本気
昨日の補足?
3万文字程度がどのくらいなのか想像しづらいと思うので例えを出してみます。大体私がいつも1章分を投稿している文字数になります。ね、頭おかしいでしょ?
本当にどうしてくれようか…。
まぁ、一応何とかするような算段はつけているので、何とかなるでしょう!何とか…。
今ので私の15敗目。
今まで彼を負かすような立ち回りをする所か、私の攻撃を彼に当てることすら出来ずにいた。確かに、この男と私では体格差や技術など様々な面で劣っていることは分かっている。それでも、1度も攻撃を当てることが出来ないのはすごく、悔しい……。悔しさと同時に、彼に対して苛立ちを覚えてしまう。それは勝てないことからの苛立ちなのか、と考えたが違うのだということは言い切れる。元々勝てるとは思っていなかったので、負け続けていることには特に何か思うことはないからだ。
それなら、何故ここまで苛立っているのか――それは多分、この男の模擬戦に対する態度が原因なのかもしれない。今までもそうだったのだが、彼は今まで、1度たりとも私に対して本気で挑んできていないのだ。おそらく、彼なりに私に合わせようとしてくれているのだろう。そうだとしても、私にはそれが許せなかった。やるからには本気で挑んで欲しい。贅沢な望みなのかもしれないが、その方が身に付きやすいと思ったからだ。それだけじゃなく、何かこう……、上手く言葉に出来ないが、その態度にモヤモヤとした気持ちになってしまうのだ。何故、そんな気持ちになってしまうのだろうか……。
気にしても仕方がない。私は考えていたことを忘れるように思考を切り替え、最後になる模擬戦へと挑むために強化魔術を掛ける。最後だからといって手を抜きたくはない。例え負けるのだとしても、最後に一泡吹かせるくらいのことはしてみせる……!
最後となる模擬戦をしていてしばらく経った頃、何を思ったのか彼は突然私に話し掛けてきたのだ。初めは、私の集中を掻くためのものだと思ったので攻撃を続けた。しかし、よくよく聞いてみるとこの男にしては珍しく言い淀んだので一旦中断して彼の話を聞いてみることにした。
「いや、悪いね……。で、話というのは――」
どうやらこの男が言うには、この近くに子供がいるということらしい。今までそんなのがいただろうか……。彼に言われるまま辺りを見回してみる。だが、この男以外、誰一人としてこの場にはいなかった。
「……女の子? そんなもの、どこにもいないじゃないですか。もしかして――私を馬鹿にしていますか?」
どう見ても存在しない。なので、彼に馬鹿にされたのだろうと考えることにした。しかし、それにしてはその後の反応と言い、言い淀んだ物言いなのが気になってしまう。本当に彼の言うように女の子がいるというのだろうか……。
仕切り直す為に彼は私との距離を取ろうと背を向け歩いて行く。彼の言っていたことに引っ掛かりを覚えた私は、彼が歩いている間にその真偽を確かめようと再び彼が指差した場所をしっかりと見てみることにした。
……やはり、誰もいない、か――と、視線を逸らそうとする。その時、誰もいないはずの場所から何故か、誰かに見られているかのような錯覚を起こしてしまう。それに、その場所の一部だけぼやけて靄が掛かっているような、そんな不思議な感覚に襲われる。それはまるで、あの男が具現化の魔術を見せてくれた時のような、そんな得も言わぬような感覚に似ている。……おそらく気のせいだろう。きっと魔力が底を尽きかけているせいで頭が呆けてきているからそんなことを思うのだ。
そう考えた私は気を取り直すために頭を振り、模擬戦に集中するために意識を切り替える。
模擬戦を再開してから、その異変は起きた。いや、異変というほどではないのだが、私にとっては許せない出来事だった。その変わったことというのは他でもない、あの男の模擬戦に対する態度が今までと打って変わっておざなりになってしまったのだ。この模擬戦が始まるまでは私を見ながら適度に相手をしている感じだった。しかし、今は時折視線を外して何かを見ている様子が度々見受けられる。
苛立ちながらも私は気にせずに彼へと攻撃を仕掛ける。しかし、気にしないようにしてもどうしても考えてしまう。そこまで私の実力は知れているということなのだろうか、と……。確かに、早く魔術の鍛錬がしたいからと体術は手を抜いていた所があったのかもしれない。だけど、私なりにちゃんとやっていたつもりだった。それをないものとして扱われるのはたまらなく腹が立ってしょうがない。私自身の力のなさもそうだが、それ以上に彼の態度に苛立った私は彼に八つ当たりするように攻撃の手を強めた。そのことに気付いた男は余所見をしている場合ではないと思ったのか、私へと視線を戻す。
そうだ、これでいい。これで心置きなく出来る。そう思ったのも束の間、再び彼は何処かへと視線を移し私を適当に扱った。
「(どうしてだ……。どうして、この男は――!!)」
そこから後のことは無我夢中で無心に攻撃を繰り広げたので何があったのかあまり覚えていない。まるで何かに取り憑かれたかのように行動していたのだと思う。攻撃を繰り広げた結果、感情が発散されたのか、私は冷静になることが出来た。しかし、冷静になった私は目の前の光景に驚いてしまう。それは、いつの間にか彼が大きく体勢を崩すほどまでになっていたのだ。そのことを好機と捉えた私は最初で最後になるであろう攻撃を彼へと繰り出した。
その結果――彼は体勢を崩したまま敢無く私の攻撃を鳩尾へと当てることを許してしまう。攻撃が完全に入ったのを確認した私はそのまま続けるようにして勢いを利用して右足で蹴り飛ばそうとする。その蹴りも防がれることなく見事に彼の顔面に入り、勢いのまま彼は吹っ飛んでいってしまった。
彼が吹っ飛んだのを見た私は一旦落ち着くために小さく息を吐くと、身体がフラフラしながらも確認しようと彼に近づいてみる。今までのことは、私の考えていた想像や妄想なのかと思って彼の様子を見ていた。しかし、現実だったらしく、彼は全く起き上がる気配はなかった。それを確認した私は、あの男から1本取ることが出来たという嬉しさと安堵感からよろめき倒れそうになる。いや、実際には魔力がもうほとんどないので立っているのもやっとなのかもしれない。
「(でも、このまま、倒れてしまうわけには、いかない……。クロノ……が、気を失っているんだ……、安静な……連れて、行か……。悪気が、なかった……、私の、……で、気を……失った…………のだから――)」
そう思い彼に近寄ろうとしたのだが、予想以上に魔力がなくなっていたせいか、身体が思うように動かない。そうこうする内に意識が混濁し出し、私は前のめりに倒れてしまうことになった。
だが倒れる寸前、誰かに抱き抱えられたように感じたが、意識のなくなった私にはそれを知る術がなかった。




