでは近づくより他ない。彼の言っていた戦うことが好き、という意味が少し分かったような気がする。こんな馬鹿げたこと、分かりたくはなかったが……。

「一時的ではあるが、我は視力を失っておる。そのハンデを補うためにこれくらいのことをしても構わんだろう?」

「……趣味が悪いですね。貴方の"それ"は見えないとは言わないじゃないですか……」

 しかし、こうなってしまっては仕方ない。予定が狂ってしまったが、ギリギリの距離で動きを観察しなくては……。あと数十分ほどしか残されていないが、何とか持ち堪えてみせる。そうすれば、戻ってきた彼と2人であの悪魔を倒すことが出来る。その為にも、出来る範囲で出来ることをしてやる。


 そう思い足を踏み締めた時、体に異変を感じてしまう。踏み締めている足がガクガクと震えてしまったのだ。もしかすると、今まで攻撃されていたダメージが今になって襲ってきたというのだろうか……。いや、それだけではない。いつもよりも魔力を使っているはずだから、魔力量がなくなってきている、というのもあるかもしれない。というよりも、そもそもいつもよりも調子が良いから、そんなことになっていることに気付けなかった。むしろ、何故まだ魔力があるのか不思議なくらいだ。

 だが、そうなってしまうと、もし彼が戻ってきても後の作戦を実行するために動くことが出来ないのではないだろうか……。今までそんなことも意識したことがなかったので、予想外の展開になってしまった。

「……どうした。掛かってこないのか? お主には我を愉しませるという義務がある。その義務を放置してくれるな」

「そんな義務、遠慮なく捨ててあげますよ」

「ククク、まだ威勢が良いようで安心したぞ。では、続きといこうではないか!」

 こんな状態を相手に悟られる訳にはいかない。何としてでもこの状況を脱して彼に繋げなくては……。彼の大掛かりな魔術の補助が出来るまで保たないのは心苦しいが、私が無事ならあの獣の頭のおかしい代価の賭けを回避出来る。非常に悔しいが、逃げに徹するしか私に残された方法はない――

 私は思考を切り替えて、炎の円陣があるギリギリの場所へと移動しようとする。

「フッ……、今更遁げようなど、我が許すと思ったか!」

「……っ!」

 だが、そんな私の行動を阻止するように悪魔が炎を飛ばしてくる。それなりに距離が空いているから何とか避けることは出来るが、悪魔の攻撃は一撃で終わらず絶え間なくこちらへと飛ばしてきた。1度なら何とかなるのに、何回も飛ばしてくるなんて卑怯なんじゃないですか……。

 愚痴りたい気持ちをグッと堪えて、私は飛ばされてくる炎を必死に避け続ける。

「どうしたどうした! 我が攻めるだけでは愉しめんぞ! お主も攻撃してこないのか!!」

「(言いたい放題言ってくれますね……! 私だって、出来るなら――)」

 彼の命が懸かっていないのなら、好きなだけ相手になるのに――

 そんな馬鹿な考えが頭を過る。ただでさえ、あの悪魔に負けているというのに、これではまるで――

「ふふっ、そういうことだったんですね……」

 自分の可能性を試したいだの、彼の命が懸かっているだの、そんなものを理由にしていたけれど、本当は誰よりも戦いたかった……それだけの話だった。あの悪魔のことを笑えないことに居た堪れない気持ちになってしまう。私はやっぱり何処か壊れてしまっているのかもしれない……。そこで、私は悪魔に1つの提案を持ち掛ける。

「すみませんでした。もう逃げるなんてつまらないことはしませんよ。その代わり、1つだけ頼みを聞いてくれますか?」

「……良かろう。退屈せぬ提案なら聞き届けてやろう」

「ありがとうございます。私の頼みというのは他でもない――この決闘の賭けである代価を彼の命ではなく、私の命に代えて欲しいのです!」

「ほぅ……。その真意とは如何程のモノか……、聞かせてもらおうか」

「……簡単な話ですよ。今戦っているのは私と貴方なんです。そこに彼の命は関係ありません」

 そう――初めから彼の命はこの戦いに必要なんてなかったんだ。何故なら、この戦いは私の戦いなのだから……。彼をこれ以上巻き込んでしまう訳にはいかない。彼には未来(将来)がある。その可能性を私の身勝手で閉じてしまうのは、あまりにも傲慢なのではないだろうか――

「だから、代価を私の命に代えて欲しいです!」

 私の提案に悪魔は考え込む。そして、マルコシアスと呼ばれている悪魔は到底悪魔とは思えないことを口にしてきた。

「我は別に構わんが、お主はそれで本当に良いのか? クロノベルト()と意見を酌み交わさずとも決めて」

 悪魔の予想外な言葉に驚きそうになるが、私は至極冷静に言葉を返す。

「元はと言えば、私に相談もなしに彼がこんな代価を提案したのです。だったら、別に私の方でも勝手に決めてもいいでしょう。それに――」

「?」

「不本意でしたが、彼は私の"パートナー"でしたからね。例え形だけであろうと、彼の身を案じるのはパートナーの役目ではないですか――」

 私の言葉を聞くと、悪魔は今まで見たことがないくらいに口を歪ませて私に笑い掛ける。

「フフフ、クックックッ……ハーッハッハッハッ! なるほどな。お主の言うことはもっともであるな。良かろう、お主の申し出を聞き届けてやろう!!」

「……ありがとうございます。これで心置きなく貴方と戦うことが出来ます」

「フッ、礼など及ばぬさ。どれ、趣向を凝らして我もお主と同じ土俵で戦うとするか」

「そんなことをしてもいいのですか? 余裕ぶっていて私が勝っても知りませんよ」

「相変わらずよく吠えおる。この程度で優位に立てると思っているのは考えが甘いぞ」

 悪魔は拳に纏っていた炎を消すと、私に警告を促す。

「……別に、この程度で優位に立ったとは思いませんよ。ですが、ギリギリまで魔力を強化に割り当てれば、貴方に勝つ見込みはあります!」

「面白い! その煌めきを悉く喰らい、砕いてやるわ!!」

「では――、行きます!!」



 こうして私の最後の戦いが幕を開けることになった。

 炎がなくなったのなら、遠慮なく近づくことが出来る。そう考え、目が見えないとはいえ警戒しながら悪魔へと近づいて行く。そして、間合いにまで近づいた私は気兼ねすることなく悪魔へと拳を繰り出す。右へ、左へと繰り出す拳を悪魔は涼しい顔で簡単に避けてしまう。

「(本当に見えていないのですか……!?)」

 そうして、私の攻撃を簡単に避けた悪魔は次は自分の番だと言わんばかりに私に拳を叩き込んでくる。しかし、悪魔の攻撃がどこに来るのか分かっていた私はその攻撃を手で防ぐ。それにしても、攻撃を受けても、防いでも痛いってどういうことだろうか……。悪魔の馬鹿力に苛立ちながらも、私は攻撃を再開する。

 目が見えていないのなら、足を使うことも出来るはずだ。そう考えた私は次の攻撃から足も加えるために動きを変えて対応していく。拳を突き出した後に軸足を回して上段蹴りを繰り出す。それでも、やはり私の攻撃は避けられてしまう。だが、諦める訳にはいかない!

 私は踊るように足を動かしながら拳と足を粘り強く悪魔へと繰り出す。速さが全然足りない……。それなら、今度は足と手だけに魔力を集中させろ。形振り構わず捨て身となって攻撃に専念することにした私の攻撃は少しずつ、悪魔の動きを捉え始めた。

「はぁ、はぁ……(これ、なら……、いけます)」

 この調子でいけば何とか一撃を食らわせるはずだ。いっぱいいっぱいの中で気力を振り絞りながら私は攻撃を繰り出す。

 しかし、調子が良くなってきたと思った所で再び私の体に異変が生じてしまう。

「はぁ……、はっ……(目が、霞んで……)」

 自分の限界が近いということを嫌というほど感じてしまう。ここまで来たというのに、ここで終わってしまうのか……。

「……どうした。ここまで来て、お主の輝きは失せてしまうのか? 我を愉しませるという言葉は"嘘"であったのか!?」

 私を煽り立てるように悪魔が口を開く。その言葉を否定するために私は悪魔に言葉を返す。

「そんな、訳……ないでしょう。私を、誰だと……思っているんですか……。彼女の、最高…………なんですよ……」

 悪魔に言葉を返してやりたいのに、頭が碌に働かなくてしどろもどろな言葉になってしまう。悪魔の言うように、もう私は駄目なんだろうか……。いや、そんなことはない!

 せめて、一撃を食らわせるまでは倒れる訳にはいかない!

 そう思い、私は拳を前へと突き出す。その拳は悪魔へと当たることになったが、悪魔はつまらなそうに言葉を吐き捨てる。

「はぁ……。やはり、この程度であったか。最後の一撃がこのように弱きモノであるとはな……」

 悪魔は私の攻撃に落胆すると、興味が失せたように私を軽く殴り飛ばす。殴り飛ばされた私はこのまま――気を失えたらどれだけ楽だろうか、などと馬鹿なことを考えながら、フラフラと立ち上がる。

「……もう良い。お主にはほとほと呆れ返ったわ。そのまま寝ているがいい」

 悪魔の言葉に私は頭を振って否定する。そして、悪魔へと告げる。私の最後となる攻撃を繰り出すことを――

「まだ、……です。私は、貴方に……、食らわせ…………」

 正真正銘、最後になるであろう攻撃に全てを賭ける――ヒルデ、……クロノ、私に力を貸してください!

 私は大きく目を見開き悪魔を見据えると、悪魔に向かって駆け出した。間近にまで迫った私は変わらずに拳を繰り出しながら悪魔の動きをよく見る。すると、どうだろうか。今まで見極めることが出来なかった隙をようやく見つけることが出来た。

「(……見え、た。このままいけば――)」

 本当に最後の好機に、私は全身にある魔力をありったけ右の拳に込めて悪魔へと叩き込む――

「はあああああああぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」

 その甲斐あって、私の拳は、悪魔の顔面へと……、入った。だけ、ど……これくらい、では、あの悪魔を、屈服させ……ない。

 全身の魔力を込めた反動で私の意識はここで途切れ、倒れ込むことになってしまった…………。




 意識を失ってしまったエンテはその場へと倒れ込んでしまう。無情にも、彼女の攻撃は一撃だけしか食らわせることが出来なかった。

 倒れ込んでしまったエンテをマルコシアスは見下ろすと、語り掛けるように彼女に言葉を吐き出す。

「良き、一撃であった……。しかし、口惜しいが、今宵の宴はこれにて終焉といこうか。……エンテよ、愉しき宴であったぞ――」

 エンテを褒め称えたマルコシアスは彼女に止めを刺すために最後の一撃を振り下ろした。

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