雑談
ここで、どうでもいい情報を開示してみたいと思います。
実の所……去年末までスマホではありませんでした。多分、諸事情がなければ今現在もガラケーだったかもしれないですね…。
以上、どうでもいい情報でした!
それから、エンテとのやり取りがあったからか、少し気まずそうにしながらもクロノ達は茶話会を楽しんでいた。そんな中でも、クロノはエンテのことを気にしつつ、どうにか彼女が会話に入ることが出来ないかと頭を悩ませていた。しかし、いろいろと考えを巡らせていたことでディードに話し掛けられていることに反応が遅れてしまう。
「――で、クロノはどう思うよ?」
「……え? あぁ、うん。……ごめん、何の話だっけ?」
「おいおい、聞いてなかったのかよ。……ったく、いくら他愛のない話だとしても少しは聞いていてほしいぜ」
「悪かったって。それで、何の話をしていたんだい?」
「フレッド君から新しい携行電話の試作品を頼まれたから、それの自慢をしていたんだよ~」
「おい、リシェ。自慢って言うなよ、自慢って」
「えっ、違ったかな? 嬉しそうにしてたからてっきりそうなんだと思ったんだけど……」
前のめりでディードを窺うようにリシェは尋ねる。そのリシェの行動にディードは動揺しながらも、なるべく冷静を装って彼女の行動を窘める。
「……っ! いや、違わないけどよぉ……。リシェ。お前、誰に対してもそういう風にするのは止めておいた方がいいぞ。勘違いする奴もいるかもしれないからな」
「え……。あっ、ち、ちち、違うの! そういうつもりじゃなくて、癖っていうか……でも、ディード君なら――」
言い繕うとすればするほど変なことを口走ってしまい、混乱してしまったリシェは見る見るうちに顔が紅くなってしまった。2人の様子を傍から見ていたクロノはこれ以上リシェが変なことを言わないように2人の間に割って入り話を受け流そうとする。
「それで、新しい試作品っていうのはどういうものなんだい? きみが自慢したがるっていうことはそれなりに珍しいモノなんだろう?」
「……ん? あ、あぁ。結構珍しい形だぜ。何でも海の生物を模した構造にしてみたらしい。詳しくないからよく分からんがな」
クロノに説明しながらディードは懐から取り出すと2人に謎な構造をした塊を見せる。
「へぇ。確かに珍しい形をしているね。丸みを帯びているのかと思ったら妙な突起が2つもある。……何か意味があるのかな?」
「さぁな。実際のやつもそうなのか知らんが、こいつも特に意味がないみたいだぜ。ただの飾りみたいなもんじゃないか?」
「え~、それがいいんじゃない! ほら、耳みたいに見えない? それに、丸っこくてつい愛でたくなっちゃうよ。いいなぁ、ディード君。わたしもフレッド君に言って同じのを貰おうかなぁ」
「いや、リシェ。こいつはあくまで試作品だからな。最終的にこうなるとは限らないぞ。だが、そうだな……。確か、今回はいろいろデータが取りたいからって結構いろんな形をしたのがあったっけかな? 魔石を中に入れるから限度はあるらしいが」
「そうなんだ! 今度フレッド君の所に行く予定があるから、どういうのがあるのか見せてもらおうかな! 可愛いのがあるといいなぁ♪」
ディードの取り出した魔導話を撫でながらリシェはうっとりと思いを馳せる。
「可愛いねぇ……。まぁ、リシェならそう言うと思ったからこれにしたんだが、こういうのは使えりゃよくないか? 俺にはよく分らんが……」
「……、分かってないなぁ、ディード君。電話が出来るだけじゃなくて可愛いなんて、最高じゃない! それに、この耳みたいなのも固いのかと思ったらぷにぷにしていて何だか癒されると思わない?」
「分かった分かった! 俺が悪かったよ! お前が言ってるように、こういうのもアリなんだろうな。ただ……、使いづらいのと小っ恥かしいのが難点だな」
「そこは、慣れだよディード君。この子で慣れていかないとね!」
「お、おぅ。そこら辺は徐々にな」
2人のやり取りを横目に見ていたクロノは何かを思い出したかのように口に出して呟く。
「あっ、そういえば――」
「お、どうした? 何か気になることでもあるか?」
「いやね、魔導話をエンテは持っていなかったっていうことを思い出したんだよ」
「おいおい、マジかよ……。いくら子供でも今時持っていないのは不便だろ。親は何してんだよ」
「えっ、あぁうん。まだ早いって言っていたんだよ。でも、流石に不便だろうからどうしようかと思ったんだ」
「そうか。勝手に買い与えるっていうわけにもいかないからな……。だったら、お前のやつをあげたらどうだ? それだったら向こうにも角が立たないだろ」
ディードの提案に乗るようにクロノは頷く。そして、今し方決めたことをエンテに向かって聞いてみることにした。
「そうだね。……エンテ! 僕の使っているもので悪いけど、これでいいかな?」
「…………」
クロノに問い掛けられたエンテはゆらゆらと眠そうにぼーっと彼を見た後、何も言わずに本へと視線を戻した。いつものことだと肩を落としつつ、続けてクロノはエンテへと声を掛ける。
「眠いんだったら自分の部屋に戻ってもいいんだよ? 今日の鍛錬はもう終わっているからね」
「別に……眠くなんか、ありません。私を、気にせず……話していればいいじゃないですか……」
「……分かったよ。無理はしないようにね」
「おい。何だよ、鍛錬って。あのガ……、アイツ何かやってるのか?」
「ん? あぁ。魔術の鍛錬だよ。まだ習い始めたばかりだから眠いんだろうね」
「ほぉ……。魔術の鍛錬か。あのくらいの歳で始めるなんて珍しいな」
「いや、それは……」
ディードに指摘されたことでクロノは内心焦りを感じてしまう。友人と話していて気が緩んでしまったのか、素直に言わなくてもいいことをそのまま口に出してしまったようだ。どうにかしてこの場を収めようと考えを巡らせるが、これといった案を思い付くことが出来ない。
そんな折、とうとう限界が来たのか、先程から大きく船を漕いでいたエンテはそのままの勢いで目の前に置かれていたカップへと盛大に突っ込んでいく形で倒れ込んでしまった。当然、カップに向かって突っ込んだのだから大きな音が部屋中に響き渡る。その大きな音にリシェとディードは何事か、と驚きながら音が聞こえた方へと振り返る。
「何だ!? 一体何の音だ!? ……って、何だ。アイツかよ……。いや、ちょっと待て……、テーブルに思いっきり突っ伏してるじゃねぇか! 大丈夫なのかよ!?」
「大変だ! 怪我とかしてないかな?」
慌てながらもエンテを心配したリシェは冷静になると、直ぐ様エンテの所へと駆け寄る。リシェに続くようにディードも遅れるようにエンテの所へと向かう。
先に到着していたリシェはゆっくりとエンテを抱き起すと、甲斐甲斐しくエンテが怪我をしていないかを診ている。遅れてきたディードは心配そうにリシェに尋ねる。
「どうだリシェ。怪我とかはしてなさそうか?」
「……うん。食器がガラスじゃなかったから特に怪我という怪我はないよ」
「ほぉ。それは良かったな」
リシェが言ったように、食器がガラスではなかったお陰か、幸いにも怪我をするようなことはなかったようだ。尤も、エンテは人形なのだからそのような心配をする必要などないのだが……。それでも、もし割れるような食器で怪我など見受けられないのなら、流石に怪しまれてしまうので今回は運が良かったのかもしれない。いや、こうなることを予想してクロノが元々用意していたからだろうか。いずれにせよ、この騒ぎのお陰で魔術の鍛錬の話も流れたので、結果としてタイミングが良かったと言えるだろう。
だが、この騒ぎで安心してしまったクロノは2人より出遅れる形でエンテの所へと向かう。
一方、リシェはエンテのことを抱きしめながら心配そうな顔でディードに返事をする。
「うん、怪我はないんだけどね。ただ――」
「ただ、……何だよ? 何か他にヤバいことでもあるのか?」
「あー……、ううぅん。そういうことじゃなくて、エンテちゃんが寝ちゃってるんだ~。だから、静かにしてあげないと……」
小声で囁きながら静かに、というように人差し指を口の前に持っていくとエンテを寝かしつけるかのように頭を撫でている。その様子を見たディードは一息吐くと小声で話し掛ける。
「本当に寝てやがる……。まぁ、確かに眠そうにしてたからな。眠いんだったら部屋に戻ればよかったのによぉ」
「ふふ。わたし達と一緒にいるのが楽しかったのかな?」
「一緒にいた、っていっても遠くに居たんだぜ? それに、会話にも入ろうとしなかったしよ……」
「そこはまぁ……、ほら。照れてた、とか?」
「照れてただぁ? そういうヤツには全然見えないけどなぁ」
「まぁそれは、この子にしか分からないのかもしれないね」
2人より随分遅れて来たクロノがディードの発言に答えるように会話に入る。それに気付いたディードはエンテのことを指差すと、訊ねるようにクロノに問い掛けた。
「おぅ、クロノ。寝ちまったけど、コイツを部屋に連れて行かなくていいのか?」
「うん、そうだね。悪いけど、エンテを部屋に連れて行かせてもらうよ。……そういえば、ディードはもうそろそろ仕事に戻らないといけないんじゃないのかな?」
話し込んでいたことですっかり忘れていたクロノはディードに時間は大丈夫なのかと心配そうに問い掛ける。クロノの言葉にディードは時計を見ると、余裕な顔で言葉を返す。
「ん? ああ、もう少しくらいなら大丈夫だ。それに、ちょっとくらい遅れても平気だ」
「ふふふ。そんなこと言ってディード君、また怒られても知らないよ? ほら、前にわたしに言ってたじゃない」
「いや、それはだなリシェ。俺が悪いっていう訳じゃなくて……!」
「ふふふ、そういうことにしとくね♪」
「はぁ……。絶対分かってないだろ……。まぁ、なんだ。そういうことだから、行って来いよ。待ってるからさ」
「そういうことなら、行ってくるよ。なるべく早く戻るから待ってて」
「あぁ、別に急がなくてもいいぞ? リシェと話したいこともあるし、な」
そう言いつつディードはリシェに目配りをする。ディードに問い掛けられたリシェは咄嗟に顔を逸らしてしまうが、返事をしないといけないと思いそれらしいことを答えてしまう。
「……話って何かな、ディード君?」
「……何を考えてるのか知らないが、あるじゃねぇか。ほら、あの事だよ、あの事!」
「えっ、……あぁ! うん、そうだね! あの事だね!」
「――ということだ、クロノ。リシェと話してるから、のんびりで大丈夫だぞ。変に急いだりしてソイツが怪我したら大変だからな」
「……何の話なのか気になる所だけど、そういうことならゆっくり行くことにするよ」
2人の話が気になりつつも、クロノはエンテを部屋に連れて行くために客間を後にするのだった。




