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第350話 甘やかされた末路3

珍しく、少し長くなりました。

まさかの6日連続投稿、そろそろストックが追い付かなくなってきました。

「……何をしたの?」


私はこの異様な光景に、ミーゼのリーフェを問い詰める。


「魔王教を布教しただけよ」


ミーゼはそう楽しそうに笑う。

バタフライ王国で信仰されている宗教である、魔王教。

シェールが創ったシンを崇める宗教だけど、確かミーゼはシェールの願いで魔王教の「聖女」をしていて、リーフェもシェールの願いで魔王教の異端尋問官をしていた。

勿論、魔王国幹部としての仕事もあるので基本は魔王城にいるけどたまに魔王教に顔を出すって感じだが。

魔王教に所属している二人が魔王教を布教することはそこまでおかしなことじゃない。

だけど……


「まだ出会って数時間の子達をどうやってこんな風にしたの?」


「ん?簡単よ。とりあえず、美味しいご飯を食べさせて、お風呂に入れて」


「うんうん」


ここまでは同じだ。


「私の部下になった場合の条件を教えて」


「うんうん」


ここも普通。


「シンに「魔王覇気」を使ってってお願いして」


「うん?」


何で「魔王覇気」?


「一度だけ、シンに心から忠誠を誓うって強く心で唱えたら一切害を加えないし解放するって契約して」


「なるほど、もういいわ」


シンの「魔法覇気」の効果には、シンへの想いが強ければ強いほど自身の全てが強化されるという効果がある。

そして、その強化中は想いに比例してシンを強く感じる。

ただあれはシンとの距離が遠すぎると、効果もそれに比例して減衰する。

ただここは魔王城。

魔王の能力は全て強化される。

この部屋からシンがいるシンの自室までの距離を考えれば十分に効果を得ることが出来るだろう。

あれ、シンがやろうと思えば戦場一体に効果を及ぼせるくらいには効果範囲広いから。

そして恐らくミーゼはシンに最大範囲に発動してと言ったのだろう。

確かに「白世界(私の世界)」に入る少し前から、なぜかシンが「魔王覇気」を使っているなと思っていたけど二人の仕業だったらしい。

契約魔法で契約した場合、基本的にそれは守られる。

勿論私達ならそれを強引に破ることもできるけど、王女達の常識からすれば契約魔法での契約は絶対だ。

きっとその契約は守られ、王女達は契約通り強くシンに忠誠を誓うと心で唱えただろう。

その結果「魔王覇気」による強化が王女達に発動し、王女達はシンの力を強く感じたことだろう。

「魔王覇気」、あれを感じるのは、私達ですらキツイ。

契約魔法で無理やり心で唱えられた程度でも常人なら、あれを忘れることなんて出来ないだろう。

そこで、シンに忠誠を誓えば好条件に加え、あれを定期的に体感できる。

とでもミーゼが囁けば。

王女達は自ら、契約魔法を破棄するだろう。

そして二人はちゃんとした部下を手に入れた。

その結果が、今の光景だろう。

納得までは出来ないが、一応理解できなくもない。


「それで、この子達はもう二人の部下になったの?」


「えぇ、魔王、そして私達二人への忠誠を約束してくれたわ「マインドリーディング」で心を読んだけど問題なし」


「そう。ならいいわ」


元々、二人と相性がいいだろうと二人には少し精神が弱めな子を選んだ。

きっと二人の手法と担当した子達の性格がかみ合っていたのだろう。


「魔王様を信じなさい、さすれば絶大なる力が貴女達を守るでしょう。貴女達も身をもって実感したでしょう。魔王様の御力を」


「「「「はい」」」」


リーフェのセリフに恍惚とした笑みで、二人の部下は答える。

きっと私が予測した以外にも色々とやっているのだろう。

少し怖い。

まぁ、味方だしいいか。


「にしても、二人とも速かったわね」


「私達、こういうのは得意だから」


「実際、シンを魔王様を信じれば救われる。というのは事実だしね」


二人がそう楽しそうに言う。

幹部の中で、二人のシンへの想いは他と少し違い少々複雑だ。

忠誠と信仰心と愛情と恋情が複雑に入り混じったもの。

どうやら二人ともまだ自分の中に秘められたシンへの恋情には気がついていないようだけど。

まぁ、それはいつか気づくでしょう。

私達は永遠を生きるのだから。


「それじゃあ、後は好きにしなさい。ただ、シンに報告するのは皆で一緒に、よ」


「「勿論」」


「それじゃあ、私は他の子も見てくるわ」


そうして私はミーゼとリーフェの部屋を後にした。

流石というべきか、二人は人を引き込むのが得意なようだ。

次に私は私の部屋のミーゼとリーフェの部屋の反対隣にある部屋のドアをノックする。


「私よ」


「ミコ?今開けるわ」


部屋の中からユイの声がして、ドアが開く。

この部屋はユアとユイの部屋だ。


「どうしたの?」


「私の担当の子達はもう寝ちゃったから、様子を見に来たの」


「でも、私達の担当の子達ももう寝ちゃったのよね」


「あら、少し遅かったか」


「でも、多分起きたらすぐ堕とせると思うよ」


「どういうこと?」


「見てもらった方が早いわ」


そう言ってユイは私を部屋の中に招き入れる。

部屋には二人の担当の子合計20人がベッドで眠っていた。

ただ、その子達はなぜか一糸纏わぬ姿で、身体には汗をかいていた。


「何をしたの?」


「ん?二人で皆と遊んだだけよ」


そうユイは妖艶に笑う。

部屋にある机の上に見たことのある瓶が置いてあった。


「そ、そう。それで部下にはなってくれそうなの?」


「うーん。まだわかんない。でももっと遊んだらいつかはなってくれると思う」


ユアがそう楽しそうに教えてくれた。


「そ、そう。それじゃあ私は他の子を見てくるから」


私は2人の部屋から足早に廊下に出たのだった。

先ほどの光景は見ないことにしよう。

次は私の部屋の正面の部屋のドアをノックする。

この部屋はユキとロアの部屋だ。


「はーい」


ロアが出てくる。


「ミコ、どうしたの?」


「私の担当の子達は寝ちゃったから、皆の様子を見て回ってるの」


「そう。うちは終わってるわよ」


「早いわね」


「見ていく?」


「ぜひ」


私はロアに部屋の中に招かれる。

そこには……


「「「「「ユキ様ーーー」」」」」


「ふふ、皆いい子いい子」


ユキに群がる王女達と、王女達をペットのように撫でるユキの姿があった。


「……何をどうやったらこうなるの?」


「皆一瞬でユキに魅了されちゃったみたいで」


「魅了? スキルを使ったの?」


ユキには確か「魅了」という相手に好意を抱かせるスキルがあったはず。

でもあれは一時的だし、発動中ずっと魔力を消費するから部下のために使うのは向かないと思うけど。


「いや、ユキはスキルの「魅了」は使ってない」


「なら、何で魅了されてるの?」


「淫魔女王から漏れ出すフェロモン的な奴で、魅了されちゃったらしくて私が王女達に「万物理解」を使って調べたんだけど。皆魂からユキに魅了され、服従していて」


「淫魔女王すご」


確かに淫魔は人類の性を吸収して生きる種族であり、その特性上人類を魅了し操るようなスキルや魔法に高い適性がある。

が、フェロモンだけで相手を魂から魅了し、服従させるなど聞いたこともない。

魅了は大きく分けて二種類ある。

一つはスキルや魔法による一時的な魅了状態。

これは解除する魔法や時間経過で解ける。

もう一つが魂からの魅了。

こちらを行うには魔法やスキルだけでは駄目で、心から相手に魅了され自身の全てを捧げたいと思うことで魂がその相手に魅了される必要がある。

これは一種の本能的なものであり、魅了する側が意図しない場合もある。

この魅了はその性質上、魂にずっと深く残り魅了された魂は例え転生して新たな肉体を得てもその相手のことを忘れず、相手が転生していようとも分かる。

なんて逸話もあるくらいだ。

当然、時間経過や解除魔法程度じゃ解けない。

その性質上、恋人に魂から魅了されちゃう。

なんてこともあるみたいだ。

稀ではあるが、互いに魂から魅了されているカップルは未来永劫円満だとか。

ただ魂からの魅了は自覚することが出来ず、高位の術者が詳しく調べなければ分からないので大抵の人が自分が魅了されていると知らずに人生を終えることがほとんどだったりする。

少し話がそれたが、魂からの魅了と言うのはそれだけ稀であり、スキルや魔法によるものではない本物の感情が必要なのだ。

ユキはそんな魂からの魅了を自身のフェロモンだけで行ってしまったらしい。


「淫魔女王としての種族もあるかもだけど、ユキって淫魔女王の才能があるみたいで」


「淫魔女王の才能?」


「人を堕とす才能」


確かにその才能は淫魔にとってとても有用だと思う。

そこで私はあることも思い出した。


「よく考えたら、当然なのかもしれないわね」


「当然って?」


私の突然の発言にロアが疑問を投げかける。


「シンはユキに、ユキに最も適した種族になる魔法をかけれたの」


「それは聞いたわ」


「つまり、淫魔女王だから人を堕とす才能があるんじゃなくて、人を堕とす才能があったから淫魔女王になったのよ」


「なるほど、それは納得ね」


淫魔は吸血鬼同様絶滅したとされている種族だ。

しかし、その強さはなかなかだったと聞く。

そんな種族の、それも女王になる才能はきっと計り知れないものだろう。

私とロアは同じ結論になり、ロアはため息をついた。

自分の好きな人が人たらしだと分かってため息をつくなというのは無理がある。

そして私もよくわかる。


「お互い頑張りましょう」


「えぇ」


私とロアの間に吸血鬼として以上の強い絆が芽生えたのだった。

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