第306話 最強の悪魔
スランプ、治らず。
この部屋には今、俺とミコ。
そして全く知らない女がいた。
顔とスタイルは良い、外見年齢は同じくらい。
よくわからないが、前世でクラスメイトの馬鹿たちが話していた魔性の女という奴だ。
状況的にはこの女が俺たちが召喚した悪魔ということになる。
ただその女はどこからどう見ても悪魔には見えない。
それ自体は珍しいことじゃない。
実際レイメスも見た目だけなら人間だ。
レイメス曰く、悪魔は高位であれば高位であるほど外見が人間に近くなるらしい。
つまり、この女がレイメスと同等レベルの力を持っている悪魔だと考えれば人間そっくりな姿をしていることはおかしなことではない。
ただ、この女からは魔力を感じない。
召喚にてこの世界に呼び出された段階での悪魔は肉体を持たず、魔力で構成されている。
悪魔は契約等によって得た供物に受肉することでこの世界で活動できるようになるのだ。
召喚魔法で行動を制約出来るのはそういう性質も関係している。
また今は関係ないが悪魔は異界の生物だからか、悪魔の魔力は少し特殊で目立つ。
そういうわけで召喚された時点では魔力体である悪魔に魔力がないなんてことはありえない。
今まで俺の知る中で召喚された時に魔力体じゃない悪魔はレイメスくらいだ。
やはり、こいつ。
レイメスと同等レべルの力を持っている可能性が高い。
だが、疑問が残る。
既に肉体を持っている悪魔を召喚したとしても、魔力がないのはおかしい。
受肉前は魔力で肉体を構成するくらい、悪魔は魔力をたくさん持っている。
当然高位の悪魔であればあるほど魔力量も多くなる。
なのに明らかに高位悪魔としか考えられないこの女からは一切魔力を感じない。
「お前、何者だ?」
「私?私の名前を聞いているのなら、答えは存在しない、ね。ただ、遥か昔に誰かからかは忘れたけどデリートと呼ばれていたわ」
「ではそう呼ばせてもらおう。デリート。貴様、悪魔か?」
「勿論、私は悪魔よ。それで、貴方達二人が私の召喚主っていう認識でいいのかしら?」
「そうなるな」「そうなるわね」
「にしても豪華な供物ね。種族最高位の魔物の死体を丸々6って。って、なにこの腕。二本とも他の6つの供物全てよりも単体で魅力的なんだけど。めっちゃ食べたい」
どうやらこの女は供物を食べるらしい。
普通は受肉、つまり肉体の材料にするものなのだがな。
まぁこの女は既に肉体があるから受肉の必要なんてないのだろうが。
「なら、俺達と契約しろ」
「それを素直に聞くとでも?」
突然、デリートからとんでもない魔力が溢れ出す。
その魔力は間違いなく悪魔特有の性質があった。
「なるほど、魔力を隠蔽していたわけか」
「私達二人の目をもってしても見抜けない。かなり高度な隠蔽ね」
俺とミコはそんな感想を述べる。
それと同時に魔力を解放する。
部屋の中に強大な3つの魔力が渦巻く。
本来なら3つがぶつかり合い、相殺し合うのだろうが俺の魔力とミコの魔力は相性が良いためか混ざり合い力を増してデリートの魔力とぶつかり合い、この部屋の魔力を俺の魔力とミコの魔力で抑え込んだ。
「何て、魔力。ますます美味しそうね。供物にした腕だけで我慢してあげようと思ったけど、気が変わったわ。貴方達二人の肉体を私の新しい身体にするわ」
デリートが笑顔を向け、物凄い速度で接近し俺を殴る。
「え?」
俺は何もしない。
防御も回避も一切しない。
出来ない、ではなくしない。
する必要がない。
デリートの拳が俺の動体に突き刺さったがまったく痛くない。
「な、何で効かないの。なら」
デリートが俺に攻撃を効かないのを察するとミコに接近して同じように殴る。
だが、ミコも防御も回避もしないし勿論痛がるような真似もしない。
再生も発動しない。
「ど、どうなっているの?」
デリートが目に見えて動揺する。
「召喚された存在は召喚主を害することは出来ない。召喚魔法の基本だと思うが?」
「私にそんな制約は効かないはず」
「確かにお前はかなり高位の悪魔のようだ。だが今までお前が召喚魔法の制約を無視できたのは召喚主と絶対的な実力差があったからだ。だが、今回の場合は違う。今回の召喚主である俺はお前よりも強い。だから制約が発動したのだ」
「たかだか人類が私よりも強い?いや、私を召喚出来てる時点で、、、」
デリートはぶつぶつと考えを小声でこぼしながら考えをまとめる。
そして数分後、デリートは考えがまとまったらしい。
「私は貴方達との契約を望むわ」
「そうか。なら、話を分かりやすくするために契約の前に自己紹介だけさせてもらおう。シンだ。魔王と呼ばれている」
「ミコよ。災禍の魔女と呼ばれているわ」
「なるほど、貴方達が。なら私よりも強いのも納得。貴方達、悪魔界でも結構有名よ。何体もの悪魔が貴方達を殺すために召喚されてあっさり殺されてるから」
心当たりがありまくりだな。
戦争中、追い詰められた敵の将軍が悪魔を召喚するのは珍しいことじゃなかったからな。
「さて、お前への望みだが。単純明快に言おう俺の軍門に下れ。対価としてお前が望む量の俺達の血肉と魔力をやる」
「お断り。って言った場合は?」
「悪魔界へは二度と帰れないと思った方がいいだろう」
「ふふ、ふふふ、ふふふふ。いいじゃない、いいじゃない。私にそれだけ言う胆力とそれを実現する実力、報酬は今後二度とお目にかかれるか分からない、最高級の肉体と魔力。さいっこうじゃない。その
話、受けるわ。私はこれから、命ある限り貴方達二人に従うわ」
「それじゃあ契約といこう」
そうして俺達は契約魔法を使って契約した。
ちなみに使った魔法は無属性絶望級魔法「アグリーメント」だ。
これが誰でも使える契約魔法の中で最も重いものだ。
効果は契約を違反した場合、デリートは魂から滅び、俺はデリートとの契約が破棄される。
まぁやろうと思えばユアを呼んでくれば、ユアの契約属性魔法でもっと重い契約を出来たかもだが、面倒だったし、何よりデリート相手ならあまり変わらないと判断した。
あとシンプルに今二人はイチャイチャ中なので邪魔したくない。
「さて、これで契約出来たな。とりあえず報酬の先払いだ。欲しいだけ魔力と血肉をもってけ、勿論そこに置いてある供物は好きにしてくれ」
「それじゃあ遠慮なく」
そしてデリートは俺とミコの魔力を大量に吸収した。
悪魔召喚にはほとんど全ての魔力を注いで回復した分も吸い取られたのでもう魔力が空っぽだ。
しかし俺の肉体は優秀なので、どんどんと魔力が回復していく。
って言っても今の俺の魔力は普段の1000000分の1以下だ。
正直かなりきついが、先にやらなければならないことがある。
「デリート、俺はお前をただの部下として遊ばせておくつもりはない。お前は魔王軍の十六魔将軍の一人となってもらう。そこでお前に名前を与える?」
「名前?」
「あぁ、魔王軍に入る奴は大抵ロクな過去がないからな。俺が名前を与えることで過去を切り捨てやすくしてるんだ」
「なるほどね」
「お前は今日から、デリート・デモンと名乗れ」
「分かったわ」
「それじゃあ、一般常識の共有だ」
俺は「メモリートレース」でここでの生活に必要な知識を共有した。
一般常識と魔王軍の簡単な情報だけだが。
「それじゃあ部屋に案内しよう」
そうして俺達は悪魔召喚室から出た。
だが次の瞬間、
「魔王様」
物凄い速度のレイメスが慌てた様子で近づいてきた。
「あ、あぁ。もう、手遅れだったか」
だがレイメスはデリートを見て、絶望した表情を見せた。
知り合いなのだろうか?
「あら、キング。久しぶりじゃない」
「、、、、姉上。お久しぶりです」
「「え?」」
二人の会話に、俺とミコは固まってしまった。
一話書いただけでだいぶ疲れたー
巻き返しカウント:87話
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