第251話 偽教師
遅刻してすみません。
俺は今、内容の間違っている魔術についての講義を聞いている。
この話の中ではしっかりと筋は通っているものの、やはり子供だと感じる甘さがあるし。
そもそも本物の魔術がどんなものなのかを知っている俺達としては、いちいち間違っている考えや理論の方に意識が向いてしまう。
そのまま2時間目は間違った講義を聞かされただけで終わった。
この学院では1日で6時間の授業がある。
残り4時間の授業はいたって普通の授業だった。
そんなこんなで学院は終わったのだった。
俺達は立ち上がって、全員「テレポート」を発動する。
行先は学院長室だ。
ちなみにユイとライシュは「テレポート」は発動したが転移先は俺達と違う。
ライシュは城の部屋に。
ユイはユアがいるであろうユアの部屋に転移したようだ。
留学期間中の引率教師の役割というのはあまりない。
基本的に、王都にいさえすればいいらしい。
実質的に休暇のようなものなのだとか。
まぁユイは授業中もずっと「念話」でユアと話していたようだがな。
隠蔽されていたから周りの奴等は分からなかったようだが、俺達には普通に魔力を使っているのが分かった。
学院長室に転移すれば、当然そこには学院長であるアンデスがいる。
俺はついでに「念話」を発動する。
(シェール、話したいことがある。悪いが学院長室に来てくれないか?)
(承知しました)
シェールからそう返事が返ってくると同時に学院長室に転移魔法陣が出現してシェールが転移してきた。
「それで何の用?」
「魔王様、どういうったご用事で?」
シェールもだいぶ口調が砕けたきたな。
俺がそんなことを考えていると、二人が俺たちが来た要件について尋ねてくる。
「多分だけどこの学院、スパイが紛れ込んでるぞ」
「「嘘」」
シェールとアンデスが思わずと言った様子でそうつぶやく。
顔色もかなり悪そうだ。
「多分だけどな。朝、教師は魔王軍出身の者だと言っていたよな」
「はい」
「教師は全員、魔王軍時代での私の部下を採用してるからそのはず」
「俺達のクラスの担当教師の名前はなんだ?」
「確かシェラ、だったわよね。書類ではそう確認したのだけれど」
「はい」
「でも、私たちの担当クラスの教師ジョンとかいう男教師だったわよ」
「そうそう。シンに失礼な態度をとっていたから変だなと思ったのよ」
「正直、殺そうかと思いました」
「アンデス、この学院にジョンなんて男教師いたかしら?」
「いないはずです」
「すぐに」
「はっ。速攻調べさせます「サモンアンデット」」
アンデスが闇属性最上級魔法「サモンアンデット」を発動した。
この魔法はその名の通りアンデットを召喚することのできる魔法だ。
ただ、このアンデットは時間が経つと消えてしまう。
アンデスは「サモンアンデット」で小さい蝙蝠と鼠のアンデットを複数体召喚した。
アンデットと言っても蝙蝠も鼠も見た目は本物と結構違う。
基本的に骨だけだ。
スケルトン系統のアンデットだからしょうがないのだが。
アンデットには大体の系統がある。
ゾンビ系統、スケルトン系統、レイス系統だ。
どれも有名どころだ。
当たり前だがこれらのどれにも当てはまらない系統のアンデットも存在するが、基本的にアンデットといえばこの3系統だ。
ゾンビ系統のアンデットはアンデットの中で最も日光に弱く、脆い。更に腐乱臭がするのであまり好んで使われない。ただし召喚したり作ったりするときの消費魔力は少ない。
スケルトン系統のアンデットは衝撃に弱く、打撃系統の攻撃をされるすぐにやられてしまう。しかし、日光にも滅茶苦茶に弱いわけでもなく害もなく、ゾンビよりも多いが召喚したり創った時の消費魔力は少ない。ためアンデットの中では最も重宝される。
レイス系統のアンデットはゾンビ程ではないが日の光に弱く、他に二系統よりも光属性に弱い。
しかし、隠密能力がなかく魔力のこもっていない攻撃ではダメージを与えられないため実践ではそこそこ強い。
ただし召喚したり作ったりするときの消費魔力が多いし、命令にあまり従わない場合があるためそこまで使われない。
アンデスが「サモンアンデット」を発動している間にシェールは何かしらの魔道具を取り出した。
見た目はタブレットのような感じだ。
「シェール、それはなんだ?」
「これは、この学院内のありとあらゆるところを覗くことが出来る。魔道具。こいつ?そのジョンって男。ってこいつ?」
シェールが俺に画面を見せてくる。
画面には間違いなく、俺達の担当教師であるジョンの姿が映し出されていた。
「シェール様、1年1組の教室内に謎の魔道具の存在を発見しました」
「すぐに回収なさい」
「はっ」
するとアンデスは「テレポート」を発動する。
実は自分の魔法で召喚した生物とは視覚を共有することが出来る。
また、生物の視界内ならばある程度の魔法を発動することが出来る。
これを使ってアンデスは召喚した蝙蝠と鼠のアンデットと視界を共有して探し、謎の魔道具を持った鼠たちを「テレポート」でこの学院長室に転移させたのだ。
学院長室内に先ほどのものと比べると圧倒的に小さい転移魔法陣が出現し、そこには魔道具を持ち先ほど出ていったアンデットの鼠の姿があった。
「それが魔道具ね。「超鑑定」」
シェールが「超鑑定」を発動する。
俺達はわざわざしない。
自分で見ないといけないわけでもないし、こういうのはシェールに任せて置ければ俺達が分かりやすく俺達が見ただけでは分からないところまで発見して教えてくれるからな。
「分かりました。この魔道具は周囲一定範囲の生物に、事前に流された魔力の持ち主から感じる違和感をなくすというものみたい」
「なるほど、それを使ってジョンは学院に潜入したのか」
シェールが言っていること。
つまり、この魔道具の周囲にいる生物は事前にこの魔道具に魔力を流した存在に違和感を感じることが出来ないのだ。
「にしても、こんな魔道具。初めて見た」
「そうえいば、何で魔王様は教師が外部の人間だと判断されたのですか?」
「簡単だ。その男からあ俺に対する敬愛や敵意が感じられなかったからな」
「「なるほど」」
その言葉で二人は納得した。
魔王軍に所属している者は俺に敬愛を持って接してくれるものと、あわよくば魔王の座を奪おうと敵意を持って接してくる奴の2パターンがいる。
だが、ジョンから感じられたのはシンプルに面倒そうだという感情だ。
魔王軍の者ならば魔王である俺を前にしてそんな態度はとらない。
「そういえば、本来の担任であるシェラはどこに行ったんだ?」
それは純粋な疑問だった。
シェラは俺が名を覚えているくらいには有能だった。
戦闘力こそないものの、魔王軍内でシェールの右腕と言われていた。
「魔王様、シェラ、、、、、、、、、、、、、、発見しました」
するとちょうどよいタイミングでアンデスからの答えが返ってきた。
「どこにいたの?昨日、ちゃんと私。あの子に魔王様が入るってことを伝えたのに授業を放棄ってどういうこと?」
「それが、とりあえず持ってきます」
そういってまた学院長室に転移の魔法陣が出現する。
そこから出てきたのはそれを運んできたのであろう4体の鼠のアンデット、4体の蝙蝠のアンデット、そして、
「「「「「「なっ」」」」」」
1人の女の死体だった。
俺達はそれを見て、驚いて声を出してしまう。
それも無理もないだろう。
なぜなら、その女の死体は間違いなく、記憶にある魔王軍七魔公「黒蝶」が配下、シェラその人だったのだから。
眠い。
巻き返しカウント:25話
誤字脱字等ございましたらお気軽にご連絡ください。
気に入ってくださいましたら、ブックマーク、レビュー、評価いいね等よろしくお願いします。
作品についての疑問やご質問、ご指摘も受け付けておりますので感想などを貰えると嬉しいです。
感想については全て返答させていただくつもりです。
この作品の番外編です。
URL:https://ncode.syosetu.com/n9675ip/
こちらもお願いします。
異常者の恋愛は異常です
URL:https://ncode.syosetu.com/n6702iv/