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アイオライトの魔導人形(エンテシア)  作者: 七瀬朔夜
第6章 目覚め-息吹-
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開戦1

さて、皆さん。今回からようやくお待ちかねの魔術戦になります。

今までの私の文章を読んできて分かるかと思いますが、あんまり期待しないでください!いや、ここで期待してください、と言いたいところですけど正直自信はないです。

自分が頭で思い描いているのと、文章ではまた違うので表現しきれているのかがちょっと…。ここは私の力不足です。一応、分かりやすくはしたつもりですが、変だと思うところもあるかもしれないです。その時は、遠慮なく報告してもらえれば、と。


あと、これだけは言いたいのですが、過去の私は何でもうちょっと楽な呪文とかにしなかったんですかね…。

 クロノ達がマルコシアスの元へ戻ると彼は愉快そうに2人を眺めていた。

「……遅かったな。それでお主等の()とやらは上手く収まったのか?」

 直接的な言い方ではないが、やはり気付いていたようだ。隠す必要がない分、楽といえば楽なのかもしれないが、その分こちらの"作戦"を気取られているので更に警戒を強めなくてはならない。

 だが、そのことも織り込み済みのようにクロノは強気で彼に言葉を返す。

「えぇ、ちゃんと話しましたよ。なにせ、僕達の命が掛かっていますからね」

「クックックッ、ならば心置きなく戦えるというものよ。――さて、お主の言う通り決闘をするのだ。勿論、立会人が必要であろう? それはこちらで用意させてもらおう!」

 マルコシアスの言葉にクロノは盲点を突かれてしまう。マルコシアス()の言うように決闘をするのだから勿論、立会人も必要になってくる。その人物を他でもない、マルコシアス()が用意するのだ。ただでさえ不利な状況が輪をかけて悪くなる一方だといえる。

 それだけは避けなくては、とクロノは彼が行動に移す前に動こうとしたが、すでに遅く召喚陣から彼の配下と思われる人物が現れた。


「――お呼びでしょうか、マルコシアス様」

「ウム。お主等には紹介しておこう。我の配下で名をルェインという。ルェインよ、この者共に一礼をせよ」

 ルェインと呼ばれた悪魔はクロノ達を一瞥すると、2人を侮蔑するようにマルコシアスに吐き捨てる。

「恐れながら、主様。このような人間風情にそのように(へりくだ)る必要はありません。即刻、この場で跳ね飛ばすのが宜しいかと」

「そう言うな。此奴等は今から我と闘う者達だ。あまり我に恥をかかせるな」

「……今、何と申されました? 貴方様が、この者達と――? 貴方様が手を下さずとも、私が……!」

 殺意をクロノ達に向けたルェインは主であるマルコシアスの返事を聞くこともなく2人に襲い掛かろうと全身に魔力を漲らせる。そんな身勝手な行動を取ろうとするルェインを止めるように、マルコシアスは彼を一喝して抑止しようとする。

「――止まれ。止まらぬのなら、今この場でお前の首を刎ねることになるぞ? 我にそのような真似をさせてくれるな」

 今までクロノ達に接していた姿からは想像も出来ないほどの威圧感に2人は圧倒されてしまう。無論、それはルェインも同じのようだ。一喝された彼は先程の態度とは打って変わり、マルコシアスに向かって膝を突き頭を垂れる。

「……無礼をお許し下さい、主よ。出過ぎた真似をしてしまいました」

「よい。我を想ってのことなのは重々理解しておる。して、主に頼みたいことがあるのだが、問題ないか?」

「頼み……。頼みというのは、この者達と貴方様の決闘の立会をしろということでしょうか?」

「クックックッ……、相も変わらず話が早くて助かる。主を呼び出して正解であったわ」

 笑い飛ばしているマルコシアスとは対象的に、ルェインは不服そうに彼の頼みを了承する。

「……私は構いません。ですが、グレモリー様にこのことは……」

「存じ上げぬはずだ。あの御方に知られればどうなることやら……。まぁ、それも一興ではあるが、今は捨て置こう」

「分かりました。このことは私の胸中に収めておきます。加えて聞きますが、決闘の内容というのは如何様でしょうか?」

「忘れておったわ。そうだな、決闘の内容は我に血を流させれば奴等の勝ち。それ以外の、奴等のどちらかが逝ってしまえば我の勝ちだ。無論、主は関与するでないぞ?」

「それは重々承知しております。ですが、宜しいのですか。その条件では――」

「よい。奴等の承認は取っておる。対して、奴等の心配事は主が戦いに介入しないか、という一点だけだ」

 マルコシアスに指摘されるルェインは、渋々ながらクロノ達に戦いへ介入しない旨を明言する。

「……、私はこの戦いには介入するつもりはないから安心しろ。通常ならこの御方が人間風情と戦えることはないのだ、光栄に思え」

 高圧的な態度のルェインにマルコシアスは息を吐きつつも、ようやく愉しみにしている決闘が始まることに胸を躍らせていた。

 一方のクロノ達は、マルコシアスの呼び出した悪魔が介入してこないことに安堵しながら、彼の威圧(力の一端)を目の当たりにして勝つことが出来るのか不安に思っていた。しかし、それでも勝たなければいけない。勝たなければ、自分達の明日はない。死ぬ気で彼に挑まなければ――



 待ち兼ねた、といったようにマルコシアスは口をクロノに笑い掛ける。

「さて、準備は整った。では始めようか――お主等の命運が掛かっている死闘というものを!」

 我先に、と先制をしかけるためにマルコシアスは動き出す。

「エンテ! 手筈通りに!」

「えぇ、分かっていますよ!」

 そこから少し遅れてクロノが、完全に2人から出遅れるようにしてエンテが動く。3人共動いたかと思ったら、クロノは突然動きを止めその場に留まってしまう。動かなければただの的になるだけだが、これが彼の立てた作戦なのだ。クロノ()は先手でマルコシアスが自身を狙ってくると読んで迎え撃つことを選んだのだ。そしてその読み通り、マルコシアスはクロノに狙いを定めて襲い掛かろうとする。彼が仕掛けた罠も知らずに――

 そうとも知らず、マルコシアスはそのまま一直線にクロノの元へ向かうかと思われたのだが――

「……っ! なるほど。だが、この程度の小細工――見破れぬとでも思ったのか?」

「っ!?」

 クロノが相手を捕縛する(仕掛けていた)罠はマルコシアスに敢え無く見破られてしまい、避けられることになってしまった。しかし、そのことにクロノは含み笑いを見せマルコシアスに礼を述べる。

「ありがとうございます――あなたは絶対に"(それ)"を避けてくれると思っていましたっ!!」

「……何?」


 そう、クロノはマルコシアスが仕掛けた罠を避けることは計算の内だったのだ。クロノ()が本当にマルコシアスに引っ掛けたかったものというのは他でもない、彼が得意とする魔術そのものだったのだから――

「地を侮りし愚者よ、その場に縛り拘束せよっ――粘土の(マッド)……」

「ムッ!?」

 先程まで平らだったはずの地面は崩れるようにしてドロドロになったかと思ったら、悪魔の周りを覆うようにして襲い掛かる。

王国(クレイマー)!!」

 そして、クロノが唱え終わるのと同時に呑み込むようにして覆い被さってしまった。

 先程エンテを助ける時に使った魔術というのが粘土の王国(これ)になる。本来はこのようにして相手を拘束したり、攻撃をする魔術なのだ。

 これでしばらくは時間が稼げるだろう、と安心しようと思ったクロノは自身の考えの甘さに驚愕してしまう。その考えの甘さとは、自身の魔力の少なさから来る拘束力の弱さ。そして、普段なら相性の良いはずの相手が、それを上回る程の実力を持っていたことだ――硬質化していったはずの粘土の王国(土の拘束)にひび割れが生じ始め、思っていたよりも早くあっさりと砕け散ってしまう。

「(そんな……!? 確か、彼は炎を得意としているはずだ。相性が良いはずなのに、そこまで実力差があると言うことなのか!?)」

 拘束されたはずの悪魔は炎を纏い、砕け散った粘土の王国から出て来る。出てきた悪魔は、クロノの魔術に興味を示すように笑うが、その魔術の甘さを彼に指摘する。

「ふむ、なかなか愉快な術を持っている。だが、我を縛るにはこのような()()では荷が重かったようだな」

「くっ!」

 先程も少し触れたように、本来ならば土は炎を抑え、消し去るほどの威力がある。しかし、それは絶対という訳ではない。例え相性が悪いのだとしても、力がそれを上回っているのなら簡単にその相性は覆ってしまうことになる。そんなことはそうそうないのだが、マルコシアス()はそれをいとも簡単に覆すことが出来るようだ。クロノが弱体化しているとはいえ、やはりマルコシアスを相手取るのは力不足が否めないと言えるのかもしれない。

 しかし、これでいいとクロノは思っている。何故なら、自分は()()()()()()()を果たしているだけに過ぎないのだから――

「今だ――エンテ!!」


 クロノの掛け声と同時にエンテがその姿を現す。そう、初めにエンテが出遅れたかのように思えたが、実はその時から作戦は始まっていたのだ。わざとエンテの行動を遅らせ、マルコシアスの隙を突くように彼女を差し向ける――これならば、彼女にそこまでの危険が及ぶことがない、と考えての作戦になる。また、クロノとエンテでマルコシアスを挟むようにしているので、もしもの時があってもすぐさま補助や攻撃を行えることまで考えられている。

 クロノが作ってくれた好機を生かすため、エンテは飛び掛るようにしてマルコシアスへと攻撃を仕掛ける。

「次こそ――貴方に当てます……!!」

「……何!?」

「(よし! エンテのこの攻撃で体勢を崩すことが出来れば、少しは勝つ見込みが――)」

「フッ……なかなか良い奇襲だが、残念ながら今回も我にはその攻撃は徹らぬ!!」

 マルコシアスはクロノの作戦を嘲笑うかのように吐き捨てると、右手を握り締め腰を落とす。すると、次第に右手が炎を纏い出す。

「我が拳は全てを滅する(ほむら)の調べ。灰燼と帰せ――落日の焔(マルキオ・アッシュ)!」

 炎が纏った右手はエンテを迎え撃つように彼女目掛けて打ち込まれた。マルコシアスが突き出した炎拳に、エンテは成す術なく燃やされてしまう。そのまま跡形もなく燃え尽きてしまう――かに思えたが、突如としてエンテの姿が霧散してしまう。

「何っ!?」

 マルコシアスの攻撃はエンテには当たることなく、空を切ることになってしまった。霧散してしまったエンテに驚いた彼は辺りを見回しエンテを探す。そもそもの話、エンテは飛び掛ってなどいないのだ。これも、クロノの作戦の1つ――アインか誰かは知らないが、この場所が霧の結界を使っていたのならそれを()()()()()()()()()()と考えたのだ。彼の家系は確かに幻術などを得意としていないのかもしれない。しかし、これだけの水分が周囲にあるのだ。その前提条件があるのなら、これくらいの簡単な幻を作るくらいなら訳ない。加えて、クロノが(わざ)と声を掛けることによってそちらに注意を引き付け、(あた)もそこにエンテがいるように見せかけた。

 このことで完全にマルコシアスの虚を衝くことに成功したエンテは彼の後ろへと回り込む。そして、そのまま力の限り右の上段蹴りを繰り出した。

「……、はあっ!」

「……っ!」

 攻撃したエンテがフェイクだと即座に気付いたマルコシアスは、すぐに後ろへ飛び退く。またも、エンテの蹴りは悪魔に当たることなく空を切ってしまう。いくら隙を突いたとしても、実力差があるせいでその差を埋めることが出来ないでいる。

 だが、このことさえもクロノは読んでいた。いや、正確には攻撃が当たることを期待していたのだが、それは高望みなのかもしれない。クロノの本当の狙いというのは――自身が先程繰り出した粘土の王国(泥濘)を広範囲に向けて広げることだったのだ。

「ㇺッ、これは……!」

 その甲斐あって、マルコシアスは見事に罠に引っ掛かり、足を取られてしまう。

 こうなることを読んで、クロノは予め次の攻撃の為の準備をしていた。その準備というのは、自身の魔力と土を混ぜ合わせた上で堅めることをする。そうして出来上がったものが、今クロノの頭上に浮かんでいる物体になる。この魔術は多少時間が掛かってしまうので、時間稼ぎ必要だったというわけだ。だが、それに見合った分だけの威力は保証されている。

 ようやく好機が巡ってきたと考えたクロノは、全力で悪魔に攻撃を仕掛ける。


「天より降り注ぎしは石巌(せきがん)の群れよ、彼の者へと流れ堕とせ――星屑落とし(メテオ・ストライク)!」

「くっ……!」

 クロノが手を振り下ろすと同時に、彼の頭上に浮かんでいた岩の塊は勢いよくマルコシアス目掛けて落ちていく。

 クロノが用意していた岩の塊(魔術)を視認していたマルコシアスは彼の魔術を防ぐために炎の防壁を急いで張る。その甲斐もあって、ギリギリだがクロノの攻撃を防ぐことが出来た。しかし、この攻撃だけでクロノの攻撃が終わることはなかった。それもそのはずだ。最初で最後のチャンスと言えるこの状況を1度の攻撃で済ませるわけがない。

「――続けて降り注ぐは、天に加護されし光の槍。我に仇なす者を裁け――閃光の驟雨(スパークル・レイン)!」

 続け様に唱え終えた眩い光の粒(魔術)がマルコシアスを襲うようにして降り注いでいく。絶え間なく降り注ぐ光の槍に、マルコシアスが張っていた防壁は削れるようにして剝がれていった。これでようやくマルコシアス(あの悪魔)へと攻撃を当てることが出来る。そう、囮のように行動していたエンテの攻撃が――

「これで、決めます――!!」

 完全にマルコシアスの隙を捉えることが出来たエンテの渾身の一撃が彼を襲う――

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