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第344話 対魔王軍会議2

「知っている者もいるだろうが、我が娘セーラは12歳まで魔法をちゃんと使うことが出来なかった。我としてはセーラはとても頭が良いし王族のそれも女性が直接戦うことなど滅多にない。気にしないでいいと思っていた。しかし、セーラ本人は自身の魔法についてとても悩んでいた。そして周りからも腫物のように扱われたり、あろうことかいじめられたりもした。そんな時、セーラの気分を変えるために魔境の浅瀬に狩りにいったのだ。そこで我等はある少年と少女に出会った。少年と少女は魔境に住んでいたらしく、とても強く博識だった。そしてその知識と力でセーラが魔法を使えるようにしてくれた。それからセーラは二人に懐いた。我としてもとても優秀な二人を国に取り込みたかった。だから二人を王都に迎え、二人の強さを理由にセーラの護衛騎士にした。護衛騎士としてセーラと共に学園に通わせた。親として、セーラを守って欲しいと願いながら。二人は学園でもその強さと知識で頭角を現した。そして学園のダンジョンで発生したイレギュラーダンジョンスタンピードを二人は解決してくれた。学園の学園対抗戦で優勝した。ジテイ国との戦争でたった二人で戦い、我が国に安全をもたらしくれた。だから我は信頼したのだ。この二人にならセーラを任せられると。だから二人に公爵位を与えた。勿論贔屓したわけではない。二人の実績は素晴らしいものだったからな。だが、その中に将来セーラが女王となった時にセーラを政治面でも助けてくれる存在が欲しかった。思えば、我は魔王に騙されていたのだろうな。恐らく魔王は我等を利用し、現代の人間の情報を集めていたのだ。我が魔王にいいように使われた結果、セーラは心を痛め、今は部屋に引きこもっている。我が、娘を傷つけてしまったのだ」


そうして僕は俯く。


ドンッ


私は机を強くたたく。


「だから我は、あいつらを決して許さない。我が娘の心を傷つけた魔王を。我が国は戦うぞ。地の果てまで追いかけてナイト王国に喧嘩を売ったことを後悔させてやる」


その様子は普段のレイルからは遠く離れたものだった。

それは国王としてではなく、父親としてのレイルがいるように見えた。

王族が感情を見せることは良いこととはされない。

だが、このレイルの話を聞いてそれを思う者はいなかった。


「ここに誓おう。ナイト王国は死力を尽くして魔王軍と戦い、魔王を討つと。そして我が国は求める。我と共に戦ってくれる、仲間を」


そうして僕は皆を見る。


「我も、我が国も戦うぞ。そのような非道な手段を取る魔王を許せるはずもない。我が国も宣戦布告をされているのだ。どのみち戦うことになるのなら、我はレイル陛下と、ナイト王国と共に戦いたい」


最初に声を上げたのは、ナイト王国と古くから付き合いがある国の国王だった。


「わ、私の国も。共に戦わせて欲しい」


「そうだ。どうせ戦うのだ。ならば皆で一致団結し戦うのが一番だ」


「レイル陛下が国益を考えず、ここまで答えてくださったのだ。我が国もそれに応えよう」


「なぁに、大陸の国が力を合わせれば魔王なんぞ簡単に倒せるさ」


国王本人が来ている国は次々と我々と戦うことを誓ってくれた。

使者が来ている国も、どうにか王を説得すると熱意を示してくれた。

結果的にこの場にいるレイルとシェール以外の心が一致した。

大陸の国々全てで魔王を討つと。

レイルはやりきったのだ。

百戦錬磨の国王や使者たちを騙しきったのだ。





シェール視点

へぇ、あの国王結構やるのね。

私はレイルの演説を聞いて、内心で笑っていた。

あの演説の9割は本当のことだ。

だからこそ真実味を持つ。

嘘をバレにくくする方法として有名なのが、嘘に真実を混ぜることだ。

有名、王道というのは一定の効果があるからこそだ。

周りは最初、レイルが魔王と手を組んでいるのではないかと疑っていた。

あれはいわば詰問であり、レイルがシンとミコを公爵にした言い訳だ。

だがレイルは言葉巧みに言い訳を演説にした。

さすがは今世のセーラの父親だ。

ただ、使者たちがレイルの演説を聞いただけでナイト王国への協力を惜しまないようになったのには理由がある。


(作戦成功ね)


(うまくいってよかったわ)


(さすがセーラのお父さん。やるときはやるね)


私が「念話」しているのはユアとユイだ。

実は事前にセーラが二人に頼んでいたのだ。

レイルが使者たちから信用されるようにしてほしいと。

何故ユアとユイなのかと言われればユアが固有属性に精神属性を持っているからである。

精神属性は文字通り精神に干渉する属性らしい。

闇属性や無属性にも他人の精神に干渉する魔法もあるが、かなり高位かつ複雑だ。

またタイミングもとても重要。

ということでセーラはユアを呼んだのだ。

ユイはユアと離れたくないだろうから、ついでに。

二人は闇属性上級魔法「ハイド」を使って姿を透明にし、更にスキル「隠密」を使っているのでこの時代の人間にはバレないだろう。

さすがに私なら見破れるが。


(どんな魔法を使ったの?)


(私が使ったのは精神属性最上級魔法「イモーショナルエンプリフケーション」。効果は対象の感情を私が思ったレベルにまで増幅させる。レイル国王への演説に多少なりとも心を動かされればそれが増幅され、無意識的にレイル国王を信用するってわけ)


(お姉ちゃんすごーい)


(面白い魔法ね)


(まぁ、精神属性魔法は格上には効きにくいから戦闘ではあまり使えないけど。こういうことには無類の強さを誇るから)


(ありがとう。また頼むかも)


(了解、私達はもう帰った方がいいかしら?)


(そうね。もう大丈夫だと思う。ここから先は私が対処するわ。これから忙しくなるんだしイチャイチャしときなさい)


((ありがとう))


そうして二人は闇属性上級魔法「サイレント」で音を消しながらホールから移動していった。

さすがに「テレポート」の魔法陣は目立つからね。

恐らく誰にも見られていないところまで行ってから転移で帰るでしょう。

さて、ここからは私の仕事だ。


「レイル陛下」


「何でしょう。シェール陛下」


「まず、我が国も貴国と共に魔王軍と戦う所存です」


「おお」


「それは心強い」


「そしてこれは提案ですが、今現在魔王軍と共に戦うと決まっている国とだけでもちゃんとした口約束ではなく同盟を結びせんか?」


「我としては問題ないが、皆さまはいかがか?」


「勿論構いませんとも」


「今は人類の危機、いがみあう暇などありません」


「しかし、同盟の名はどうする」


「そうだな。せっかくならレイル陛下につけていただきたい」


「我が?よいのか?」


「皆の総意ですとも」


周りは皆頷く。


「そうか。では、伝説上で魔王を倒したとされる英雄の名を借り勇者軍。なんてどうだろうか?」


「素晴らしい」


「まさに、魔王国を相手するに相応しい名前だ」


「正教会としてはいかがか?勇者は正教会の者でしょう?」


「勿論構いませんとも。その代わりと言うわけではないですが、正教国も入れてもらえるでしょうか?」


「勿論だとも。教皇等としっかり相談してくれ」


「いえいえ。それは不要です。此度の会議では、私は教皇代理ですので」


「では、よろしく頼む」


レイルはダーム枢機卿は固く握手した。

こうして、実に会議に参加した国の三分の一が同盟が結ばれた。

同盟の名を勇者軍。

魔王を討つための軍団である。

会議に使者を派遣し、いまだに勇者軍に入っていない国も大国であるナイト王国、大陸最大の宗教国家である正教国、大陸で随一の技術力を誇るバタフライ王国の参加を聞き次々に勇者軍に加入し、結局宣戦布告の6日後までに大陸のほぼ全ての国が勇者軍に参加した。

こうして、大陸の国家は連携を密にし魔王が侵攻してくるまでに勇者軍に加入している国は互いの支援を密にし、特にバタフライ王国は勇者軍に加入しているすべての国にバタフライ王国製の兵器を貸し出したのだった。

最近シンが出てきませんね。

次話も出る予定はありません。

誤字脱字等ございましたらお気軽にご連絡ください。

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この作品の番外編です。

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