第330話 幹部たちの武器1
お久しぶりです。
数日前の話ですが、作者別作品「異常者の恋愛は異常です」を投稿しました。
興味のある方は後書きにあるURLからぜひお読みください。
「それでシン。用事ってどこなの?」
「前の会議で任務を遂行した者達の中に武器を望んだ奴等がいただろ。そいつらの武器を創ろうと思ってな」
「なるほど、それじゃあ今は製作部屋に向かっているのね」
「そういうことだ。っとそんな話をしているうちに着いたな」
俺とミコはドアを開け製作部屋に入る。
だが、そこには既に先約がいた。
「うーん、ここをこうして、ここをこうすれば、いや、こうすると、ここが駄目になって」
「精が出るな、シェール」
「へ?って魔王様、それに「災禍」も」
「何を作っているんだ?」
「魔王様に頂くご褒美の下準備です」
「なるほど、俺と一緒に創る武器か」
「はい、それで魔王様たちは?」
「お前は一緒に創りたいと言っていたから他の皆の武器を先に創ろうと思ってここに来たんだ。だがお前が今ここにいるのならちょうどいい。今からお前の本気装備を創ろう。お前の希望と理想の形。それらすべてを教えてくれ」
「はい、わかりました。ですが何故「災禍」を?」
「そうよ、シン。何故私を連れてきたの?」
「さすがの俺も数人分の本気装備を一気に創れるほど魔力に自身はない」
「なるほど、私はシンの魔力タンクってわけね」
「納得しました。確かにこと魔力に関しては「災禍」以上の存在はいませんね」
「随分と悪い言い方だな」
俺は別にミコのことを魔力タンクにするつもりで連れてきたわけではない。
勿論、魔力がなりなくなったらミコから貰いたいとは思っているがそれだけじゃない。
「ミコが近くにいてくれた方が精神的に楽だからな」
「あら、嬉しいことを言ってくれるのね」
「「災禍」羨ましい」
「さて、それでシェール。お前の理想像を聞かせてくれ」
「はい、まず私は大前提として得意な武器がありません」
「そうだな」
シェールは研究や諜報を担っている。
それは、シェールが研究者でシェールの能力が諜報に向いていたからだ。
だが、だからと言ってシェールは決して弱いわけじゃない。
むしろ、戦うこと自体は結構好きな部類だ。
だけれどシェールの戦闘スタイル上シェールは特定の武器をずっと使うということはなかなかない。
シェールは基本的に自作の魔道具を使って戦うからだ。
「ですが、今更私が何か一つの特定の武器を練習するのは効率が良いとは言えません」
「そうだな。今の魔王軍幹部は皆何かしら特出した才能を持っている。ユキやロアなんかは決して戦闘能力が高いわけではないが、シェールの魅了は世界屈指だし、ロアの知識はこの世界で唯一無二と言っても過言ではない。今の魔王軍幹部は何かしらの特出した才能を持つ者等で構成されている。シェールは戦闘の才能があるから特定の武器を練習して無駄になるということはないが、効率が良いとは決して言えないな」
結局、この世界は才能。
才能を努力で覆すことは出来ない。
世間一般で言われる秀才とは、俺としては努力する才能を持った者のことだ。
だから特定の戦闘スタイルに圧倒的な才能を持つ物が集まる現魔王軍幹部の中で、自分にとって何も相性がいいわけでもないものに時間をかけるのはもったいない。
「はい、ですから私は考えました。特定の武器を使いこなすのではなく、様々な武器を人並み以上に使えるようになり手数の多さで戦いたいなと。そんな願望により私の武器は変幻自在に姿が変わるものがいいなと考えております」
「ほう、面白いな。ただでさえシェールは多種多様な魔道具を使うことで手数に関しては魔王軍で二番目だがそこから更に増やすつもりか」
「はい。長所を伸ばしていきたいなと。それで具体的な設計ですが鉱石の中には魔力を通すことで自在に形を変えられるものもあります。それを使って武器を作りたいなと」
「なるほど。で、それか?」
俺は玲奈の手元にある金属のインゴットを指さす。
「いえ、これは失敗作です。何分魔王様がここまで速く私の武器に着手してくださるとは思っておらず準備がまだ出来ていないのです」
「なるほどな。ちなみに何故失敗作なんだ?」
「この金属インゴット。魔力を流すことでイメージした形にこそなるのですが、強度がとても弱く、使用した瞬間形が崩れてしまうのです」
「ほぉ。使ってみても?」
「はい、勿論」
俺は金属インゴットを手に取って、魔力を流す。
とりあえず最もイメージしやすい武器である神魔をイメージする。
「ほぉ、面白いな」
金属はみるみると形を変えていき、色まで完璧に神魔となった。
俺は「神器召喚」で神魔を召喚して見比べる。
「これはこれは」
「瓜二つね」
「はい、形だけならイメージ通りになるんです」
「問題は強度、か」
俺は神魔を「無限収納」にしまって、神魔の形にした金属を適当に振るってみる。
ガキンッ
「確かにこれでは戦闘には使えないな。ちなみにこの金属はどうやって作ったんだ?」
俺は折れた神魔を見ながらそう言葉を零す。
俺は別に本気で振るったわけではない。
常人では絶対に見えない速さではあったが、元々強度が弱いと聞いていてかなり手加減して振るった。
それでもバキバキに折れたのだ。
これで打ち合いするなんて不可能に近い。
「はい、この金属はミスリルインゴットに魔石の粉末とスライムの粘液を混ぜ込み、私の魔力を大量に注ぎ込んで作りました」
「なるほど、金属の中で最も魔力の通りがいいミスリルをベースにして魔石の粉末とスライムの粘液を混ぜ込むことで操作できるようにしたのか」
「私のイメージとしてはミスリルをベースにしているため一定の強度は確保できると思っていたのですが、どうやらスライムの粘液のせいで強度が弱まってしまうようで」
「なるほどな。だがこれなら単純な解決方法がある」
「それは?」
「まぁ見ていろ」
俺は折れた神魔に魔力を流して、金属インゴットの形に戻す。
そしてそのインゴットに神力を注ぐ。
「眩しっ」
「これは、オリハルコン」
「正解だ。さすがだなシェール」
オリハルコン。
神話に出てくる金属であり、神器の中にはオリハルコンで創られた物も多い。
というか神器は大抵オリハルコンで創られている。
オリハルコンは神話で世界一硬い物質であると言われており、オリハルコンを破壊できるのは破壊神だけだと言われている。
4000年前の俺はオリハルコンの存在こそ知っていたものの、それをどうこうすることは出来なかった。
オリハルコンを見ることなんて神器でくらいしかなかったからな。
そして神器は壊れないため分解して他に転用したりすることは出来なかったのだ。
だが「創造」を使うことによって神器についての理解度が上がった俺はオリハルコンがどうやって出来ているのかを理解したのだ。
オリハルコンは大量の魔力を含んだ物体に神力を注ぐことで、その物体がオリハルコンとなる。
ただ神力を注ぐだけではいけない。
その物体に元々存在する魔力と神力が4:11の割合である必要がある。
まぁそういうわけでオリハルコンを人工的に使うには大量の神力を操る必要がある。
普通なら神力を扱えるのは神だが、神族系の加護を持った者なら多少なりとも神力を使える。
そして俺ならば物体をオリハルコンにする程度の神力ならばギリギリではあるものの操れる。
先ほどのインゴットは製作過程の時点でシェールが大量の魔力を注いでいたためオリハルコンにする条件は整っていた。
なので俺が適量の神力を注いだことでこの金属はオリハルコンとなったのだ。
「神話に出てくるオリハルコン。この世界で最も硬い物にした。これなら問題ないだろう」
俺はそうシェールに笑いかけるのだった。
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