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アイオライトの魔導人形(エンテシア)  作者: 七瀬朔夜
第5章 心のふるさと
40/70

取引き

どうも、お待たせしました!まだ全然完成の目途は立っていませんが、投稿再開しようと思います。あ、前書き少し長くなるのでさらっと流してください。


ここでちょっと、非常に言いにくいことを言います。楽しみにしてくれてるのはすごく…非常に嬉しいのですが、皆さん私を買いかぶり過ぎですよ?いや、確かに今月中とは言いましたけど、今までの流れからいってそこまで早くないというのは知っているじゃないですか(震え声)まぁ、その圧のお陰で少し早めることが出来たのかもしれませんが…。

あともう1つ、謝っておくことがあります。今回2部構成と言いましたが、改めて計算してみたら全然足りませんでした、はい…。途中、中編を作ると変な所で区切ることになってしまうので、かなり長くなってしまいますが、前編・後編のまま強行したいと思います。長くなって申し訳ないですが、ご了承ください…。


最後に、6章終わりに報告があるので良ければ後書きも読んでくれれば、と。

以上、皆さんの記憶にはこの話を投稿したという話と最後に報告があるらしい、ということしか覚えていないでしょう。…多分。

 エンテが眠りから醒めてから1ヶ月ほど経った頃。

 いつものようにエンテは魔術の鍛錬に励んでいた。最近では魔術をする上で必要となってくる体術も取り入れ、忙しなくしているよう――なのだが、1人で体術の鍛錬をしていたはずのエンテは急に動きを止めると、不服そうにクロノへと不満を打ち明ける。



「……はあ。一つ訊ねたいのですが――」

「ん? もしかして、もう終わったかのかな? それとも、何か問題でも……?」

「問題も何も、いつまでこんな体術(こと)ばかりするのですか? いい加減ちゃんとした魔術の鍛錬をしたいのですが」

「それは前にも言っただろう? 忘れてしまったんだったらもう一度言うけど……、何事にも基礎は大切だから――」

「それを疎かにするな、でしょう? そんなことは何度も言われたから覚えていますよ」

「……だったら何が問題なんだい?」

「体術を始めてからもう2週間は経つのですよ? 魔術を教わり始めてからは1カ月は経ちます。それなのに、未だにちゃんとした魔術の鍛錬をしないのはおかしいのではないですか?」

「……始めたのはまだ3週間ちょっとだよ。それに、体術に関しては()()()()2週間程度だろう? その程度で基礎が出来ているのだと思うのは流石に考えが甘いよ」

 基礎を甘く見ているエンテに危機感を覚えたクロノは、厳しめに彼女へ警告をするように念を押す。一方、エンテは淡々と事実を告げるクロノに対し、怒りを露にするように彼に反論する。

「考えが甘い……? それは、貴方がちゃんと教えてくれないからじゃないですか。教えてくれているのなら、私だって……!」

「……きみの言っている"教えていない"がどのことを言っているのか分からないけど、少なくとも僕はきみにちゃんと教えているよ。それに、体術だってきみ自身、出来ていると思っているのかもしれないけど、誰の目から見ても出来ているとは到底思われない出来だ」

「それは……、1人だからこれくらいで大丈夫だと――」

「つまり、手を抜いている、と?」

「…………」

 クロノに指摘されたエンテは先程までの威勢の良さは何処かへ行ったように言葉を失い大人しくなっってしまう。大人しくなってしまったエンテを見据えながらクロノは彼女に言い聞かすように言葉を続ける。

「体術もそうだけど、きみの場合、強化魔術もまだ不安定な状態なんだ。そんな状態で次の工程に進んだとしても、いつかは行き詰ってしまうことになる。それに、暴走してしまう可能性だってあるんだ。それは、きみにとって望んでいることじゃないだろう?」

「……今は不安定かもしれませんが、やっていればその内安定すると思います。それに、組み手の時はそれなりに安定しているのです。だから、実戦になれば――」

「……実戦になれば安定して対応出来る、と? はぁ……。そんな考えではいつか痛い目を見ることになる。そうならない為に、せめて強化魔術が安定するまでは基礎練習をしていこう」

「そんなことじゃ、いつまで経っても――」

 クロノに反論しようとエンテは何かを言おうとするが、既の所で口を噤んでしまう。そのまま何も言わずクロノを見ていたかと思ったら、無表情で踵を返すとそのまま屋敷の方へと歩いて行ってしまった。

 エンテの行動にクロノは"いつものこと"か、と思いながら深く息を吐く。しかし、諦めることなく彼女の背に向って声を掛ける。

()()が済んだら次は組手をやるから庭まで来てくれるかな?」

 クロノの言葉に一瞬振り返るエンテだったが、返事をすることもなくそのままソッポを向いたまま歩いて行くのだった。そんなエンテを見送りながらも、クロノは彼女が来てくれることを願って強く呼びかける。

「待っているからねー!」

 エンテに待っていると言った手前、遅れる訳にはいかないと思ったクロノは足早に庭へと移動することにした。





 庭に到着したクロノは辺りを見回してみるが、当然といったようにエンテの姿を見ることはなかった。"休憩"しているのだからいないのも当たり前ではあるのだが……。待っていればいずれ彼女が来るだろう、と思ったクロノは以前とは打って変わった庭を眺める。とは言っても、毎日世話をし見ているのだから特に変わりはある訳はない。変わりはないのだが、寂れて何もなくなっていた庭じゃなくなったことに彼は心から喜んでいることがその表情から分かる。早くも芽が出始めているものやまだ芽が出ていないもの、それなりに育っているものなど、その成長を見るだけでもただただ嬉しく思うのだろう。

 そんな喜びに浸っているクロノの元に、呆れたような声で話し掛ける人物が現れた。



「……やっぱり、ここに居たんですね」

「やぁ、待っていたよ。それじゃあ、早速――」

「何故、貴方はここに居るのですか? 私が来ないということを考えなかったのですか?」

 エンテの問い掛けに対して、クロノは目を丸くして彼女の言った本意を考える。やがて、答えを考え付いたのか、晴れやかな表情で彼女に自分の出した答えを伝える。

「そうだな……。それは、きっと来てくれると思ったからかな? 現に今、エンテはここに来てくれた――それが答えじゃ駄目なのかな?」

「それは……、いくら探しても貴方が居なかったから――」

「探しに来てくれた、ってことだろう? そうだとしても、ここに来てくれたことには変わりないんだ。なら、それでいいじゃないか」

「はぁ……。貴方と話していると気分が悪くなります。もし、私に呪いが掛けられていなかったとしても、貴方のことは好きになれそうにありません」

 クロノの言葉を聞いたエンテは溜め息を吐くとうんざりするように呆れながら言葉を返す。それに対し、クロノは困った顔で残念そうに肩を落とす。だが、それでもめげることなくクロノはエンテに言葉を投げ掛ける。

「ははは、随分と嫌われてしまっているようだね。まぁ仮に、君が嫌いだと思っていても僕が君のことを好きな気持ちは変わらないよ」

「ふん、馬鹿馬鹿しいですね。そのような下らないことばかり言ってる暇があるのなら早く準備を始めたらどうなのですか?」

「……準備、というと?」

「次は組み手をするのででしょう? なら、さっさと強化を掛けて下さい」

 エンテの言葉にクロノは一瞬呆気に取られてしまう。呆気に取られながらも、強化を自分に掛けようと集中しているエンテを見てクロノは感嘆の声を漏らす。

「(なんだかんだ言っても、この子は僕の言ったことをちゃんとやろうとしてくれているんだよな。少し駄々を捏ねる所はあるけど……)」

 ゆっくりとだがエンテが強化を掛けているのを眺めながら、クロノはふと思いついたことを彼女に提案してみることにしてみた。


「なぁ、エンテ」

「……、何ですか。集中が途切れます。用件があるなら後にしてください」

 エンテの言うように今は集中させることに専念させるべきだろう。だが、彼女のやる気を出させた方が強化の精度が上がると考えたクロノは構わずに続けて用件を伝えることにした。

「今からやる組み手なんだけど、今日はいつもの組み手じゃなくて模擬戦をやろうと思うんだ」

「…………」

「で、その模擬戦でもし僕から1本取ることが出来たら、明日から君の特訓メニューに()()()使()()()()を組み込もうと思っている」

 クロノの発言を聞いたエンテは掛けようとしていた強化を中断してクロノを見詰める。そして、彼の発言の真偽を確かめようとする。

「……それは本当ですか?」

「ああ、嘘じゃないよ。一応これでも1ヶ月弱、君の頑張りを見てきたつもりだ。その君が()()僕から1本取ることが出来たのなら、文句なしに特訓するのを許可してもいい。とはいえ、きちんと基礎練習もやる上での約束だよ」

 クロノが言ったことに対し、エンテは深く考えてみることにした。考えた結果、今からやろうと言っている模擬戦に対して疑問を持ったエンテは不満そうな表情で疑問に思ったことをクロノへ問い詰める。

「……貴方の提案した模擬戦をやった際に、貴方に生じるメリットというのを聞いておきます」

「ん? 流石に用心深いね。そうだな……、もちろん僕から1本も取ることが出来なかったら今まで通り、いや、これからは基礎練習中に途中で投げ出さないことを誓ってもらうよ」

 自身に課せられるデメリットを聞いたエンテは少し目を細め不満そうな表情でクロノに返事をする。

「はぁ……なるほど。そういう事だろうとは思いました。私の体術が未熟なのを承知で持ち掛けている訳ですね。実に小狡い話です」

「確かに、多少小狡いのかもしれないけれど、きみにもメリットはきちんと用意されている。それに、きみがさっき言っていたように、()()()()()()()となれば真価が発揮するかもしれないだろう? その可能性に賭けてみるのも悪くないんじゃないかな」


 一見、エンテ(彼女)を馬鹿にするかのような発言に聞こえるが、クロノは彼女の中にある魔導具の"可能性"を見出すためにこの話を持ち掛けているのだ。今まで全く発動されなかったことから、彼女にはそのような力がないのだと考えた。しかし、さっきの彼女の発言から、もしかすると自身が()()()()()()()()()()()()()()タイプのモノなのではないだろうか、と考えたのだ。彼女には少し意地悪なことをすることになってしまうが、今はこうするより他ないだろう。勿論、彼女が負傷してしまっては意味がないのでなるべく同等、もしくは少し上ぐらいの力で対応しなくてはならない。また、そのことを彼女に気取られないようにすることも忘れずに行う。今の彼の状態でそれを行うのはなかなか厳しい所だが、これからの為にもやり切らなくてはならない。


 クロノの思惑とは別に、エンテは彼の言ったことを難しい顔で考えている。やがて、考えていたことに答えが出たのか、エンテは僅かに口元を緩めるとふっと笑いクロノの提案に返事をする。

「いいでしょう……、貴方のその提案を受けます。ただし、受けたからには必ず貴方から1本取ってみせます! 約束は必ず守ってもらいますよ!!」

 得意気にクロノへ宣言したエンテは普段以上に集中して自身に強化を掛け始める。計らずも、クロノの思い描いていた通りに事が運ぶことになってしまった。

 エンテの隠されている"力"が見られるかもしれない期待と、真面目に取り組もうとしている彼女に敬意を払って、クロノは喜びながら自分も強化を掛けることにした。

 そして、程なくしてエンテの準備が終わった所で模擬戦を始めることにするのだった。

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