第217話 「死生」の行方
今日も短めです。
追加も遅れてすみません。
俺がミコに散々血を吸われた翌日、俺達は魔王軍幹部会議を行うために魔王城の会議室にいた。
集まったのは俺、ミコ、セーラ、ミーゼ、ルミネス、レイメスだ。
「それじゃあ、魔王軍幹部会議を始めるわ。まず「執事」報告を」
「はっ、まずは「死生」の行方についての調査に進捗がありましたのでご報告を。以前ご報告した「死生」の転生についてですが、確証を得ました。「死生」はまず間違いなく転生しています。この世界に」
「その確証とは?」
「一昨日、私は魔王様に学園内に内通者がいないのかを調べるように命令されました」
「あぁ、確かにそんな命令は下した」
魔王城に帰ってきた後、レイルとミリーが帰ってからでいいから学園に内通者がいないか調べてくれとレイルに「念話」で命じていた。
「それがどうした?」
「はい、実は調査のために第一学園に潜入したのですが。そこで変異こそしていましたが「死生」の魔力を検知しました」
その瞬間、ルミネスとレイメス以外のメンバーが目を見開く。
だって俺もミコもセーラもミーゼもたまにではあるが学園に通っているからだ。
「それは誠か?」
「はい、間違いありません」
レイメスはそう断言する。
レイメスは確信があるときしか断言しない。
「だが、俺もミコもセーラもミーゼも気づかないなんてことあるか?いくら転生によって変異していたにしても」
「それについてですが、今の「死生」の魔力はかなり大きく変異しています。それも、魔王様ですら気づかないほどに」
レイメスはそう言う。
その瞬間、会議室に膨大な魔力が解き放たれる。
「「執事」それは、貴方の方が魔王様よりも優れていると言いたいのかしら?」
ミコは席を立ってレイメスをにらみつける。
魔力の主はミコだった。
「っぐ、あ、うう」
レイメスはミコに魔力によって動けないようだ。
七魔公は皆強者だ。
それこそ単独で世界を滅ぼすことが出来るほどだ。
ただ、それでも七魔公内の席順とはかなり大きいものだ。
七魔公の力量は割とはっきりとしている。
席順は分かりやすく強さに直結するからだ。
例えばだが七魔公筆頭であるミコは間違いなく七魔公最強だ。
なにせ魔王軍最強である俺と唯一対等に勝負できるほどの強さだからだ。
次に強いのは二席であるセイだ。
最大強化状態ならミコとも対等に戦える程の実力があるからな。
まぁ普通の摸擬戦なら最大強化前に押し切られるんだが。
その次に強いのはミーゼ。
と言いたいところだが、ミーゼと「死生」は実力が拮抗している。
どちらも不死のような再生能力を使って戦うから二人で戦うとひたすらに泥試合になるのだ。
その次がルミネス。
と言いたいところだがこれも「黒蝶」と実力が拮抗している。
ルミネスの強みは無限成長能力による圧倒的な手数の多さだ。
だが、手数の多さならば「黒蝶」も負けてはいない。
「黒蝶」は諜報と研究を専門にしている。
二つの分野を専門にしているとはこれ如何にと言った感じだが。
「黒蝶」はその二つの分野に関しては本当に天才的な才能がある。
「黒蝶」の戦い方は自分で作った実験品を使ったものだ。
だからこそ手数が多い。
そのためルミネスと「黒蝶」が戦うとお互いに手数が多い同士になって泥試合となる。
そして七魔公最弱がレイメスだ。
このように七魔公には席が大きく変わると、大きく実力が変わることもある。
そして今、七魔公最強が七魔公最弱を睨んでいる。
レイメスが動けないのも当然ともいえる。
だが、この状況を誰も止めない。
それは魔王軍は実力主義だからだ。
魔王軍は強い奴が偉い。
それは不変のルールだ。
勿論、弱くても知力が強い奴を幹部に登用しているものもいる。
それは最も強い、つまり最も偉い俺が決めたからだ。
だけど、結局は強い奴が偉いのだ。
それは変わらない。
俺はこんなことを考えているが会議室にはいまだに強力な魔力圧が広がっていた。
さて、どうしたものか。
俺はどうするか考えるのだった。
「「災禍」、私はそのような意図で先ほどの発言をしたわけでは」
「分かっているわ。むしろ本当にそんな意図で言ったのなら即座に貴方を殺しているわ」
ミコの魔力圧がその発言に嘘偽りがないことを証明している。
レイメスは俺とミコが召喚した悪魔だ。
悪魔というのは基本的には悪魔界というこの世界とは異なる世界にいる。
それを誰かが召喚することで悪魔はこの世界に来ることが出来る。
悪魔はこの世界で死んでも悪魔界で蘇る。
だが、それはあくまで基本の話だ。
悪魔にも魂はある。
魂を破壊されれば悪魔界で蘇ることもできない。
ミコからすればレイメスの魂を破壊すること程度造作もないことだ。
「例えそんな意図がなかろうと、貴方は魔王様を侮辱したの。それ相応の罰が必要よ。今回は特別に殺しはしないわ。魔王様はそれを望んでいないでしょうから」
ミコはそう言って、とある魔法を発動する。
「光、血混合属性伝説級魔法「ブラッドライトデーモンキラーチェーン」」
「ぐ、は、っく」
ミコが使った魔法は光、血混合属性伝説級魔法「ブラッドライトデーモンチェーン」だ。
この魔法は悪魔に対して絶大な特攻能力を持つ血の鎖で悪魔を拘束する魔法だ。
この鎖を付けられてはレイメスのような高位の悪魔でも動けなくなる。
「それじゃあ、少しばかり反省しなさい。氷属性伝説級魔法「コールドスリープ」」
「う、あ」
レイメスは完全に凍結し、眠った。
「メモリートレース」
ミコは「メモリートレース」を発動する。
どうやらレイメスから今回の報告内容の記憶を奪ったようだ。
「テレポート」
ミコはレイメスを「テレポート」でどこかに転移させた。
まぁ、気にしないでもいいだろう。
「魔王様、魔王様の御前で騒ぎ立てたことを深くお詫び申し上げます。さて、ちょっと馬鹿をやらかした「執事」への罰も終わりましたので、私から報告を続けさせていただきます」
ミコは普段と違ってとても丁寧に俺に言葉を告げる。
それはシン・ソードロードの相棒のミコ・マジクロードではなく。
魔王ゼロ・コラプス・クリエイトブレイクの配下である七魔公筆頭ミコ・ディザスター・クリエイトブレイクとしての言葉だった。
この言葉遣いには意味がある。
次同じようなことをすれば誰であっても同じようにするということだ。
勿論、いないだろうが。
レイメスは優秀だが、悪魔の思考故かどうしてもあぁいった失言をしてしまうことがあるのだ。
なのでたまにではあるが、今回が初めてのことではない。
それも皆が静かだった理由となるだろう。
「「執事」が話していた学園にあった「死生」の魔力についてですが、「執事」の記憶を読み取り納得の理由が分かりました」
「その理由は何なんだ?」
「「死生」の変異した魔力と判断する前に既に別の存在の魔力だと認識していたため、違和感を抱かなかったからです」
「して、その別の存在とは?」
俺の質問にこの場にいる全員がミコの方を向く。
「デスデット伯爵家当主。ゼミル・デスデットです」
ミコはその名を口にした。
「なるほど、そういうことか」
確かに言われてみて今一度意識すればゼミルの魔力は「死生」の魔力と似た感じがする。
それに俺たちが気づかないのも納得だ。
ゼミルは俺が魔王としての記憶や力を取り戻す前に出会っていたからな。
違和感を抱かないのも無理はない。
「だが、ミコなら気づきそうなものだが」
「はい、それにも理由があります」
「聞こう。まず一つは魔力の大きすぎる変質です。これは転生にしては魔力の質が変質しすぎだからです」
「それは確かにそうだな。事実として俺も気づかないレべルの変質だ」
「だが、違和感云々を置いておいても魔力においてもっとも敏感なミコが気づかなかったことに、「執事」が気づいたことに気づかなかったということには違和感がある」
「それについてですが、私が気づかなかったことにはもう一つ理由があります」
「その理由とは?」
「恐らくですが、今のゼミルには「死生」と別の存在が混じり合っているからです」
「別の存在?」
「えぇ、実は私は以前からゼミルは何らかの存在の転生体だという気はしていました。明らかに変質したような魔力だったので。そして私はゼミルを少し調べました。その結果、ゼミル・デスデットは人間と何らかの神が混ざり合って生まれた存在だということが分かりました」
「なるほど、その神に気をとられて「死生」だとは分からなかったわけか」
「はい」
「なるほど。とりあえずゼミルは要観察だ。何かあったらすぐに俺を呼べ」
「「「「はっ」」」」
そうして幹部会議は一度終了した。
出先から帰ってきたけれど、書く時間がとれなかった。
ということで「死生」の転生体はゼミルちゃんでしたー。
これは「死生」が出てきたときから決まっていました。
今話はちょっとわかりにくい部分もあったと思いますが、そこは次話で解説します。
巻き返しカウント:9話
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