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属性

「属性は魔術を使う上で最も重要な要素になるんだ。ついでだからきみがどの属性に適しているのかも調べてみようか」

 次にクロノはエンテに魔術の属性がどういったものなのかを伝えようとする。先程よりも興味が出てきたのか、エンテは食い入るよう眼差しでクロノを見つめる。そのことにクロノは感心しつつ、話をし始める。

「まず、魔術の属性というのは基本の4つに振り分けられている。その4つというのが、火・風・水・土という四大元素と言われるものだ。また、その4つとは別に2つの属性も併せ持っている。その2つというのが、光と闇だ――」



 魔術の属性というのは生まれた時に既に決められている。その属性というのが、"火"・"風"・"水"・"土"といった四大元素を基本としている。そして、その4つの中から1つの属性が宛てがわれるのだ。この4つ以外に属性がないのか、というとそういうわけではない。確かに1つしか属性が宛がわれないが、その宛がわれた属性の隣り合う属性も微かにだが扱うことが出来る。その隣り合った属性を組み合わせることによってまた違った属性の魔術を扱うことが出来るのだ。勿論、簡単に組み合わせることは出来ないのと適正がなければどうやっても扱うことが出来ないので無理に組み合わせる必要はない。それに、無理やり組み合わせることによって支障が出たりするので一長一短と言ったところなのである。1つの術を極めるのか、それとも器用にいろいろな術を扱うようにするのかはそれぞれに合った体系に寄せるのがいいだろう。


 更に、この四大元素以外にも例外として2つの属性が存在している。それが、"光"と"闇"だ。こちらも生まれた時にどちらかが宛がわれるのだが、この2つの属性だけは少々特殊で四大元素と異なるのが特徴だ。それというのも、この2属性は成長する過程で変わり得ることがあるからだ。

 人というのは成長する過程で必ずと言っていいほど人と関わることになる。その関わる人によって自分の考えや価値観といったものは変わっていく。それだけで変わる場合もあるが、ほとんどは変わることはない要素である。それなら何が変わってしまう要素なのかというと、主に環境で変わってしまうことが多いのだ。その理由として、強いストレスが挙げられている。一説には、心身ともにストレスが掛かることで脳に異常を来し変わってしまうと言われているのだ。真偽は定かではないが……。


 このように、クロノ達が住んでいる大陸では主にこの6つの属性が取り挙げられている。他の大陸ではまた違ってくると言われている。



「――っと、属性の話はこんな感じかな? 次はどの属性に適しているのかを調べていくんだけど――」

 そう言ったクロノは腰に携えていたポーチに手を入れて何かを探し始める。やがて、探しているものを見つけたのか、ポーチからその探し物を取り出す。

「……あったあった! さて、エンテ。ここに何の変哲もない1枚の紙があるよね? この紙がどういうものか分かるかな?」

 1枚の紙を取り出したクロノは少し悪戯じみた顔でエンテへと問い掛ける。しかし、エンテはそれに対して冷ややかな目でクロノを見つめると話を進めるように目で訴える。自分の軽いノリに乗ってくれないのを残念に思いつつ、クロノは話の続きをする。

「これは普通の紙のように見えるけど、実は魔力に反応することでその人の属性が何に適しているのか、っていうのが分かる紙なんだよ。そうだな……、まずは物は試しっていうことで僕で試してみようか」

 そう言うや否、クロノは取り出した紙に魔力を込め始める。するとどうだろうか、紙はみるみるうちに朽ち果ててしまった。その様子をエンテは不思議そうに眺める。そんなエンテの反応を見たクロノは得意気な顔で彼女へと語り掛ける。

「ふふ。面白いだろ? こんな感じで各属性によって紙に変化が起きるんだ。火だったら紙が燃え、水だったら濡れる。そして、風だったら切り刻まれるようになる。僕の場合は、朽ちてしまったから土になるんだ」

「ただの紙切れなのにそんなことが出来るんですね」

「特殊な紙だからね。きみ達の時代ではなかったものだから珍し――ごめん」

「気にする必要はありませんよ。そんなことよりも、その紙をください」

「……そうだね。えぇっと……、はい。使い方は分かるかな?」

「分かりません。どうやるのですか?」

「さっき教えた魔力を放出する方法を覚えているかな? それをその紙に対して行うんだ。初めは難しいと思うけど、自分の中にあるものをその紙に注ぎ込むようにイメージするとやりやすいかもしれない」

「…………」

 クロノにアドバイスをされたエンテは瞳を閉じると言われた通りに集中し念じ始める。しかし、いつまで経っても紙に変化は起きることはなかった。変化が訪れないことに痺れを切らしたのか、クロノはもう一度エンテにアドバイスをしようとする。

「イメージするって言ったけど頭で考えるだけじゃないんだ。身体にある魔力を――」

「少し黙っていてください! 集中出来ません」

 焦るようなことを言われたからか、初めて語気を荒げるようにクロノの言葉を制止させる。今までと違った意外な反応に驚きつつ、真面目にやっているエンテに感心したクロノはそれ以上何も言うことはなかった。

 肝心のエンテはというと、言われたことをいくらやっても出来ないことに焦りの色が出始めていた。その証拠に、紙を手にしている指に力が入り皺が入っているのが分かる。表情も何処となく険しくなり、苛立っているというのが見て取れる。

 エンテの様子を見守っていたクロノは小さく息を吐くとエンテに中止するよう言い放つ。

「エンテ、そこまでだ。もう止めていいよ」

「!? ち、違う! 私は、私はまだ出来ます!! お願いです、やらせてください!!」

 クロノに止められたエンテは怯えるように懇願する。それに対して、クロノは慌てて言葉を訂正する。

「あぁ、違う違う! 一度紙を貸してくれるかな?」

「……いいですが――」

 言われた通り、エンテは渋々といった感じでクロノへ紙を手渡す。そして、何も為しえなかったことに意気消沈したのか、消え入りそうな声でエンテは呟く。

「私は、魔術の才能がないのでしょうか……」

「……そんなことはないよ。さっきの説明で少し言わなかったことがあるんだけど、この紙は魔力の強弱によって反応が変わってくるんだ。その証拠に、ほら。ここを見てごらん」

 落ち込んでいるであろうエンテを安心させるためにクロノは穏やかに笑い掛ける。そして、変化が起きているであろう箇所を示しながらエンテに見せる。紙を見せられたエンテは息を吞むような緊張した面持ちで恐る恐る見てみる。

「…………、切れてる?」

「うん。よく見ないと分かりにくいけど、ちゃんと切れているんだ。だから、きみは風の属性に適性があるってことだよ」

「本当に、私が……? 貴方がやったんじゃないですよね?」

「ふふ、疑り深いな。心配しなくてもこれはきみがやったことだよ」

 クロノにそう言われたエンテは彼に気付かれないように小さく息を吐く。表情こそ変わらないものの、その様子から安堵して安心しているのが見て取れる。


 そんな喜んでいるであろうエンテを横目に、クロノは改めて紙を見て考え込む。

「(しかし、どういうことだ? 確かに、魔力の強弱によって反応は変わる……。だけど、いくら魔力が弱いといってもこんなに反応が見られない事例なんて聞いたことないぞ……)」

 どれほど考えてみても答えが出てくることはない。本人に聞こうにも、エンテ自身もどういうことか分からないと答えられるだろう。それどころか、聞くことによって彼女に不安を与えてしまうかもしれない。それだけは避けた方がいいと考えたクロノは別の方法を考える。

 これから魔術を教えていく中で彼女の魔力がどのように働いてどのように使われるのかというのを試していくしかない。かなり遠回りで回りくどいやり方だが、これが一番の近道になるだろう。そう考えながらクロノはこの話は自分の胸の内に仕舞い込むのだった。

「さて、属性も分かったことだし、最後は実際に魔術を見てもらおうかな」

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