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アイオライトの魔導人形(エンテシア)  作者: 七瀬朔夜
第5章 心のふるさと
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番人

いつも通りなら、次でこの話は終わりになりますねー。さて、終わるのでしょうかー?

そして、続きは書けているのでしょうかー?それは…分からないですね!


どうしてこうなった…。

 結界を抜けてもまだ少し、霧が掛かっていて辺りを確認することが出来ないでいた。しかし、その霧も次第に晴れていくと、何かが聳え立つ影が見え始めてくる分かった。目を凝らし、その聳え立っているものが何なのかを確認しようとする。確認した結果、それが小屋ということが分かる。これで確信することが出来る。ここはエンテにとって本来帰ってくる場所で、大切な場所なのだと――ヒルデその人の住んでいた小屋なのであると――

 クロノが小屋を確認したのと同時に、エンテもそれを認識すると彼の前へと進もうとする。



「あれが彼女の――ヒルデの家、なのですか? 私と、一緒に暮らしていた……」

 微かに震えた声で呟きながら、エンテは目の前に建っている小屋へ向かおうとする。エンテが1歩歩を進め小屋に近づこうとした時、クロノは何か嫌な予感がして彼女の腕を掴み自分の胸へと抱き寄せる。

「わぷっ!? 何を、するのですか! 彼女の家が、目の前にあるのですよ!? 何故貴方は邪魔を――」

「エンテ、あそこに行きたい気持ちは分かる。だけど、今は()()()()()()を何とかしようか……」

「え?」

「どうやら僕の読み通り、あの家を守っている番人みたいなのがいるみたいだ――」

 クロノは影に潜んでいるであろう()()に最大限の警戒をして戦闘態勢を取る。戦闘態勢を取りながらクロノは考える。何故今まで気付くことが出来なかったのか、と。正直言って、すぐにでもここから去りたいぐらいには気持ち悪さを感じる。それこそ、まるで何かに纏わり、囚われたかのような強い圧迫感だ。これほどの実力を持っている者など、この世界を探せど数えるくらいしかいないだろう。そんな奴が番人だなんて……、とクロノ心の中で悪態を吐く。

 そんな相手がいつ現れるかも分からない状態にクロノは緊張しながら、1歩前へ出るとすぐさま魔術を発動出来るように身構える。クロノの様子から非常事態なのだと感じたエンテは状況を即座に把握すると、急いで自身に強化を掛け始める。エンテの強化が終わると同時に、何処かからか耳障りな声が聞こえてきた。


『ほゥ……。普通ノ賊だトすぐさまコノ伏屋へ向うト思っタのだが――ドウヤラお主ラはただの賊ではナサソウダナ?』

 2人して声のする方向を向いたが、声の相手は何処にも見当たらない。探している2人を無視するかのように、再び声が上から降り注いでくる。

『久方振リノ来客だ……。精々我ヲ退屈させルなヨ?』

 霧が完全に晴れ、影からその"人物"が現れた。

 その姿に、クロノは、いやエンテも驚いて声を失ってしまう。何故なら、その人物というのは人の形ではなく、異形の形をしていたのだ。

 その異形の人物はクロノ達よりも大きく、威圧感を感じさせる人物だ。いや、人物ではない。この異形のモノの正体は――()()だ。

 その悪魔はとても大きな狼の姿をしていて、鷲よりも大きく白い翼を持っている。それだけじゃなく、尾には蛇を携えているという変わった姿の悪魔だ。このような悪魔なんてものは今まで見たことも聞いたこともない。

 しかし、とクロノは考える。確か、このような姿をした悪魔のことを聞いたことがある気がする、と。クロノが答えを出すより先に、悪魔はクロノへ話し掛ける。

『……ム? 貴様……、アインはるとカ? イヤ、違う……違うナ。奴とはマタ違った感じがすル。……して、お主ハ一体何者だ?』

「(アインさんを知っている……? ということは、目の前にいる化け物はアインさんが用意した番人ということか……)」

 言葉を話すことが出来ることから、クロノは目の前の化け物から情報を得られると考え、話をしようと試みる。

「……人に名前を聞く時は、まずは自分から名乗ったらどうなんだ?」

 この場合、相手に下に見られてしまうのは得策ではないので極力強気な言葉で相手に揺さぶりを掛ける。相手が傲慢な場合だと下策になってしまうが、目の前の化け物からはそのようなことは感じられないのでおそらく大丈夫だろう。

 クロノの言葉を聞いた化け物は愉快そうに笑いながら、彼の言葉に同意する。

『ハッハッハッ! ソレもそうだな……。だが、ソノ前に――』

 悪魔は言葉を打ち切ったかと思ったら突然光を放ち、その中に包まれてしまう。そして、その光が収束されると、中から1人の大男が現れる。化け物が変身した姿なのだろう。その赤黒い短髪の男は改めてクロノに話し掛ける。

「ふぅ……。お主等はこの姿の方が話しやすいのであろう? 故に、この姿を取らせてもらう」

 クロノは目の前の化け物が変身したことに驚いてしまう。いや、それよりも、そういうことが出来る存在のことを思い出し、戦慄してしまうことになった。そう、化け物の正体というのは――

「もしかして、お前は――悪魔・マルコシアス、なのか?」

「ほう。我を知っているのか? ならば話は早い。我が名はマルコシアス! 地獄にて、30の軍団を率いる者なるぞ!!」

「(……やっぱり、あの悪魔だったのか……)」

 クロノには目の前の悪魔の名前に聞き覚えがあった。いや、クロノだけではない。世界中の魔術師や騎士、聖女は彼の、彼らの名前を知っている。知っているからこそ、出来れば出会いたくない悪魔だということを言い切れてしまう。

 そんな悪魔は愉しそうに笑うと、改めてクロノに問い掛ける。

「我が名も知っているとは、益々興味が出てきた。――して、改めて問おう。お主は何者だ?」

 クロノは思う。もし、目の前の悪魔が噂通りの奴だったのなら――自分達は一瞬で死んでしまうだろう、と。それほどまでの力量差があるのだ。そんなことを考えても無理はないだろう。

 いつまで経っても答えないクロノに苛立ちを覚えたのか、悪魔は彼に話をすることを促す。

「どうした……、我は名乗ったぞ? お主も名乗るのが"礼儀"、というモノではないのか?」

「っ!?」

 無駄に怒らせでもしたら最悪の事態になってしまう……。そうクロノは察知すると、一度この場から引くためにエンテの近くに行こうとする。彼女には悪いが、分が悪過ぎる。一旦出直して対策を立てなければどうにもならないだろう。

 考えながらクロノは目の前の悪魔の注意を払いつつ、エンテにこのことを告げようとする。

「……僕の名前はクロノベルト・ルイ・コンスタン、だ。お前の知っているアインハルトの子孫になる」

 クロノの言葉に驚きを見せた悪魔は、目を細めながら彼の言葉に真偽があるのかを確かめようとする。

「奴の子孫、だと……? なれば、奴は死んだというのか?」

「ああ」

 悪魔の口ぶりから、アインハルトが亡くなったことを知らないということが分かる。ずっとこの場所にいたのだ、知らないのも無理はないだろう。彼の他に知らせるような人物がいたのならそれを知ることも出来ただろうが、そういう人物も存在しなかったらしい。それならば、一体あの手紙は誰からのものになるのだろうか……。

 クロノの考えを余所に、悪魔は残念そうに声のトーンを落とし呟く。

「人間というものは、斯くも儚いものよ……。だからこそ、煌めいているのだろうが――だがそうか、実に口惜しい……」

 悪魔の落胆振りから彼(?)はアインのことを気に入っていたことが窺い知れる。悪魔に気に入られるなんてどういう人物なんだ、とクロノは驚愕し困惑してしまう。少しの間だったが、不思議な雰囲気を持った人物で親しみがある人だったと思うし、人々に慕われるのも分かる。だが、悪魔にまで好かれるなんて、彼は一体何をしたんだ、とクロノは若干引いてしまう。

 それにしても、この落胆はただ気に入っていたから、というだけではないだろう。何か、彼と約束みたいなものでもしていたのだろうか……。これほどの悪魔だ、タダで留まらせられる訳がないだろう。それこそ、何かしらの代価を用意でもしなければいけないはずだ。それも込みで落胆しているのだろう。

 アインが一体何を代価に捧げたのかは分からないが、何だか目の前の悪魔が気の毒に思えてくる。

 クロノが代価について考えていると、悪魔は興味が削がれたかのように彼らに背を向ける。そして、至極どうでもいいというように彼らに言い捨てる。

「奴が死んだのなら我がここにいる理由もない。奴には悪いが、違う代価を頂くことにしよう――」

「違う代価、だって……?」

「そう、違う代価よ……。我が奴と契約して代価を支払ったというのは、奴の命そのものなのだ。それが無くなったとなると違う代価を頂く他ないであろう?」

「他の代価を頂くって……それは一体――」

 クロノは嫌な予感がしつつも、悪魔にそれが何を示しているのかを問い詰める。クロノのその言葉に悪魔は口を歪めながら愉快そうに答える。

「それは――この場所そのものだ」

 なんて、とんでもないことを悪魔は言ってのけた。

 目の前にいる悪魔の言葉に、クロノはただただ絶句するしかなかった。それもそうだろう。場所が代価に選ばれるなんて、前代未聞といっていい。いや、そんなものまで代価に含まれるのか、と驚きで一杯なのだ。

 それよりも、この場所がなくなってしまったら、ヒルデの日記を手に入れることが出来なくなってしまう。それ以前に、この場所がなくなってしまうことになったら今ここにいるクロノ達はどうなってしまうのか、という話だ。

 それは不味い……。非常に、不味過ぎる。代価を支払われる前に彼を止めなくてはならない、とクロノは考える。説得しようにも、彼を説得させるほどの材料がなさすぎる。それならば、彼と戦ってでも食い止めるか……? それこそ、無理というものだろう。力の差があり過ぎる。

 だったら、考えられる方法は1つだけだ。エンテには申し訳ないが、ここは逃げるより他ない。被害に遭うよりも一刻も早く、この場から逃げなければ――

 だが、それで本当にいいのだろうか? 本当に、それが最善の方法なのだろうか――


 どうするべきなのか考えあぐねていたクロノの横を漆黒の影が横切る。考えていたせいでクロノはそのことに反応出来ず、制止することが出来なかった。その横切った"人物"は威勢よく、悪魔へと襲い掛かる。

「はああああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 そう、クロノを横切ったのは後ろにいたはずのエンテだった。そのエンテは目の前にいる悪魔へと拳を繰り出した。

 しかし、その拳は何かに阻まれるように悪魔へと当たることはなかった。おそらく防御壁を展開させたのだろう。無詠唱で、しかもこれだけのものを即座に展開させるなんて、出鱈目過ぎるとクロノは狼狽えそうになる。

 何事もなかったかのように悪魔は涼しい顔をしながら、飛び掛ってきたエンテを不快そうに眺め警告する。

「ほぅ……。威勢がいいのはいいが、名も名乗らずに飛び掛ってくるとは些か無礼ではないか?」

「……っ!?」

 悪魔が告げると同時に、何かに弾かれるようにエンテは吹き飛ばされてしまう。飛ばされたエンテを見たクロノは瞬時に移動すると、彼女が怪我をしないようにしっかりと受け止める。抱き留められたエンテはクロノを撥ね退けると、1歩前に進んで忌々し気に悪魔へと物申した。

「黙って聞いていれば、好き放題言ってくれますね。ここは、この場所は――私と彼女の思い出の場所なんです! それを、貴方みたいなよく分からない獣に好き放題されるわけにはいきません!!」

 威勢よく悪魔へと啖呵を切ったエンテはもう1度目の前の悪魔へ攻撃するために身構える。

 そう、彼女がこの場所へ来たのはヒルデの日記があるからという理由だけではない。彼女との――ヒルデとの思い出の場所。無謀とも思える悪魔への攻撃はそれだけでも充分過ぎるほどの理由だと言えるだろう。


 それなのに自分はどうなんだ、とクロノは自問自答する。

 目の前にいる化け物が自分達との間に圧倒的な力の差があるからといって引き返そうなどと、そんなことばかり考えていた。

 だけど、彼女は――エンテは違った。クロノの言動や悪魔の威圧感から、彼女も薄々だが今の状況がどういうものなのか気付いているのだろう。自分ではこの悪魔に勝つなんてことは到底出来ない、と……。

 だが――それでも、彼女はヒルデと過ごした思い出のあるこの場所を穢されるのが堪らなく嫌なのだろう。そうでないと、こんな無謀なことをしようとは思わないはずだから……。

 クロノは怯えながらも、改めてエンテを見る。相変わらず魔力が安定していなく弱々しく見えるが、それでもそんなものは関係ないとばかりに悪魔へと挑もうとしている彼女を、見る。誰の目から見ても、彼女はこの場にいるのがおかしいくらいに不釣り合いで弱い者だろう。しかしそれ以上に、一番弱いであろう彼女は、この中で一番強く高貴な意志を持っているのだと言い切ることが出来る。


 そんなエンテを見て、クロノは今一度彼女と、アインと交わした約束を思い出していた。

 アインと交わした約束――"彼女を棄てないでくれ"という言葉に対して、こう言わなかったか?

『それだけは絶対にしません。それに、この子が望むことを僕は全力で手伝ってあげたい、そう思うんです』

 そう約束したのではないのか?

 それだけじゃない。昨日、エンテに何と約束したのだ?

『例え何があったとしてもきみを"死なす"ようなことはさせないから……!』

 口約束なのかもしれないが、2人と確かに約束したではないか。それを台無しにしてしまうのか、と……。そんな醜態を晒してしまってもいいのか!? いや、許されるわけがない!

 おそらく、彼女1人であの悪魔に立ち向かってしまったら一瞬で決着が着くだろう。それほどまでの強敵だ。

 だけど――それがどうした!

 勝てないからといって、最初から希望を捨てて逃げようとすることは誰にでも出来る。だけど、だからといって逃げてもいいなんてことが許されない時があるんじゃないのか? そしてそれが、今、この時なんじゃないのか!?

 このまま彼女を置いて逃げることは簡単だ。でも、未だに踏み止まっているのは、そうすることによってあの時彼女を捨ててしまった後悔をして一生自分を許せないからだろう。

 彼女と出逢ってから1ヶ月くらい経っていない。だけど、それでも微かな"絆"があると、クロノは信じている。その彼女を捨て置くなんてことが、出来るわけがないだろう!!


 意識を戻し、目の前の悪魔に立ち向かったエンテを見据えながらクロノは必死で考える。この戦いを無事に終わらせるための最善手を――

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