第44話 ダンジョン実習1
初心者です。
生暖かい目でご覧ください。
誤字脱字等ございましたら、ご連絡ください。
俺たちが王立学園に編入して2週間が経った。
「さて、もうすぐダンジョン実習が始まるわ」
「ダンジョン実習ってなんですか?」
「そっか、シン君とミコちゃんは知らないのか」
「じゃあ、今からの説明をしっかり聞いておいてね。ダンジョン実習っていうのは読んで字のごとくダンジョンに行って魔物を倒しにいく実習のことね。4人以上の班を作ってダンジョンを攻略してもらうわ。低級ダンジョンだからそこまで危険はないけどそれでも命を失うことはあるから注意が必要ね」
ダンジョンについては以前、ミコに聞いたことがある。
永久に魔物が生まれ続ける場所で、外と違いダンジョンの中は魔物を倒すと勝手に素材になったり、時々宝箱があったりと不思議な空間なそうだ。
なんでも階層に分かれていて階層ごとにボス部屋があるようでボスを倒すと宝箱とダンジョンの外に戻れる魔法陣が現れるらしい。
ダンジョンの最深部にはダンジョンボスという強力な魔物とダンジョンコアというダンジョンの核があり、ダンジョンコアを破壊すればダンジョンが崩壊するらしい。
ダンジョンには低級、中級、上級、超級があり超級は魔境の奥と同等かそれ以上の危険度らしい。
セーラからもらった知識によれば現在では超級のダンジョンは攻略不可として出入りを禁止されているらしい。
「今から班分けを決めて頂戴。一班4人以上のことが条件ね」
マーゼがそういうとみんな席を移動し班を決める。
「どうする?俺たちが同じ班になるのはいいとして一人足りないぞ」
「どうしましょうか」
「まぁ私たちの実力ならどうとでもなるし、最悪は王家の権力を利用して三人班を認めさせればいいわ」
「そんなことで王家の権力を利用していいのか?この学年では平民も貴族も関係ないって学園長に聞いたが」
「そんなのは建前よ。そもそもここは王立学園、お父様はここの理事長に当たるわ。だからどうとでもなるのよ」
「なるほど」
俺たちがセーラの言葉に納得していると、一人の少女が俺たちに話しかけてきた。
「セーラ殿下、貴女たちの班に入れてもらえないかしら?」
「あら、ゼミル嬢。勿論構わないわよ」
俺たちに話しかけてきた少女は俺の隣の席のランダル公爵家の令嬢、ゼミル嬢だった。
俺がセーラからもらったゼミル嬢の情報を思い出しているとセーラからの「念話」が飛んできた。
(ゼミル嬢は得体のしれない存在だけれど敵ではないわ。ランダル公爵家は王家の血を継ぐ家だから王家ともかなり友好的な家だし、ゼミル嬢本人も文武両道才色兼備って感じで人当たりもいいけど、警戒は怠らないでね)
((了解))
元より俺もミコも人を簡単に信用できるような性格ではないため問題ない。
今回に関しては俺たちも人が足りなかったところだし都合はいい。
が、どうにも違和感がある。
ゼミル嬢は顔も良いし、授業中の態度を見ている限りセーラが言っていた通り文武両道才色兼備ってイメージだ。
だが、どうにも気持ちが悪い。
悪意を持たれている気はしない。
むしろ笑顔でこちらを見ている。
その笑顔がどうしても気持ち悪い。
(ミコ)
(了解、結果だけ共有してちょうだい)
俺はミコに「念話」で最低限の会話をする。
俺は「偽装」を使い、魔力を使ったのをバレない様に「超鑑定」「魔眼」を発動する。
ミコも同じようにして「マインドリーディング」を発動したようだ。
だが、「超鑑定」は鑑定できず魔眼で見てもある程度の魔力量しかなかった。
公爵令嬢だからか魔力はかなり高いが俺やミコ、セーラやユイのように飛びぬけて高いわけじゃない。
(鑑定出来なかった。魔力量も異常なし)
(「マインドリーディング」も効果なしね)
(「超鑑定」が効かなかった理由として考えられるのは俺やミコよりもレベルが高いこと)
「鑑定」は自分よりも圧倒的に強い存在には今回のように鑑定出来ないことがある。
(ただ、今回の場合はありえないわね)
そう、俺たちのレベルは魔境で強い魔法や武器、スキルを使って挙げられたものだ。
それがたかが13歳の少女に越せるとは思えない。
それに、俺が「魔眼」でゼミル嬢の魔力を見たとはそこまで高くなかった。
勿論、俺たちのように抑えているところもあるだろうがそれにしてもだ。
レベルが上がればどれだけ魔法や魔力に適性がないものでも魔力量自体は増え続ける。
だからありえないのだ。
(他には鑑定を妨害させるようなアイテムを身に着けている可能性もあるわ)
(それこそありえない。「超鑑定」のスキルはどんな偽装も隠蔽も通用しないように創った。俺が創ったスキルがたかがアイテムに負けるとは思えない)
(ならあとは固有スキルくらいね)
(あぁ、俺もその可能性が一番高いと思ってる)
俺たちでも鑑定出来ないような高レベルな隠蔽を行うにはそれこそ固有スキルくらいではないとありえない。
(問題はゼミル嬢の加護だが)
(「超鑑定」が使えない限り調べる方法はないわね。多分学園にある情報もデマでしょうね)
(俺たちのスキルや魔法を無効化するくらいの固有スキルってことは神族系の加護の可能性が高いな)
(警戒は怠れないわね。可能性は低いけどまだ私たちよりも高レベルな可能性は否定できないし)
俺たちは様々な方法でゼミル嬢の情報を取ろうとするがどれも失敗したのだった。
ゼミル視点
私は天使たち、じゃなかった。
セーラ殿下たちに話しかけていた。
ダンジョン実習で同じ班になるためだ。
ぶっちゃけ低級ダンジョンなんて何度も潜ったことはあるし攻略なんて一人でもできる。
でも、強い仲間と一緒にいて損はない。
それに、元々私はセーラ殿下やシンさん、ミコさんと話したいって思ってたからちょうど良かった。
三人全員にめっちゃ警戒されてるけどこれに関してはしょうがないのかもしれない。
私は今まで誰かと友人という関係を築いたことはない。
公爵令嬢という立場もあるけど、シンプルに人間関係というのは面倒くさい。
だが、私は人生で初めて人と友人になりたいと思った。
まぁめっちゃ警戒されてるけど、きっとそれは時間が解決してくれるだろう。
「ごめん、決まった班の中でリーダーだけは決めといて、あと先生が班分けを知るためにメンバーを前においてある紙に書いて教卓の上に置いといて。終わった人から帰っていいよ。私は用事があるからここで失礼」
そう言って、先生は教室を去っていった。
全く、嵐のような人だな。
シンさんは何かしらの魔法を使い、前においてある紙を手元に引き寄せた。
周りの注目が集まっているが無視だ。
「シンさんはどこでそんな魔法を?」
「創っただけだ」
「さすがは創造神の加護をお持ちなだけはありますね」
魔法を創るって凄すぎる。
「さん付けしなくていい。ゼミル嬢は公爵令嬢で俺は王女殿下の護衛騎士といえど平民、呼び捨てで構わない」
「私もシンと同じよ。呼び捨てでいいわ」
「分かったわ。なら王女殿下は私のことゼミルとお呼びください」
「分かったわゼミル。でもシンたちのいうことも一理あるけどここは学園なのだからあなたも私のことをセーラと呼んでもいいのよ。実際、シンとミコはそう呼んでるし」
「なら、そうさせてもらうわ。じゃあ同じ理屈でシンとミコも私のことをゼミルって読んでね」
「分かった(わ)」
よし、これで一歩友人に近づいたわ。
この調子ね。
まだ多少は警戒されているみたいだけどこれは時間が解決してくれるはず。
この時の私はそう思っていた。
ダンジョン実習の日
結論から言おう。
セーラ達との仲は全くと言っていいほど深まらなかった。
ある時は一緒に昼食を食べようと誘ったが、「私は用事があるから失礼するわ」と言って気づいたときには消えてしまってたし、お茶に誘えば「ごめん、先約があるから無理」と言われてまた消えていった。こんな風に完全に避けられ、警戒など1mmも解けなかった。
そして今は班に分かれて馬車に乗っている。
私の横にセーラ、前にシンとミコだ。
「いよいよ、ダンジョン実習の日ね」
私はあたりさわりのない話題をだす。
「そうだな、まぁこのメンバーならどうとでもなるだろう」
シンは余裕そうに言う。
「でも、ダンジョン実習って死者がでることも珍しくないみたいだし、気を付ける必要はあると思うけど」
「死ねば蘇生すればいいだけだ」
「蘇生なんてできるの?」
「できるぞ」
この人たちに出来ないことはあるのだろうか?
私はそんな疑問が浮かんできた。
そんなことを考えていると目的地に到着した。
他の班の馬車もついたようだ。
皆馬車から出て、クラスごとに分かれる。
余談だがクラスによって行ける階層が制限されており、AクラスとSクラスは制限がないがCクラス以下のクラスはそれぞれ行ける階層が決まっている。
そんなことを考えていると
「さて、集まったわね。ここは低級ダンジョン「魔物の巣窟」多種多様な魔物がいて、深い階層ならAランクの魔物がゴロゴロ出るわ。Sクラスのみんなは好きな階層で狩りをしていいけど、明日の夜には帰ってきてね。あと、みんなに渡した腕輪は絶対に外しちゃだめだから」
渡した腕輪とは印の腕輪という魔道具で、それの対になる索敵板という魔道具を使うとあらかじめ登録しておいた印の腕輪の位置がわかるというものだ。
何かあったときの捜索に使われるためダンジョン実習中は絶対に外してはいけないものである。
「あとは魔物の素材については実習終了後に学園で買い取るからなるべくたくさん持って帰ってきてね。じゃあ命大事にダンジョン実習を楽しんでね。解散」
先生の挨拶が終了し、各班が動き始める。
「私たちどうする?」
「そもそも、今回の実習の目的ってなんだ?」
「魔物の素材をたくさん集めるとか?」
「でも、先生の口ぶり的に評価にはつながらなさそうだし、急ぐ必要はないだろう」
「一応、ダンジョンという環境の経験って意味だろうね」
「でも、それじゃ何をすればいいのかわからんな」
「したいことをすればいいじゃない。レベル上げとか。ここら程度の魔物じゃどうせ大した経験値にならないかもしれないけど」
「まぁ低級ダンジョンだもの仕方ないわよ」
「とりあえず、ダンジョンコアとやらには興味があるし、ボス倒しにいくか」
「いいわね。ついでに宝箱は見たいわ」
「じゃあ適当に宝箱を探しながらダンジョンを攻略する感じでいいかしら?」
「「OK」」
「ゼミルもそれでいい?」
「問題ないわ」
こんな感じで私たちの班の目標は決まった。
今回はゼミル視点ばかりでしたね。
ゼミルにはどんな秘密があるのか。
それはダンジョン実習中に分かります。
お楽しみに!!
誤字脱字等ございましたらお気軽にご連絡ください。
気に入ってくださいましたら、ブックマーク、レビュー、評価いいね等よろしくお願いします。