心友
ディード達が来訪した次の日の早朝。
エンテはいつも通り庭園を訪れていた。それは最近日課になっている草花の世話をするためのものだったりする。何故早朝からなのかというと、魔術の修練を行った初日で終わった後にすぐに眠ってしまい庭園の手入れをする処ではなかったからなのだ。なので、このように魔術の修練を行う前に世話をすればいいと考え、早朝に行っているのである。基本的に2度の水遣りが必要なので好都合ではある。しかし、それにしては今日はいつもよりも早い気がするが――
いつもよりも早く起きてしまった私は日課になった庭園の様子を見に来ていた。あの男も言っていたように、心を落ち着けることを考えるならこの場所より他はないと思ったからだ。尤も、この場所ですら私にとっては"仮初の"居場所にしか過ぎない。私の居場所はここでは、ない。いや、そもそも私の居場所は何処にもないのかもしれない……。
そんなことはどうでもいいか。目的さえ果たせれば後はどうだっていい。私は存在してはいけないのだから……。
そんなことを考えながらも私は僅かにだが育ってきている目の前の花々を撫でる。
「…………」
この子達を撫でていると何故だかふと昨日の出来事を思い出してしまった。あの男の友人という存在を思い出してしまう。
いちいち話し掛け構ってきた2人に正直言っていい気はしなかったが、あの男にとっては大切な人達なのだろうということは見ていて分かった。それは私を構ってくる時とは違って、その2人には楽しそうに笑って話していたからだ。友人というものがどういったものなのか私には分からないから何とも言えない。だが、ああして楽しそうにしているのだから"何か"を満たせる存在なのかもしれない。私にとって、ヒルデのような存在に……。
そのことについて良いことだというのは分かるのだが、何故だろう。そのことに私は何故だか素直に喜べずにいる。
こんなことを思ってしまうのは私の性格が悪いからなのか。それとも、呪いのせいでこういう考えに至ってしまうのか――それは分からない。分からないが、彼女に棄てられたのだと解った時のような、そんな感覚を思い出してしまう。……すごく嫌な気持ちだ。
その嫌な気持ちを吐き出すように、言ってもどうにもならないことがが口から零れ落ちていく。
「何故でしょうか。世界に私だけしかいないような、そんな風に思ってしまう……」
言った所で気分が晴れるどころか、増々気持ちが沈んでいくのが分かる。
こんな気持ちになったのも、あの2人の人間を思い出しからだ。……いや、友達という存在を考えてしまったからだろうか……。
「友達……。友達とはどういうものなんでしょう。私にも、そういう存在がいればこの気持ちが晴れるのでしょうか……。ねぇ…………、貴方達は、私と友達になってくれますか?」
なんて、馬鹿げたことをつい口遊んでしまう。物言わぬ花々にこんなことを言っても何も返ってこないというのに……。
私は、孤独だ。孤独で、いい……。例え、この先どうなろうとも、私は、独りだけでいよう。
だけど――偶には、今日みたいなくだらない話を興じてもいいのかもしれない。それくらいの贅沢をするくらいしてもいいだろう。
他人からするとこの子達との関係は馬鹿げたものなのかもしれないだろう。それでも、私は私の言葉でこの子達に伝えていこう。例え、私の声が届くことがなくても――
空虚な人形は詠う――
自らの想いを風に乗せて――
それが何を意味するのかも知らずに――




