幕間 人形と使用人
昨日ぶりになります。七瀬です。
今回は幕間ということでどこまで描くのか、投稿するのかと悩みましたが一応投稿させてもらいます。
今のところ全ての章の最後に差し込むかどうか分からないですが、なるべく書いていこうかと考えています。
それと、今日は非常に申し訳ない報告になりますが、現在書いているストックがなくなってしまったのでしばらくお待ちしてもらうことになります。力不足で申し訳なく思いつつ、なるべく早く書き切るために邁進していきます。
あと、これは予定になりますが、pixivにてこれまでの話とエンテシアの立ち絵を公開しようかと考えています。もし興味を持ってもらえたら覗いてみてください。
エンテシアとの約束をしてからしばらくの間、クロノベルトは彼女と会話をして仲良くなろうと試みた。だが、当のエンテシア自身が会話をするのを拒んでしまい、その望みもあえなく破れてしまうのだった。
無理強いしてこれ以上関係を悪くするわけにはいかないと思ったクロノベルトは、少女と同じ談話室でアルスが帰ってくるのを待つことにするのだった。エンテシアはというと、時折船を漕ぎながら目を閉じそうになるのを堪えつつ黙ってソファーに座っている。
そうこうする内に日は傾き暗くなった頃、アルスが私用を終えて屋敷へと戻ってきた。
「申し訳ございません。本当はもう少し早く戻る予定だったのですが――」
「おかえりなさい、アルスさん。それは別に大丈夫ですよ。それよりも、紹介したい子がいるんですけど……」
「紹介したい……私に、ですか?」
「はい。僕の後ろに居る……あれ? どこに行ったんだ――」
「……もしかして私に紹介したい子、というのはあそこに居る子のことでしょうか?」
「え……?」
アルスに言われるままクロノベルトは後ろを向くと、近くにいると思っていた少女は自分の遥か向こうからこちらを窺うように佇んでいた。溜息を吐きつつ、こちらへ来るように手招きするが一向に来る気配がないので渋々エンテシアの元へと向かう。
「今朝はちゃんと挨拶する、って言ったじゃないか。それとも、あの約束は嘘だったのかい?」
「っ!? そんなわけないでしょう!?」
「そう? うーん、そうだな……気が進まないんだったら僕の方で紹介しておくけど――」
「別にそういうわけじゃ……。ただ、何と言えばいいのか考えていただけです。そもそも、言ったからにはちゃんとやりますよ……」
「分かった。それじゃあ、どうするかはエンテに任せるよ」
そう言うと、クロノベルトはエンテシアが逃げないように彼女の手を引いてアルスの元へと戻る。
エンテシアはというと、自分で言ったことを後悔するかのように暗い顔でクロノベルトに引き摺られていくのだった。
「アルスさん、お待たせしました。改めまして、この子はエンテシアと言います。ほら、エンテ?」
クロノベルトの後ろに隠れていたエンテシアを押し出すように前へやる。
エンテシアはその行動に不愉快そうにムッとしてしまう。だが、そんなことを吹き飛ばすかのように自分よりもずっと大きいアルスの存在に萎縮してしまいおずおずとした様子で窺うように口を開く。
「押さないでくださいよ……。……えっと、初めまして?」
「……初めまして。私はこの屋敷に住み込みで働かせてもらっているアルス・ノトリアと申します。以後、お見知りおきを」
エンテシアが萎縮してしまっているのを察したアルスはこれ以上縮こまってしまわないように微笑むと、穏やかに話すように語り掛ける。
アルスの言動にエンテシアは胸を撫で下ろしたのか、意外にも自らアルスへと手を差し伸べるのだった。
「……よろしく、お願いします」
自分の時とは対応が違うことにクロノベルトは驚きつつも、アルスと上手くやっていけそうだと思い1人安堵する。そんな物思いに耽ていたクロノベルトにアルスから話しかけられていることに気付くのにやや時間が掛かってしまった。
「……何でしょう、アルスさん?」
「いえ、少し気になったのですが……もしかして彼女はアイン様の遺したモノ、なのですか?」
「あー、やっぱり分かっちゃいますよね……。そうですね、あの後いろいろあって碑文を解いて彼女を発見することになったんです」
「左様でございますか。……では、ややこしいことになってしまった、ということですか?」
「んー……ははは、そうですね。確かに、ちょっとややこしいことになりました。でも、僕は彼女の――エンテがしたいことを協力する、って決めたので!」
決意は揺るがないとばかりにアルスへと宣言する。そんな主の言葉から何かを感じ取ったアルスはクロノベルトの成長を喜ぶように言葉を返す。
「……主である貴方がそう決めたのなら私からは何も言いません。ただ、何か困ったことなどがありましたら私の方でもお手伝いさせて頂きます」
アルスの言葉に安堵するように深く息を吐くと、当面の問題をアルスへと打ち明ける。
「はぁ……。そう言ってもらえると助かります。当面は僕も動きが制限されるのでどうしようかと悩んでいたんです。1年という期限の間にどれだけ彼女と仲良くなるかが問題だったので……」
「1年間……? それはまた何故――」
「話せば長くなるので後で説明します。端的に言うと、僕がドジってしまったのが原因ですね……」
クロノベルトは力なく笑い肩を落としてしまう。だが、いつまでもそんなことで落ち込んでいられないことから、何をするべきかアルスに相談する。
「いろいろと問題はあるんですけど、アルスさんから見て何をしたらいいと思いますか?」
2人してエンテシアへと向き直る。
そして、アルスはエンテシアを頭の先から足の先まで見ると、出会ってから気になっていたであろうことを提案するのだった。
「そうですね……まずは、引き摺っている服をどうにかしないといけないのではないでしょうか。……エンテシア様、申し訳ございませんが2階まで一緒に付いてきてもらっても宜しいですか?」
「……別にいいですが、私はこの服以外は着るつもりはありませんよ?」
「ですが、ずっとそのまま引き摺っているという訳にもいきませんよね? 別に、その服を処分しようという訳ではありません。……もし、抵抗するというのなら多少強引にでも――」
先ほどの雰囲気とは打って変わって、有無を言わせないといった剣幕でエンテシアを威圧する。
話が違うとばかりにエンテシアはクロノベルトに助けを求めるように目を配らせる。しかし、肝心の頼みの綱であるクロノベルトは頭を振るとお手上げだというようにエンテシアへ言葉を掛ける。
「諦めてくれ、エンテ。こうなったらアルスさんは止められないんだ」
「そんな……」
「では、行きましょうか。エンテシア様」
アルスに手を引かれるように歩いていくエンテシアは、裏切者と言わんばかりに恨めし気にクロノベルトを睨むことしか出来なかった。睨まれたクロノベルトはそんなことを気にも留めることなく、アルスに引き摺られていくエンテシアを笑いながら見送るのだった。




